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第38話『幻のようなアレ』


 宿を訪れたサラが…一歩一歩

 ゆっくり階段を上がって来た


 途中欠伸を抑える仕草をして

「ふぁ~。ねむい…」と独り言を

 こぼす


 今日の朝食は、神官宿舎で摂った

 後はいつものようにクロの部屋で

 休憩をする


 四階に着くと一息ついてから

 前方の部屋をみる


【セタ様の部屋】と真新しい表札が

 扉の横の壁に付けてある


「あぁ…?」


(セタは、部屋を替えたのか?

 それにしても、わざわざ…)


 自分のよく知っているセタが…

 わかりやすく自室に、自らの名前を

 掲げているのをみて


("ネムコ達の楽園"とか、好奇心を

 刺激する名称(なまえ)ならともかく、

 

 "そのまんま"なんて…

 らしくないことをするな…)

 

 とサラは思いながら、


「まぁ、挨拶だけしてみるか…」

 と扉を小突くと扉が僅かに開いた


 しばし待つも、主は顔をみせず

 扉はそのまま……


 サラは「…うぅん?」と小さく唸り

 ながら扉を開けて入室


 部屋の主は窓際にいて、外をみていた


「おっ…。居るなら出てこいよ…


 ところで、どうした?一番奥から、

 ここに部屋を替えたのか?

 階段と厠が近いと楽だからか?


 前に言っていた警護の関係か?

 避難する際に便利…とか?


 しっかし、"セタ様の部屋"なんて…

 らしくないことをするな…」


 そう言いながら寝台端に

「よし…!」と声を出して座ると…

 側面に梯子が付いていて、寝台が

 二段になっていることに気づく…


「おっ…。上にも寝床があるのか?

 前は無かったよな…。ふぅん…

 そっか…。もしかしてネムコ用か?


 部屋が替われば色々と変わるもの

 なのか…。何か?違和感あるよな…」


 部屋の中は寝台と机と椅子が二つと、

 鏡台…あとはがらんどうで、

 窓側の隅にいつもあったはずの

 ネムコの砂箱、壁に掛けてある

 はずのミアの描いた絵が無かった


「…………」


 金髪の女性は何も返答せず、窓際に

 立って、サラに背を向けている


「お~い。どうした?…さっきから、

 日向ぼっこか?考え事か?


 あ…もしかして、私にしか言えない

 秘め事か、悩みでもあるのか?」



「…………」



(ああ…なるほど。わかった…。

 黙って、背を向けて、誘っている…。


 暇を持て余している"セタ様"は…

 ちょっとした驚き…。日常の、

 "刺激"が欲しいんだな…)


 とサラは勝手に"セタ"の心中を慮り、

 立ち上がり、そろり静かに近づくと…

 その体躯を背後から抱きしめた


 が…。何の反応も無い。サラはふと…

 人形に抱きついている気分になった


「んん…?セタ、ちょっと…華奢に

 なったな…。もうちょっと控えめな

 がらも柔らかい"お肉"が最近の惰眠

 ぶりからついていたような気がするが…」



『そう?………他には何かある?』



(おっ…。やっと、しゃべった…)

 サラは少し考えてから、

 

「"他に"…と言われれば、う~ん…

 そうだな…その、"話し方"も、

 "声"もちょっとおかしい…


 寂しがり屋のファルと…夜に話し

 過ぎて、"声がれ"でもしたのか?

 ま、それはただの冗談だけど…」


 とサラは言ってから、

 抱擁する力を少し強め、


「何か、今日は、らしくない可愛い

 声を出す…"心境の変化"とか?

 よくわからないけど…」


 自分の台詞に照れるサラ

 今日は快晴。いい天気だ…


『……そう。なるほど。…あとは?』



「あとは…。そうだな、いつものネムコ

 の匂いがまるでしない…。洗濯したて

 の状態か?…まあ、私はどちらでも

 構わないけど…。何となく、普通の

 しおらしい女性らしさが出ているぞ…

 

 今日のお前は…。いひひ…いつもより

 ちょっと従順感あって可愛いかもな…


 いつも可愛いけど…今日は特別だ!

 なーんて…な。一人で照れっぱなしだ」


 サラは照れながら先程まで日に当たって

 いたと思われる金色の髪の匂いを嗅いで

 から、自分の所有物を明確にするネムコ

 行為の如く頬をすりすりと擦り付けた



「…気遣いありがとう。サラ…。クロの

 ところには行かないの?」



「………ん?ああ、そうだな…

 挨拶がてら寄ったまでだ…」


 とサラは抱きしめていた手と腕を

 離して


「では、またな…。帰りに寄る」


 と言った後に、金髪の女性の

 肩をポンと軽く叩いて部屋を出た



 ・・・


 クロの部屋は扉が完全に開いていて、

 クロは掃除をしているようだった


 サラは「よっ…。クロ、おはよう」

 と顔を出して伝えると、


 クロは「あっ…。ごめん。ちょっと

 待ってて」と言って窓を拭いてから

 サラのいる扉まで歩いて、

「ちょっとどいて」と伝え、扉を、

 拭き始めた


「へぇ~。そこまでやるのか…」

 とサラが感心していると


「いいや。僕よりもディルベットの方が

 ちゃんとしているよ…。僕は適当」


 と返答して「よし…終わり」と

 水の入った桶に布巾を入れて…

 今日の掃除を終えた


 ・・・


「なぁ…クロ」



「なに?」


 サラは寝台にて横になりながら

 椅子に座って日記を綴っている

 艶のある黒色長髪のクロを視界

 に捉えながら、

 

 わかりやすい大きな欠伸をして…

「眠い…」とまんま眠そうに言った



 クロはくすりと笑い、半身後ろを

 向く姿勢をとって、

「だったら、寝れば」と返す



「いや、眠いのはそうなんだけど、

 そうじゃないんだ…」



「だから、なに…?」



「う~ん…。あれ…何だっけ…

 セタの…。何だろ…さっきの

 幻のような、アレ…」



「"幻のようなアレ"…?って、何?」



「ふぁ~。まぁいいや…。寝よ寝よ…」



「ふふっ…。今はそうした方がいいよ…

 僕は、もう少ししてから

 休む、寝るよ…」



「ふぁい…おやふみぃ~」



「はいどーぞ」


 クロは再度くすりと笑ってから


(神官の衣を脱いだ…


 いつもと変わりない、

 "僕の大きいネムコ"か…)


 と心中呟いた

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