第71話『眠れない…月夜の告白』
金色に輝く小さなふわもふの
獣が寝台にいる…。気づくと三人目の
ネムコが生まれていた…
抱きしめると思った通り
あたたかいが…
どこかとても寂しい気持ちになる
「なぁ~」とノーラやイーシャとは
違う特徴のある声で鳴いて
懐いていて…。当たり前のように
甘えてくる…
すごく可愛いけれど…
己の無力さを嘆いて泣いている
自分がいる…
その金色のネムコの名前を…
恐る恐る呼んでみる…
"メルコイン"…なのか…?
違うよな?…
ネムコは人間のように首をふり
「なぁ~」と鳴く
やはり…メルコインなのか?
ネムコはコクリと頷いて
「なぁ~」と鳴いてゴロゴロと
喉を鳴らしている…
もう戻れないのか…
もう手遅れなのか…
メルコイン…すまない
ずっと…死ぬまで可愛がって
やるからな…約束するよ…
涙をこぼして泣いているであろう
情けない顔をみて、金色のネムコ
になったメルコインは「なぁ~」と
変わらずに鳴いた…
・・・
セタは『はっ…』と目が覚めて
『ふぅ~…何だ…そうか、やはり
夢だったかぁ…』と安堵の独り言
その様子をみていた眠らない
シャーマンの女性の幽霊が、
(どうしたんですか…?)
と話しかけると
『ああ…幽霊さん。いたのか?』
(ええ、いますよ…)
『メルコインは部屋にいるか?』
(………)
『天気の人の…次に来た。
金髪で小柄の、"似ていない"…
私の身代わりだ』
(知ってますよ…)
『じゃあ、何で黙ってしまったんだ…』
(眠くないですか?)
『いや…もう眠れないかも』
(そうですか…)
『…………』
(…………)
しばしの沈黙のあと…
(その方は、部屋にいますよ…
セタと同じ髪の色の女性は
よく寝ています…)
『そうか…。ならよい』
(その隣りの子どもたちも…
お姉さんも…よく寝ていますよ…)
『そうか…。それもよいことだ』
現在宿の四階には、奥の部屋から
セタ、ファル、今は空室のクロのいた
部屋があり…その隣、絵描きのミアが
かつて泊まっていた部屋には、
ブルーノの妹と弟が居て、階段前の一番
手前の"セタ様の部屋"と掲示された
部屋に、ブルーノとメルコインが
泊まっている
セタの従者であるディルベットと、
半従者の男は見張りの役割と利便性も
あって今も変わらずに地下の部屋にいる
『さて…。では私はどうしようか?』
(ネムコ達も寝ていますね…)
ノーラとイーシャはセタの足元に
くっついて眠っている
『動けないなぁ…』
(何度も寝返りをうっていますから、
別に構わないと思いますよ…)
『それも、そうか…
お互いに寝相のことを気にする
間柄でもないよな…』
セタはゆっくりと足を動かし、
横を向いて寝台の外に足を投げて
から、起き上がり…端に座った
『月が綺麗だな…』
(そうですね…。ネムコも
発光しないみたいですし…)
セタは窓の外からネムコ達に
視線を転じ、
『まぁ…な。今のところは…
なのかはわからないが…』
(やはり子どもにしかみえない
事象だったのでしょう…)
『………だろうな』
(落ち込まないで下さい…)
『……私が子どもに戻れたら、
見ることが出来るだろうか?』
(……見てどうするんですか?)
『…どうもしないさ。ただの
好奇心だ…。…私がネムコのことを
一番知っておきたいという願望に
他ならない』
(………人間では、一番ネムコに
詳しいのはセタですよ)
『それはわかっている…。けど…
この私にも見えないものがある…』
(幽霊にも見えないものがありますよ)
『それも、そうか…』
(そうですよ…。すべてを知ろう等と
いうのは傲慢です。わからないから…
知ろうという欲求が永遠にあるのです)
セタはもう一度月のある外をみて
『……多分な。もしかしたら…
なんだけど…。さっきの発光の件
アレは…。反応したのだと思う…
ネムコになりたい…という純粋な想いに
対して…ネムコが答えた?…という
コトなのか?…そこはよくわからない
が…。そんな気がするんだ』
(…………奇遇ですね。同じ意見です
さすがセタ様です)
『オマエだけは、私に絶対に…
"様"等と付けるなと言っている
だろう…』
(はい、セタ…。アナタは
きっと、"いつまでも"
生きている限り、
孤独なんでしょうね…)
『……そうだ。ネムコについては…
誰よりも孤独だ…。本当のことを
語り合えるのはオマエだけだ…
この世界には誰もいない…』
(……………はい。それは真実。
間違いありません。生きている
人間には、実際にみてみなければ
わからないことですから…
ネムコと人間の…
ありえない"奇跡"は…)
『……まあ、そうだろうな
こんなに可愛くて、あたたかい
存在なのだから…
自分を納得させる意味では、
そうでなくては困る…』
とセタはノーラとイーシャを
みてから…寝台端から立ち上がり
『はぁ…。なんだ…。
それにしても、月が綺麗だ…』
と独り言をいってから
窓際に寄り、
『こうして生きていることが
不思議に感じるよ…』と
幽霊にいった
(この立場では…
それについて、何も返せませんよ…)
という幽霊に対し
『いや…。そういう捉え方は
いらないだろう…
私はオマエが死んでいる
とは、出会った頃と
比べると、感じない…
もう、感じていない…
他の人間の多くには、
存在していないはずのに…
私にはこのように綺麗なまま…
みえて、存在しているのだから、
当然だ…』
(それは…。遠回しの…
"告白"…というモノですか?)
『……モノではない。
告白だ…。私が死んでも、
今の言葉は覚えておいてくれ…』
(はい…。可能な限り、覚えて
おきます…。ずっとは無理
ですけど…)
『何故だ?…永遠は無いのか?』
(いつでも終わりはありますよ…
生きる意味が無いと分かれば…
もう終わりにしますから…
その意味で、ずっとは
無いのです…)
セタは『そうか…。では、
生きている人間と同じなのかな…
今すぐの終わりを決められるのは…
多くの場合、他人ではなく
自分の意思だけだ…』
(そうですよ…。だから…
セタは永く生きてくださいね…)
『ああ…。そうするよ…
約束する』
(はい…)




