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第63話『可愛い"金色のネムコ"』

 宿の外。玄関の前…

 雨が降りそうな曇り空の中


 居残る"虜の人間"たちは、

 ネムコの肉球をみせる形式(カタチ)

 ブルーノの妹と弟…

 そして"付添い"のファル、

 従者のディルベットを見送った


 ブルーノも一緒に乗っていて

 村の出入り口で降りるとのこと…


 イーシャはセタが抱いていて

 その小さな肉球付きの手を

 つまんで振って、


 隣にはセタの身代わりの女性が

 ノーラを抱いて、セタとイーシャを

 真似た動作をしていた


 大き目の荷馬車が塀の向こう側を

 駆けていくと、セタは隣をみて


『では…戻ろうか?…名前は…

 私が"何か"、付けないといけない

 んだよな…』

 

 と言いながら、ブルーノの妹と弟の

 名付け親にはならなかったことに

 少しの安堵を覚えていた…


 適当には付けられない子どもの、

 一生付いて回るであろう名前…


(少し考えてみたが…浮かばないな…

 "ディルベット"という従者の名前

 すら、だいぶ時間が掛かった…)


『"お前は"すぐに決まったがな?』


 とセタは抱えているイーシャを

 みた。イーシャは初対面で名前が

 決まり、ノーラもネムコについて

 話し合った後、その場で決めた


『難しいときも簡単なときも

 あるもんだな…名前は?

 なぁ?イーシャ…』


 その様子を見て、呼称である

 "木の葉の野宿さん"は


「"ネムコみたいな"名前で

 いいです」と伝えた



『……そうか?』とセタは返してから

『とりあえず中に入ろう…』といって

 宿に入ることを促した



「セタ様…。俺はこのあと

 砂の交換をしてきますので…

 閉めておきますから、どうぞ

 入って下さい」


 と手がネムコでふさがっている

 二人に男が言って、二人がネムコを

 連れて入った後に扉を閉めた



『さて…。もう放してもいいぞ』


 とセタはイーシャを床に置く


『どうした?…そのまま連れて

 行くのか?』



「いいえ…ここで」とノーラも床に…

 

 イーシャとノーラは一緒に階段を

 軽快にのぼっていく…

 二人の人間はそれに付いて歩く


 ・・・


『ちょっとは…。ネムコもっ、

 人間もっ、運動がっ、

 大切っ、だからな…』


 と段差ごとに区切って話すセタ



「はい…」



『……ちょっとはっ、

 慣れてきたかっ?』



「はい…」



『…元気か?』



「……?」



『元気ですか?とっ…。

 "隣りの人"にっ、

 聞いているんだがぁ…なっ!』


 三階の階段踊り場でネムコ達に

 追い付いて立ち止まる二人


 ノーラとイーシャは二人の

 人間の足元にすり寄っては

 見せつけるように床にゴロン

 と横向きに倒れた


「前よりは…」との返答が

 少し遅れて返ってきて、

 セタは、


『そうか…。それはよかった。

 お前は…"恥ずかしがり屋"

 なのか?』


 と言ってから、屈みこみ、

 横になっているネムコに一度

 触れて見上げる視線を投げる


 コクリと頷いてから屈みこみ

 ノーラを撫でる女性にセタは


『すまなかったな…。人前に出るのが

 苦手な人間に、"顔を晒せ"等とは

 言ってはいけなかったな…』



「………」



『この村の周りでずっと野宿をして

 いたんだろう?…』



「はい…。髪を切って、髪と

 体を洗えと…急に言われて」



『……そうか。その私と同じ

 色の地味な服は…

 "天気の人"、前の身代わりさんの

 おさがりか?


 皆気づいていたと思うが…

 "だいぶ"大きさが違うようだな』



「はい…」



『そうか…。ではそれは私が何かの

 予備で着るとして…。今度大きさを

 合わせたものを作ってやろう』



「………」



『…どうした?…不満か?』



「いいえ…。この服は

 次の身代わりの人に…

 引き継いでいくモノと…」



『そう…アイツが言っていたのか?』



「…はい」



『ふぅ~ん…。そうか…ならば不便は

 あるが、そのままうまくそいつを

 着こなすしかない…ということか』



「………セタ様」



『何だ?』



「セタ様と違って…


 ワタシは鼻が潰れて…

 "ブサイク"だから…

 髪の毛だけだから…。


 いつも…。顔を…」


 セタはふぅ~と息を吐いて


『……そんな返答に困ることを

 私に言うな。そんなことを言って

 しまう恥ずかしがり屋のちっちゃな

 体躯のお前さんは……』


 とにじり寄って


『"ネムコみたい"で可愛いぞ』


 と身代わりの彼女の金色の髪を

 "よしよし"と言って優しく撫でる


『綺麗な毛並みだな…。まるで

 金色(こんじき)のネムコだ…

 にゃぁ~?』


 鳴き声で同意を求めるセタに

 金色のネムコはくすりと笑った


『私はこの村の大きなネムコだ…

 たまに鳴き声が自然と出るんだ…

 みゃぁ~』



「あははっ。すごいおかしい…」

 と可愛く笑う、金髪小柄の彼女を

 みて、セタは『決まった…』と

 言って、立ち上がると、


『"メルコイン"にしよう』

 


「名前…ですか?」と立ち上がる



『ああ、そうだ…。ちっちゃくて

 可愛い金髪のお前をみて決めた』



「……はい。ありがとう

 ございます。嬉しいです…」



『そうか…。では、メルコイン

 よろしくな』



「はい…。お願いします」


 セタは、感動して泣きそうに

 なっている彼女の頭をもう一度

 "よしよし"と優しく撫でると…


 小さな体躯のメルコインは、

 密着しているセタの胸に、

 恐る恐る…どこか遠慮がちに

 控えめに手と顔を付けている


 セタは『もっと来ても

 いいんだぞ…』と最後には

 彼女のことを大きなネムコの如く

 抱きしめる状態(カタチ)になっていた


 その最中、

(あっ…)とメルコインがノーラを

 真似て乾いた声で鳴いたのを…

 セタは気づかず、


 彼女は、今度は顔をみて…髪の毛の

 合間から目元と瞳を晒して

「"あっ…"これは、ワタシの好きな

 控えめなノーラの…声」

 とセタに伝えた


 セタは『…目をみてくれて、

 ありがとう。可愛い…ネムコの

 メルコイン』と返して

 さらにギュッ…と。想いを込め、

 包み込むようにして彼女の小さな

 少し震えている体躯を…抱き締めた


 その間、ノーラとイーシャは大きな

 ネムコ達のやりとりを不思議そうに

 見上げていた

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