第49話『雨宿りの日』
雨の降る外…。シャーマンの女性の
幽霊は、屋根から滴り落ちる雫を
見ながら…セタの部屋の窓際で背を
向けて佇んでいる
そこに入室したセタが『おぉっ!』と
声を上げる
幽霊の彼女からすれば大袈裟に思える
セタの反応に
(…どうしました?)と伝えると、
『どうした?って…いきなり居ると、
驚くのは仕方がないだろう…。
"雨の日だから"という背景も…
その理由が成り立つ要因になる
ノーラやイーシャがその位置に
いたならば、そうはならない…。
このように地面に足がついている
からだ』
と、セタが何だかまとまりきらない
上によくわからない回りくどい説明
と言い訳を"ぼろぼろ"と口にする
(コレも含めての生活なのだろう…)
このムラの宿での出来事は、
常に…。と幽霊は感じながら、
(………雨宿りしているだけですよ)
『わかっている…。でもその姿…
"天気の人"を真似ているのか?』
(…いいえ。このようにしている
のは誰のためでもありません)
『そうなのか…?だが向こうも別に
誰の為でもないと思うぞ…
天気占い(アレ)は趣味趣向であり
習慣だろう…』
とセタは既にネムコ達と共に
寝台に寝転んだ状態で声を掛ける
(……この前、セタの小さな従者さん
が、怪訝そうに独り言をこぼして
いましたよ)
『…うん。それは何だ?』
(セタ様、"独り言が多い"な…
部屋で誰かと話しているのか?
と思ったら、あの子の目からは
別に誰もいないから…
それで疑問を抱いた……
つまり…"今の状況"ですよ、きっと)
『はぁ…。ま、それもそうだな…
確かにおかしいよな…
独り言にしては相手と話し過ぎだ…
その理由、説明だが、元来私は独り言が
多いから…と。
そう、説明しているけどな…
でも、まぁ…。本当のこと…
"ユーレイさん"とお話しして
ました…なんて言ったら
頭おかしいと思われるかもな…』
(………………雨。止みませんね)
『ああ…。朝、天気の人が言っていた
"夜までずっと降っている"と…
明日は晴れるかな?…』
(多分、今も…雨をみて、同じように
"こうしている"でしょうから、
聞いてきましょうか?)
『ん…?別にいい。そこで好きなだけ
雨宿りしててくれ…。
"幽霊が自分の部屋で雨宿り…"
しっとりと、"絵になる"風景だ…』
(………"絵"と言えば、素敵さん。早く
帰ってこないかな…)
『………アイツ。ミアは…。今ごろ、
どこで何をしているかな。
…今度戻ったら、そのまま付いて行って
一緒に旅をしてみるのも、案外面白い
かも知れないぞ…』
(………そうですね。
それも面白そうですね。素敵さんの傍に
いるのも悪くないですからね…
素敵なお話しがずっと出来ますから、
道連れの旅は可能か?話してみます)
『…………そうか。本当に…
そうするのか』
(…その感じ。セタは寂しいのですね?)
『いや…。まぁ…な。ネムコ好きの同士が
いなくなるのは、正直寂しいな…。
何だかんだあって…。その中でも本当の
意味で一番…
私の内面と実情…そしてこの世界にいる
はずのない、精霊の姿でない…実物の
"ネ…コ"のことを知っているのは、
過去の知恵を持った、幽霊である
お前だけだからな…』
"ネ…コ"は精霊の名前だ。それが
時を経て伝説の生物…"ネムコ"と
呼ばれるようになっていた
(………ここにいるはずのない古来の…
シャーマンとしての見地…。
それと"実態が無い"ことが、
セタの充たされない好奇心の役に
立っている…。ということですね?)
『………』
(どうしました?…違いますか?)
『……そんなに淡々と…
二人の関係を明確に…
具体的に説明しないでも
いいじゃないか…。
自分や相手が、ただ"寂しい"
と気持ちを伝えるだけで事足りる…
そうではないのか?』
(…………なるほど。
それもそうですね…)
『…ミアと一緒に…というのは冗談だよ。
半分…いやそれ以上の…冗談。
私はどれだけ平気な声と顔をしていても…
自分に嘘は付けない。いなくなるのは…
やっぱり寂しいんだ』
(はい…。セタの内面
よくわかりました)
『…ああ。ありがとう。
可能な限り、ここに、この場所に
いてくれ…。お願いだ…
"都合のよい"存在だから…という
のではなく、ただ寂しいだけだ…
わかってくれ』
(はい…。わりました。そうしますよ。
そんな貴女はネムコ達とお昼寝の時間…
おやすみなさい)
『……おやすみ。お前が居なくならない
ように…。適度に…
"ぼんやり"と休むよ…』
(…はい。ご自由に…
雨が止まない限りは、セタが
起きるまで、ここにいます)
★
セタ様の部屋のドアが開く
そして…
「きゃっ!きゃ。雨雨ぇ~
もう最悪ぅ~」と声がした
『雨の中…。ご苦労さま…
…平民さんは、真面目…ですね』
とアミスは帰ってきたブルーノに
声を掛ける。窓はすでに閉めていた
「……まっ、ねぇ~。サボってたら
相互に監視しあっているから
すぐにバレるからねぇ~…
こんな雨の日…
外にはもっと過酷な任務に
あたっている人もいるから
こっちはまだマシだよ…」
『木の葉さん…。雨宿り…
してるかな?』
「さぁねぇ~。あっちのやり方
はよくわからないから…」
ブルーノは寝台二段目に上がり
「それでね。今日の今日…
木の葉の野宿さん。
しかも、だよ…!ていう感じでぇ…
本人の報告によると…
ほんと、可哀そうだった…」
『……雨のこと、ですか?』
「まぁそれも当然あるけど…。
ちょっと"変な罠"があってね…。
布切れが木の枝に巻かれていて、
それを取ろうとしたら…。
"浅い深さの落とし穴"
で…中には泥に混じって動物の糞が
入っていてぐっちゃぐちゃ…
まったくヒドイことをする人間も
いるもんだね…」
『あら…。可哀そう』
「でしょお~…。もう別のお手当を
増やして上げて欲しいくらい」
『…糞を、踏んづけた…手当』
「…………まっ。とにかく、今度
犯人をみつけて仕返しをして
やるぅ~と言っていたから、
ま。可哀そうだけど…
そこは切り替えて、好きにして
ねぇ~って感じ」
『…………』
「あっ…別に身代わりさんのこと
無視してないよぉ~
ちょっと聞こえなかっただけ…
気にしないで…。今日は何か
あった?…神官様とお話は?」
『………普通の話し。変わりなし』
「ふぅ~ん。で、他にはぁ~?」
『…なし』
「んじゃ、はぁ~い。お休みぃ~…
雨の日の夜は特に怖いから…
下にいるかも…よろしくねぇ~」
『もう少ししたら、止みますよ…雨。
それと明日はずっと…晴れてます
当たらなければ…ごめん』
「………んもぅ。雨でも風でも、
こっちは夜が怖いのぉ~
わかってよぉ…。もぉ~…」
『……わかりました。いつでも…
降りてきて…大丈夫
優しく…そっと。…迎え入れます』
「あのさ…。それはそれで
ありがと……。あと…さぁ」と、
ブルーノは頭をぽりぽりと
掻いてから、少し考えたのち、
じっと上からアミスをみて
「お給金の件。ありがと…
身代わりさんのお金、減っちゃう
けど…いいの?」
『…平気です。使うあてが…
ありませんから』
「そう…。それなら…。うん…
ごめんね。ありがとう。
恩に着る…。
同情は買いたくないんだけど…
働けないお母さんが…弟や妹と
一緒にボロを着て物乞いをして
いる日もあった…
知ってるんだ…
こんな雨の日は、絶好の可哀そうな
目で見られる日…
こっちも…私も、家族がいるから
色々と大変なんだ…」
『…わかってます。お金のことなら
いいですよ…』
「うん。ほんとありがと…
おやすみ…」
『おやすみなさい』
「あ…。でも、そもそも身代わりさんが
悪いんだからね。こっちが怒られない
ように…ちゃんと仕事してね」
『はい…。努力します』




