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第39話『本当のこと』


「たっだいまぁ~

 "木偶の身代わり"さぁ~ん」

 

 ブルーノとセタに名付けられた平民衣装の

 くりくりお目々の活発そうな小柄の

 女性は、部屋に入るなり声をかけると…


 年季の入った茶色のリュックを

「よいしょぉ~っ!」とベッド

 に放るように置いてから、

 梯子で軽快に二段目に上がって、


「お~い。ただいまぁ~。聞こえてるぅ?

 それとも、聞こえないふり?

 元奴隷のお姫様ぁ~」

 

 と再度"ウーノス"に話しかけた


 ウーノスとセタに名付けられたセタと

 同じ艶のある金色の髪、そしてすらっと

 した体型の青い瞳の美人の女性は、

 ゆったりと振り返り、


「おかえり…お疲れ様。"泥土の平民"さん

 …。明日は曇り、夕方から雨が

 降ると思う…。外れたら、ごめん」


 と柔和な声質で言ってから…

 再度窓の外を眺める


「何だ…。また、てゆぅ~か、"まだ"…

 窓から外を…天気を見ているの?


 夜風が入ってきてしまうしぃ~

 開けっ放しは、少し物騒だよぉ~


 やめて~。はんた~い」



「…そう。わかった…。もう明日の

 天気は占ったから、今日は閉める」



「そうそう♪…そうした方がいいよ。

 で、今日はどうだった?…こっちは

 問題なし…。というか特に無し…


 ミール様に報告するから、一日毎に

 まとめておきたいの。


 …"木の葉の野宿さん"達からはムラの

 外についての報告を受けているから、

 あとは身代わりさんだけ」


 ウーノスは窓を閉めてから、

 振り返り、ベッドの二段目にいる

 ブルーノをゆったりとみて、


「特に無いかな…。しいて言えば、

 セタ様になるには、もう少し肉付きが

 よい方がいい…ということが、

 "知れた"ことかな…。


 あと、このムラの神官様は、

 よく喋る。そして………」



「…うぅん??…そして?」



「……まあちょっと"戯れ"が過ぎる

 という感じ」



「なぁ~に?…戯れって?

 遊んでもらったとか?…

 いい年して、隠れんぼでもしたの?」



「いいえ。そうじゃなくて…


 "情熱的"で…。こちらも

 その気持ちで"お返し"をしないと、

 "セタ様に"失礼かなと思って応じた…。


 そんな…愛おしい"戯れ"のこと」



「はぁ~ん?…ちょっと、ちょっと…

 あのさぁ…。身代わりさぁ~ん…

 そ~ゆ~のはね…具体的に言って欲しい

 んだけどぉ…。ミール様に怒られるのは

 報告者のぉ…。"こっち"なんだよぉ~…


 わかるぅ~ん?」



「……そうなの。ごめん。では、

 今日あったことを詳細に話すね…」


 ・・・


 ウーノスがゆったりとその内容を

 話し終えたあと…

 ブルーノは呆れ顔でいった


「……ねぇ。身代わりさん。

 最後まで聞いたけど…

 そんなこと、あるわけないじゃん…


 もしかしてさぁ…虚言。いや……

 妄想癖があるのぉ?内緒で教えて?」



「…妄想癖は無い。事実を言った

 だけ。でも、信じるか信じないかは、

 天気予報と同じで…。平民さんが、

 報告するも、しないも自由…」



「…じゃ、今回は報告しない。

 神官様がそんなことをするわけが

 ないもの…。やめてぇ~

 たすけてぇ~。って感じぃ~」



「……そう。ごめん。濃厚な唇の味…。

 本当なんだけどな…」


 そう艶っぽく言ってから、

 セタの影武者であるウーノスは、

 セタではない自分の唇をファスナー

 を閉めるように人差し指で触った




 ★




 翌日。サラはいつものように

 宿の階段を上がっていく…


 が、その表情は昨日よりも

 寝不足の感があり、その足取りは

 力なくふわふわとしている



『おお…。どうした?サラ…

 "ヨレヨレ"じゃないか…』


 セタがノーラとイーシャを連れて

 階段を降りてきた


 早速、ノーラとイーシャは

 先にサラの段まで辿り着くと

 顔と喉を擦りつけてお約束の

 "あいさつ"をした



「はぁ…。ネムコか…。それに

 "セタ様"…。おはよう」



『セタ様ぁ?…どうした?

 体調が悪いのか?朝食は宿舎で

 食べたのか?』


 とセタが降りてきてサラの

 おでこに手をあてた


『ふむ…。熱は無いようだ…』

 と言ってから、セタはサラの

 目の下のくまをみて


(…寝てないな)と思い

 サラの脇を抱えるようにして

 支えると


『よし…ではクロの部屋まで

 神官様をお連れしよう…。


 いつぞやのお返しだ…


 ノーラ、イーシャ、運動は

 後だ。引き返すぞ…』


 と足元のネムコに伝えて

 階段を上った


 ・・・


 クロの部屋の前に着いた

 サラは「すまない。ありがと…」

 と感謝を伝えると、

 少し黙ってから、視線を微妙に

 合わせずに、


「なぁ…セタ」と声を掛けた



『うん。…なんだ?』



「昨日の帰りの"こと"だが…

 ちょっとお互いやり過ぎ

 だったかなぁ…と」



『ん?…昨日のこと?

 ああ、そうか…

 お前は"習慣"を守らずに…


 昨日はそのまま挨拶なしに

 帰ってしまったことだろう?


 サボったのはお前だ…。


 お互いに…というのは、

 違うんじゃないか?』



「あ?………え?」



『"え"も"あ"も無い……


 まっ…疲れているときは

 無理をするな…。こうして

 また会えるんだから、義務

 としてやる必要は無い…


 気にするな…』



「…………」



『ただアレだな…。一日の中で

 一度もサラに会わず、話もせず

 一日が終わる…というのは、

 想定していなかったな…


 ふふふ…慣れとは恐ろしい

 ものだ。いつも会える、話せる

 というのはお互いの行動次第なの

 だと"知れる"ことが出来た…』



「セタ………憶えてないのか?」




『ははっ。何を言っている…


 昨日はお前に会えなかった…

 顔を見ないで一日が終わった…

 大切なことを気付かされる

 "よい"一日だった…


 "そのように"憶えているぞ…


 まあとにかく、気にするな…

 お互いに遠慮はいらないぞ


 じゃあな…。私はネムコ達

 と運動の続きをする…


 よしっ…。ノーラ、イーシャ

 応援ありがとう。…戻るぞ』



「……………」


 廊下を階段の方向へ歩いていく…

 ネムコを引き連れたセタの後ろ姿を

 みながらサラは呆然と立ち尽くし、


 自分の唇を指先でなぞるように

 触れて…


(…幻のようなセタのアレ…

 そして、あの後の濃密なアレ…


 もしかして…夢なのか?

 いや、そんなことがあるのか?)


 クロの部屋の扉が半端に開いて

 クロがひょっこりと顔を出す


「サラ?どーしたの?…

 入らないの?…セタと話して

 いたでしょ?待っていたのに…」


 その言葉に振り向くと

「なぁ…。私は昨日もここに

 来たよな?…そしてセタに

 挨拶をして、クロの部屋で

 休んで、その後、セタのところ

 に向かったはずだよな?」


 クロは頭に?を浮かべながら


「…うん。そうだよ。来る前は

 どうか知らないけど、僕の部屋

 でよくわからないことを言って

 から…ぐっすり休んでたね。


 でも…帰りは、確かそう…廊下に

 出て見送った時…。セタの部屋の

 方向には行かなかったね……


 "まぁいっか…"と僕は思って

 部屋に…」


 クロの話を遮るようにサラは扉を

 開けて、急いで部屋に入ると、

 クロの両肩をつかみ揺らしながら、


「え…?どーゆーことだっ!?

 いやだって!セタの部屋は…

 替わったはずだ…!階段の前に…

 表札があって、"セタ様の部屋"

 と書いてあって…それで!」

 

 と畳み掛けた


 クロはサラが疑問に感じている

 ことに「あ~…そうか」と

 すぐに合点がいったようで、


「サラは部屋を間違えたんだね…

 伝わっていなかったんだ…」



「………え?何だ?教えてくれ!」



「あそこの部屋は…新しく来た

 "警護の人"の部屋らしいよ…」



「……いや。まあ"警護の件"は聞いて

 いたが…。その…内容までは」



「そうだよね…。唐突に決まった

 から僕も驚いた…。アレは、

 "そっくりさん"だよ。セタの…」



「えぇ…。…嘘だろ?あそこまで

 似ているなんて…」



「いや。ほんとだよ…。さすがに

 顔までは…ね。


 あのさ…。小声で話すけど…


 こんなことを言ってしまっては、

 申し訳ないけど…。あのそっくりさん

 …。可愛くて美人ではあるけど…

 本物のセタの方が、凛々しくて

 目が輝いて、整っているかな?…と、


 これは、僕の"悪い"感想…。

 早く忘れてね」



「………………………」



「うん…?サラ…。大丈夫?

 …時間が止まってしまってるよ…


 あ~何その目の下の"くまさん"…

 もう…。早く寝たら…?」




「…………………ああ。そーする」


 その後、サラは何やら

 ぶつぶつと言いながら、

 クロの部屋の寝台にバタンと

 倒れ込むと…そのまま、

 うつぶせの状態で眠って

 しまった…

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