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第27話『宿に戻ると…ディルベットに』


『ディ…。ディ…。ディル…

 ベット』


 男はためらいがちにセタの従者で

 ある元奴隷の今は名前付きの少女…


 "ディルベット"に声を掛けた  


「なんでしょうか?…」



『なんでしょうか?…じゃないよ…

 その話し方…。俺の前では

 止めてくれ…気持ち悪いぞ』



「なっ…。あたくしは、セタ様に

 気品ある名前を頂いたディル

 ベットです。そんな野蛮な

 話し方はしませんの…


 よろしくて?」



『はぁ…。まあ、どうでもいい』


(…しっかし、何度呼んでも慣れ

 ない"品のある"名前だ…。


 名前が"良過ぎて"違和感が半端

 ない…)


 と男が心中で愚痴をこぼしていると


「…で、用件はなんですこと?」



『ああ、そうだ。我らの主、

 セタ様が呼んでいる…』



「もぉ~。それを"早く"

 いいなさいよっ!」


 と少女は"素"の自分を晒し出して怒り、

 地下の部屋から、セタの部屋の

 ある階まで階段を早足で上がって

 いった



 ★



「あっ…セタ様!」


 セタが階段から下りてくるのが

 みえた


『おっ…。ディルベット…

 ちょっと一緒に来てくれ』



「遅くなったから呼びに来て

 くれたのですか?すみません」



『な~に。実は"外に"用があってな…

 ノーラとイーシャはクロとサラの

 ところでお留守番だ…』



「はい…」


 と少女は…ディルベットは、そう言って

 から、ちょっと不思議な感覚を覚えた


 まだノーラが、ネムコがいなかった

 頃の自分とセタとの閉じられたような

 空間での…寂しいような…でも、

 暗い中にぽつんと淡い灯りがついている

 ような懐かしい感覚を…


「セタ様…。ノーラはついてこない

 のですね?」



 セタはその意味がよくわからず、

『ううん?…』と言ってから『ああ…

 そのつもりだ。ディルベットと二人で

 向かう予定だ』



 少女は「そうですか…。わかりました」

 とだけ返した。"二人きりで嬉しい"等と

 は言えなかった



 ・・・



 どこに行くのですか?…という

 声掛けは何故か忘れていた


 ただセタと二人で並んで歩いている

 ことが幸せに感じられて…

 ただ純粋に気持ちが良かった


(いい天気に…セタ様と二人きり)


 ひたすらに心が満たされているのを

 感じていた


「あたし…。少しだけ後ろを歩いた方が

 いいですか?」



『うん…?それは必要ない…。もっと

 くっついてもいいぞ』



「……はい」


 少女はセタに寄って歩く…


『もっと近くでいいぞ…』とセタは

 少女のディルベットの肩に触れて

 引き寄せた


 少女は(だめだ…)と思いながら

 勝手に声が漏れてしまう


「………セタ様。あたし…」



『何だ…?たまにはいいだろう?』



「はい…。でも」



『でも?…』



「あの…。(大好きです…)」



『うん?』



「…何でも無いです。すみません

 ちょっと色々と思い出して、泣いて

 しまいそうになって…」



『………そうか』


 と言ってからセタは少女の頭を

 さり気なく撫でて、


『今日はいい天気だから、

 散歩するにはちょうどいいな…』



「はい…。そうですね。セタ様と二人

 …。こんなに天気がいいと、幸せを

 感じます」



『そうか…。それはよかった。では、

 ちょっと遠回りして帰ろうか?


 特にこれといって用はないんだ…

 ディルベットと外に出て歩きたかった

 

 それだけだ…』



「………はい。ありがとうございます」


 

 少女はセタのことが、

 もっと好きになった



 いつもいつも…毎日

 

 セタが部屋にいるときはノーラが居て

 つい最近まではファルが居て、セタの隣り

 にぴったりとくっついて歩いていた


 もう嫉妬を覚えるような立場ではない…

 だけど…。以前の幼稚な自分が…


 セタに目一杯に甘えたい衝動が…二人きり

 だとまた芽生えてしまいそうな気がして

 それを押し殺すのに苦労しながら…

 涙を流してしまいそうな自分を抑えながら

 限られたセタとの二人きりの時間の中…

 ゆっくりと歩いた

 


 ・・・


 宿に戻ると、少女はセタの従者の顔…

 "ディルベット"に戻る


 名無しの男は、本人としては無自覚の

 兄の立場から、その様子を見守り、

 また複雑な感情を抱きながら…その成長を

 "緩やかであるように…"と切に願った

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