表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/101

第66話『翡翠の櫛と…千年に一度の気分』

 セタは滑らかな感触の淡い緑色の

 手のひらに収まる翡翠の(くし)を手にとって

『ふうむ…』と観察してから、自分の髪…

 

 そして


『我が唯一の従者より…。私とお前たちへの

 "不死のおまじない"だ…』と言って、


 ノーラとイーシャの体毛を"すく"という

 よりも、その表面を優しく撫でる


 …荒い隙間からは本来の櫛としての

 役割は無く、装飾品としての"効果"が

 ある…。というのが見て取れる


 セタの従者であるディルベットが

 主のセタと…ノーラ、イーシャに

 贈った物だった


 少女が南メイガンの街の宿に泊まった際

 部屋の壁面に埋め込まれた硝子の箱の中

 に丁重に飾られていたモノを気に入って

 ミールに話すと…

  

 彼女曰く"それなりに"高価な物で

 あったが割安の価格で譲ってくれた


 翡翠で作られた工芸品は、繁栄の象徴

 であり、"不死のお守り"として…

 上流に住む住人に重宝されていた



「セタ様、主様の…"不死を願う"

 という、従者の崇高なる願い…


 実に素晴らしいですね…。


 どうか…セタ様の子供である

 可愛いネムコ達にもその想いを

 分けてあげて下さい」


 と…述べて、少女の持っている

 袋から銅貨を一枚だけ指先で挟んで

 持ち上げてみせ…


「"これで"売買成立…」


「それだけで…

 いいんですか?」と心配そうな表情

 で返す少女の肩に触れて…


「"その気持ち"で十分よ…。

 さあ、袋をしまって…」

 

 といった後、

 

「道中、盗まれないように…。

 大切に村まで持ち帰り下さい…」


 と付け加えて、

 翡翠の櫛を手渡した 



 ・・・


 

 街を出る前…

 村までの…帰りの荷馬車を待つ間

 停留所前にある土産物屋に寄った


 中には千年に一度だけ咲く花の実

 という果実の飲料が売っていた…


『"千年に一度"…?いったい誰が

 それを一から計算しているのやら…』


 とファルが皮肉をいった


 ディルベットは、


「でも美味しそうですよ…。ここで

 飲んで行きましょう♪」


 といってブルーノの妹と弟をみた


「お姉ちゃんの言う通り…

 おいしそう。ちょっとだけ

 飲んでみたい」


「うん…。でもココ、いつも千年を

 やってるよ…」



「えっ…。そうなの?」



『ふふ…。面白いわね。ソレ…。

 毎日ここで"千年に一度"が

 味わえるのね…』



「では、"四つ"もらいます!…

 あ、セタ様の分も…お土産用で」



『止めておきなさい…。いつ作って

 いるのか、わからないモノを

 持ち帰るのは…。


 ああ見えて、私の可愛いセタちゃん

 は、体は虚弱で、繊細なんだから…

 お腹を壊してしまうわ…』



「そうですか…。では四つで…」


 そのやりとりを聞いて、もみあげが

 髭と繋がっている体毛の濃い小太り

 中年の店主は、ニヤニヤと笑いながら


「この果実はちょっとやそっとじゃ

 腐りはしないから、もっと買って

 いきなよ…。"可愛いお嬢さん"だから

 ちょっとだけ量をオマケするよ…」


 と押しに弱そうなディルベットに

 対して言った


 少女は(可愛いお嬢さん…?)

 とお世辞を真に受けて、


「じゃあ…五つ」

 と言い掛けたところで


 ファルは『大丈夫よ!』と

 臆せずハッキリと言ってから、


『…ねぇ。オマケなら"三つ"買うから、

 "一つ分"…追加でオマケしてよ。

 本当は、小さい子の分は一つの

 予定だったのよ…。ちょっとくらい

 いいでしょ?』


 と伝え、店主が「いや…でも、

 さっき"四つ"と決めていただろう?」

 と返すと、


『…じゃあ、"一つも"いらないわ…

 "千年に一度"と言いながら毎日

 飲めるみたいだしね…。

 今日はそんな気分じゃないわ…

 ねぇ?みんな…?』


 と言ってファルが「出ましょう…」

 と引き上げるフリをすると


「わかったよ…。じゃあこうしよう

 "四つ"買ってくれ…。そしたら

 "一つ分"追加でオマケしよう…

 どうだ?」



『だって…。どうする?』

 とディルベットに聞くファル


「…あの。それでいいと思います。

 何だか、おじさんも可哀想ですし…」


 と少女は返答し、売買成立

 セタの分の土産が出来た…


 その交渉及び駆け引きを含めた

 やりとりから…ディルベットは、

 ファルのことをみる眼差しが

 僅かな畏怖の入りまじった…

 ちょっとした尊敬に…変わり


 少女は、このファルという、主の

 セタ以上に世の理、世の全てを…

 何でも知っているような底知れない

 盲目の人間に対し

 …今まであまり感じることがなかった

 好奇心に近い興味が出てきた


「短い間でしたけど…ファルさんと

 一緒に旅が出来て、よかったです」


 とまだ帰り道が残っている段階で

 少女が思いのままに伝えると、


『…そう?それはよかった』

 と素っ気なく返すファル


 少女はそんなファルをみながら

(ファルさんのことだから…)と

 想いは伝わっていることを確信

 …強く感じていた

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ