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第69話『母神の継承』

 ディルベットは…杖を付いて迷いなく

 黙々と歩くファルの後ろ姿を見ながら、

 それに付いて歩く…


(この道は…。以前よく歩いたな…


 始めは…そう。ノーラという自分と

 同じ宿で飼われていた奴隷で

 あった少年を探す為だった…)


 村外れには"人工楽園"という名の、

 セタの研究場である石造りの年季の

 入った小屋がある…。そこに向かう

 までの道だ…


(この人は…ファルさんは、自分が今

 どこを歩いているのか…

 どうしてここまでわかるの

 だろうか…?)


 素朴な疑問が脳内を過ぎった最中、

 ファルが杖と足を止めて


『ここよ…。ここ…。ちょっと色々

 あって、時間が経っちゃったけど

 "軽い"落とし穴を仕掛けたのよ…』



「……落とし穴?…ですか?」



『そうよ…。あの時、馬鹿になりそうな

 気分だったから、それでの憂さ晴らし

 …退屈しのぎになると思ってね…』



「遊び…ですか?」



『まあね…。ちっちゃな獣が落ち

 ちゃって。ぐずぐずになっている

 かも…。だけど…』



「………あ。あの木の枝に布切れ

 がありますよ。アレですか?」



『うん。そうよ…。

 それで…その下をみてくれない?…

 気をつけてね…恐らくは浅いけど、

 足を引っ掛けるかも…』



「恐らくは?…ファルさんが

 掘ったのでは無いのですか?」



『そこまでする余裕は無いわよ…

 お連れのネムコの砂係さん

 に頼んだのよ』



「………ああ、そうですか」


 と返して、少女は雑木林の中に入って

 灰色の布切れのある枝の下をみる…

 

 が、そこには枯れ葉のまじった濃い色の

 腐葉土があるだけで…手で恐る恐る地面

 を触ってみても…平たい地表があるだけだ


「ううん…?…何も無いですよ!

 穴も何もあいてません!

 埋められてしまったのでしょうか!?」



『あら…そうなの?ちょっと残念ね…。

 まあ、あんな目印の付いたわかりやすい

 穴に落ちる"お馬鹿な人間さん"は…

 さすがにいないわね…。誰かが親切に

 埋めてくれたのかしら?』



「あれっ…?ファルさん!?」



『うん?どーしたの?』



「垂れている布切れの結び目に…!

 枝との間に何か挟まってますよ!?」



『………結び目に?…私はそこまで

 指示はしていないけど…?』



「何とか、とってみますか!?」



『…………よく見てからにして。

 それと、そんなに大きな声で

 話さないでもいいわ…

 じゅうぶん聞こえているから…』



「………なんでしょうね?

 透明で…"キラキラ"と、

 光ってますよ…」



『透明で…光ってる?………』




「はい…何だか"怪しく"

 光ってます」




『……どこも触らないで!!』


 ファルは大きな声を出す


「……はい?

 …聞こえてますよ?」



『聞こえているのなら…

 "絶対に"触らないで…』



「……はい。ですが、私の身長では

 布切れの先までは問題ないのですが、

 木の枝までは、届きそうにないです

 何とかしないと無理そうです…」



『そう…。でも布の先であっても

 絶対に触らないで…

 一度帰りましょう』



「……気になりますね」と言って

 少女は木の枝の布切れの結び目から

 視線を下ろし…先端をまでみると…

 ひとつ「ふぅ~」と息を吐いてから

 目を離し、路面に出てきた


「戻りましたよ…」


 ファルは『そう…』と行ってから

『…ふふん♪』と微笑み…


『では、"応援"を呼びましょう…。

 ちょっと楽しくなってきたわ…。


 きっと、引っ掛かった者…もしくは、

 罠を仕掛けたことに対する人間様の

 …。真心のこもった"お返し"よ…』


 少女はファルの"楽しみ"がよく

 わからず…「はぁ…」とだけ

 返してから、


「応援は…"砂係"ですね?」と言った



『そうよ…。背が高いでしょう?

 声が天井から聞こえてくるもの』


 ファルの冗談に少女は答えるように


「はい。"背だけ"は高いです。

 私も昔助けられたことがあります」



『ふ~ん。そうなの…。まっ…

 とにかく一度戻りましょう』



「はい…」



 ・・・



 とその帰り道…


 ノーラに出会った…

 小さなフワモフの獣は、悠々と四足で

 迷いなく歩いており…。その後ろには

 宿の男がいて…。さらに後ろには

 村の住人が数人付いてきていた…


 ノーラはファルとディルベットの

 足元で立ち止まると…「あ~ん」

 と一度鳴いてから…二人にいつもの

 顔と喉の擦り付けをはじめる


 ディルベットがノーラを撫でながら

「…どーしたの?」と後方にいた

 男に声を掛けると


「いやぁ…ね。まぁ…稀によくあること

 だろ?……多分あの小屋まで行って

 戻る予定だったと思う…。前に

 外に出てしまったときも、この

 通りから帰ってくるのを…村の人間が

 みていたらしいからな……」


 とネムコを逃し、宿の外に出して

 しまった気まずさを表情(おもて)に出しながら

 少女に答えた


『…………ノーラはあの場所に

 "思い入れ"があるみたいね』



「…そうみたいですね。縄張りの

 範囲かも知れませんが。まぁ…

 誰かに捕まりさえしなければ、

 探さなくでも勝手に戻ってくる

 んですけどね…」



『………どうしようか?ノーラを

 連れて一度戻ろか?…それとも、

 ノーラの後ろを付いて歩こうか?』



「そうですね…。目的の砂係を

 捕まえましたけど…ノーラも

 捕まえてしまいました……

 ノーラの目的があの小屋なら…

 そこまで行って、ノーラと一緒に

 戻るのが良いかと思います…


 ネムコはセタ様にとって、

 何よりも大事ですから」


 とディルベットはノーラを慣れた

 手付きで抱えながらいった


 男はその意味がわからずに

「はぁ?…砂係?…」と返してから…


「ああ…。前に俺が掘った

 "落とし穴"ですか?」


 とファルにいった



『そうよ…。その場所で"よく"

 みてもらいたいものがあってね…

 背が高い人間でないと無理

 そうなのよ…』



「へぇ…。なんでしょうか?」



『その前に、ノーラはどうする?…』



「そうですね…。では、俺がいって

 そいつをみますよ。ディルベットが

 ノーラをみてくれれば可能でしょう」



『…だ、そうだけど。大丈夫?』



「はい…。では私はノーラと一緒に

 このまま小屋まで散歩してきます。

 ノーラの気が済んだら、一緒に

 宿に戻ります…

 ノーラ、お姉さんと一緒に

 行こうね?」


 とディルベットはノーラを抱えて

 歩いていった…



『では、私達は"用を"済ませて

 くるとしましょう』


 とファルは男にいった

 男は「はい…。任せて下さいよ」


 と返してから、振り返って

「ああ…。ううんっ…」と喉の調子を

 整えてから、


「村の親切な方々…!

 ネムコはもう大丈夫ですので…

 お帰り下さい!」


 と大きな声を出し、手を振った



『ネムコが引き連れて来たのね?

 …人間を』


 とファルがこぼすと


「はい…。みんなセタ様とネムコが

 心配なんですよ…。中には見事な

 毛並みをみて、村にあらわれた

 神官の使い…"守り神"では?


 等と大真面目に言っている、

 信心深いと呼べるかは、よくわから

 ないですけど…

 そんな老夫婦もいましたよ…」



『………そう。神官の…。

 よかったわね』


 ファルがわかりやすく素っ気なく

 言ったのを男は気にして…


「いや…。でも守り神は、

 セタ様の守り神はファルさんですよ。

 神官様以上に…頼りになります

 サラ様がいなくなった今…

 俺は一番頼りにしてますから…」

 


『は?…………サラ?誰それ?

 "母神の継承を…"とか偉そうな

 ことを言って、子供を置いて

 去っていった母親のこと等

 知らないわ…


 そんなことよりも"早く"

 行きましょう…』


 とファルはせっかちに

 歩き出す…


「子供…?」と声を漏らしてから

 男は(ああ、セタ様のことか…)

 と思いつつもあえて言葉には

 出さずに、ファルに付いて歩く…


 

 ・・・



 暫くして…


「あの…姉さん。ファルさん?」



『なに…?歩くのが早い?』



「方向…」



『なに…?』



「方向が間違ってますよ。逆です…

 村に戻ってますよ…」



『早く言いなさいよ!…もう』


 とファルは振り返り


『こっちでいいのね?…


 流れの中で"いらない名前"を

 出されて…。ちょっと

 イラッとしてたから、感覚が

 ズレちゃったのよ…』


 男は苦笑いしながら


「すみません…。もう

 言いませんから…」



『言ってもいいの…。でも

 さっきの会話で出すのは

 違う…。不愉快の極みよ…』



「…はい。反省してます」



『はぁ~。終わったことを

 私はグチグチグチグチと…


 うん、ごめん。

 …行きましょう』


(ファルさんの弱点は…

 セタ様絡み、その一点だな)


 と男は思いながら、


「はい…。姉さん。

 付いて行きます」


 と返した

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