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第43話『ひとりの人間』

 クロの部屋。祈祷を終え、休息を

 とりに来た"わかりやすい"表情を

 晒しているサラに対して


「神官様も、やっぱりひとりの人間

 なんだね…って、思った」


 とクロが嬉しそうにいった。その

 発言に、サラは苦笑いをしながら、


「なんだ…クロ。私の従者は、私の

 心情を慮る気持ちは無いのか?」

 と返した


 サラはファルやセタだけでなく、

 勘違いの"熱い行い"の件を…

 クロにも正直に話していた


「そう見えたらごめんね…。

 でも僕は嬉しいんだよ…


 そういう恋路に似た複雑なことを…

 普通は話しにくいことを…


 ちゃんと僕にも話してくれるよう

 になってくれて…。まだまだ頼り

 ないと思われているかも知れない

 けど…


 うん…。すごく嬉しい

 そして、サラは、ラナ様みたいに

 人間らしく生きて欲しい…と、

 あらためて思うよ…」



「ラナ様は…違う。私等とは

 比べられない…。比べるのすら

 失礼だ…。ラナ様は神官らしい

 神官だ…。立派で、何事も

 わかっていて…


 誰からも愛される存在…。

 私なんかとは違う……」



「ううん…。それは思い違いだよ。

 ラナ様って、あったかいんだよ…

 それで、僕の知ってるサラは、

 熱いくらい…。


 だから、もっと時間が経てば、

 ちょうどよくなるよ…。でも

 その時のサラは、僕にとっては、

 "ぬるま湯"になるけどね…」



「…ぬるま湯?…そこは何を

 言っているのか?イマイチよく

 わからないな…。クロは…」



「……そうでしょ?そういう最も

 らしいことを言うのって、

 僕、好きなんだ…。サラにだって

 自分だけの捉え方や表現の仕方が

 あるでしょ?…それと同じだよ」



「……そうかな。私もそんなことを

 言ってしまっていることがあるのか?

 …う~ん。まあ、別にいいけど」



「そうそう、それでいいよ」




「はぁ~。それにしても…

 溜息の出るくらいの良い天気だ…

 寝てしまうには惜しい…」



「そうだね…。天気予報通りだね…」



「………天気予報?」



「そう…。早ければお昼過ぎには

 わかるらしいよ…。この前セタと

 一緒に、ネムコを連れて、彼女の

 部屋に遊びに行ったんだけど…


 ネムコと戯れている理由がね…

 ネムコの"におい"をセタみたいに

 つけたいから、と言っていたよ…


 すっごく真面目で…すっごく

 変わった人だね…。ウーノスさん…

 "天気の人"って…」



「…天気の人?」



「セタがよく使うんだ。天気の人って…。

 自分で付けた…ええと、ウーノスって

 名前よりも呼びやすいらしくて。

 僕も、ああ、なるほど

 "天気の人"だなぁ…て」



「……………」




「サラは、最近朝食をここでは

 とらないね…。だから宿での

 情報が遅れてしまうんだよ…。

 来ない理由はわかるけどね…」



「………まぁ」



「僕は、その後待ってれば、毎日

 サラに会えるからいいんだけど…


 天気の人ね…。サラの話題や名前を

 出すと、あまり顔には出さないけど

 寂しそうにしているよ…。


 ファルは最初、敵意むき出しで

 そっくりさんの彼女を警戒して、

 その存在に苛立っていたけど…


 今はサラの方にその意識がいって

 いるみたいで、彼女に同情的に

 なっている……」



「…………」



「別に毎日ここで朝食を一緒にとる

 必要は無いけど…。たまには

 会ってあげて欲しいな…


 セタの警護の為の身代わりらしい

 けど…。立場や役割は関係なく、

 サラと(おんな)じひとりの人間だよ…

 

 あいさつ程度でもいいんだ…

 避けて顔をみないのは…。ちょっと

 違うと思う…」



「…………私は。そこまで避けている

 わけではない。あちらから顔を

 出して会いに来て、声を掛けられれ

 ば、最低限それに応じるだろう…」



「……なに、格好をつけてるんだか」



「何だと…。クロがそんなことを

 私に言うのか?」



「……ごめん。

 つい"本音"が出ちゃって」



「……今日はもう帰る」



「………僕は引き止めるべきかな?」



「………引き止めないでいい。帰る」



「……わかった。引き止めない。

 見送りはするよ」



「………勝手にしろ」



「………セタのところには行くの?」



「そんなの、私の勝手だ…。今日は

 行かないかも知れないし…行くかも

 知れない」



「………あっそ。じゃあ、ご勝手に」



「ああ、勝手にする…。じゃあな」



「明日はここに来るの?」



「それも私の勝手だ…。来たくなければ

 来ない。気が向けば来るかも知れない

 …文句はあるか?」



「…………そう。わかった。

 じゃあ、しばらく来ないでいいよ。

 ついでにセタのところにも、この宿

 にも来ないでいい」



「…うっ。…それは卑怯だ。それなら

 私はどこへ行けばいいんだ?」



「どこにも行かなければいいんじゃない?

 寂しく宿舎で寝泊まりしてれば…」



「な!?……………クロのバカ!!!

 もう知らないからな!!!…

 お前なんて嫌いだ!!!」



「僕もサラなんて嫌い!!!

 顔も見たくない!」



「………」



「………」




 互いに口を閉じて、睨み合い…

 視線をそらしての沈黙の後…


 気まずい静寂の間に割って入るか

 のように…。扉を"ゴンゴン"と

 遠慮なく叩くノック音


「……僕が出るよ。サラは出ていくの?」



「ふんっ!…………それより、

 さっさと出ろよ。のろのろしてると

 待ちくたびれてしまうぞ」



「はいはい…。誰かな…?こんなときに

 …まあセタか、もしくは…」


 扉を開けると、いきなり杖で床を

 "ゴツン!"と叩く音…。目の前にいた

 のは、ムッとした表情のファルだった


「ファル…。どうしたの?

 あぶないよ…」


 と驚いた様子のクロに、ファルは

 林檎の木の杖をクロの眼前に向けて


「…顔はどこ?隣りが"無駄に"

 うるさいから殴りに来た…

 …もう一人は?」


 ファルは、クロの部屋に居るのが

 サラであることは、休息の慣習から

 当然、知っている


「(ここに来るまで)扉が開く音は

 しなかった…。

 まさか、後先考えない猛進の馬鹿

 だから…窓から飛び降りて逃げた?


 …でも、その場合は、もっと

 鈍くて激しい音がするから………


 あ、呼吸した…。いるねぇ…

 ま、知っていたけど…。


 さて…


 クロ…。クロのことはコツンと頭を

 小突くだけで済ますから、

 もう一人のおバカさんの…からっぽ

 の頭の位置(ところ)まで案内してよ…」


 クロは迷った挙げ句、サラに

 視線と顔の動きで合図を送った


(僕がファルを違うところに誘導

 するから、その間に逃げて…)


 サラは(わかった…。頼む)と

 手のひらをみせて合図を返す


「あ…。今、わからないように

 "何か"してる?


 クロ…。教えてあげる…

 この前サラは…


 "引っ叩いて欲しい"と私に、

 言ったのよ…。だから、喜んで

 受け入れてくれると思うの……


 だから大丈夫…問題ない。

 ねぇ…サラ?…そうでしょ?」


(えっ……。そうなの?

 ねぇサラ、どーする?

 このまま殴られる?)


 とクロは視線を送り、


(いや…。手で叩くとか殴るなら、

 いいけど…。杖で、本気で殴るのは

 しかも、顔や頭はマズイ……

 今回は、却下。ダメだ…)


 とサラは手のひらを見せ首を振る


「えぇ…。ダメなの?

 嘘でしょ?…神官のクセに、

 嘘をついたの?」

 

 とファルは、サラからの返答の

 無い状況から意思を感じ取り、


「じゃあ、扉の前から動かないで

 いようかな?…待ってれば、

 勝手に殴られに来るでしょう?」



「あの…。ねぇ、ファル……。

 ええと…。これはその…。

 特に揉めていたとかじゃなくて

 ちょっと言い争いをして、その

 …ね。だから、まあ大したこと

 じゃないんだよ…。うん……


 うるさくしてごめん…。

 もうしないから、許して…

 …ね?ほら、サラも言ってよ!」



「…ああ、ほんとうだ!

 クロと"ちょっとな"…。もう

 しない…。神に誓って、

 二度としない…。約束する」


 ファルはクロとサラの発言に、

 しばらく考え込むと………

 杖を一度振りかぶってから、

 脱力のまま静かにおろし…


「…あ~。"無駄に"疲れた…。

 部屋に戻って休もう……

 子供の世話は楽じゃないわ…」


 と言って壁を伝って、

 自室に戻っていった


 ファルの部屋の扉が閉まる音が

 すると…クロとサラは互いに顔を

 見合わせて、


「はぁ~」と重い溜息をついた

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