第60話『月夜の発光と…ファルの常套』
クロが居なくなってからの
月夜の日…
ファルはクロとの出会いを与えて
くれた宿の廊下に出ると…
独り、小さな椅子に座り思いを馳せる
この場所で…話した秘密が
多くある
クロやサラがいなくなり、隣りの
部屋が静かになるなぁと思ったら、
それなりに騒がしい様相…
隣りのセタの部屋にはブルーノの
妹と弟がいる…
今夜は"どうしても…"セタやネムコと
一緒に眠りたいと頼み込んで、
セタの部屋にいる…
そのセタと妹弟の二人とブルーノの
廊下でのやりとりが、部屋にいる
ファルの耳にはよく聞こえていた
ふと…何となく、
(隣り、狭くないかな…)と思いながら
ため息をついて
(旅に出るのは…当分先か…
しばらくはいようと決めたのだから)
とおぼろげに考えていると
セタの部屋から妹と…弟が出てきた
慣れていない夜の場での足音から
セタでは無いのがファルにはわかった
二人は月夜の廊下にいる
ファルをみつけると…
「あっ…ファルのお姉さま」
「姉さま…?あ、ファル姉さま」
と声を掛け、ファルは
『…どうしたの?厠に行くの?
それともお姉さんのところ?』
と返した
二人は少しの間黙った後…
「言ってもしょうがないよね…」
「うん…そうだよね」
と小さな声で話す
『うん…?どうしたの?』
と優しい声のファルに
「実は…。うーんとね…」
「………」
『もしかして…。セタの寝相が
悪かった?…寝台から落とされて
一緒に寝るのを諦めたのかしら?』
「……いや、ねぞうはわるいけど」
「うん……」
『………何かあったの?』
「うん…あったの」
「…うん。あった」
『…それは、何?
私に言っても意味が無いこと?』
「………そうかも」
「うん…たぶん」
『はぁ…。そうか…残念』
と落ち込んだ"フリ"をする
ファルに二人は
「でも、いちおう伝えるね…」
「セタのお姉さまよく寝ている
から…言えなくて…」
『うん…で?何?』
「ネムコが…ね。ちょっとおかしいの」
「うん…おかしい」
『ネムコが…?どうおかしいの?』
「…すこし、光っていたの」
「うん…僕もみた。暗いから
わかった。…光ってた」
『…光る?今もそうなの?』
「いまは…。もう光ってない…」
「きづいたら、ネムコがねむりながら
…光ってみえた」
『………そう。それは、この私に
は確認しようがないわね』
「……ごめんなさい」
「…ごめんなさい」
『いいのよ…。で、これから
どうするの?お姉さんに
伝えにいくの?』
「………ううん。もう
だいじょうぶ…。こわくて
でてきただけだから…」
「うん…僕も」
『そう…。じゃあセタの部屋に
戻りなさい…。お姉さんの
部屋でもいいけど』
「…………ファルのお姉さま
のおへやにいきたいな」
「うん…僕もそうおもう」
『……うん?なんで…?』
「話しをちゃんと、
きいてくれたから…」
「僕たちのこと…
しんじてくれたから…」
『………そっか。ふつうの大人は
この場合、適当にあしらうのが
常套なのよね』
「…だめ?」
「………おねがい」
『わかった…。では…
隣りの部屋だから…私を
案内してくれるかな?』
「うん…。ありがとう」
「お姉さま、ありがとう」
ファルは別に子どもが嫌いな
わけでは無い…
旅の最中でも、自然と子どもに好かれて
しまう特性があるから、その後の別れを
考えて、自分からは積極的に関わろうと
しないだけだ…
(この子たちとの別れは…きっと。
寂しくなるでしょうね…)
という予感を抱えながら、
ファルは二人の導きのまま部屋に入り
一緒に眠ることにした
★
翌朝、セタが慌てた様子で
廊下に出ては、扉をたたき、
ファルを起こした
『すまない…二人はいるか?
ブルーノの妹と弟だ…
消えているんだ…』
と青ざめた表情のセタ
ファルは何故そこまで
セタが慌てているのか?
よくわからなかったが…
「この部屋にいる…。夜に
偶然出会ってね。そのまま
一緒に過ごしたのよ」
『………ほんとか?』
とファルの部屋の中を覗いて
二人の所在を確認すると
『はぁ~。よかったぁ~』と
安堵するセタ
ファルはその過剰な反応に、
「…どうしたのよ。らしくない
とは言わないけど…。大袈裟
過ぎるわ…」
『いや…。すまん。ちょっとな…
過去に色々とあって…。子どもが
突然"消えるように"居なくなると…
"嫌な予感"がするようになって
いるんだ…。
まっ…とにかく無事でよかった…。
起こして悪かったな…
まだ寝ていてくれ…』
とセタはファルにいって
『あ~よかったぁ~』と独り言を
いいながら自室に戻る
ファルはその後、自分の部屋の
二人の寝ている寝台に慎重に
戻ると…
(あっ…。昨夜のアレを話すのを
忘れてた…)
と思ってから、
(また後に、しよう…)
と…。もぞもぞと二人のいない
スペースに移動し、眠りについた




