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第26話『いつものこと』


『ファル?』



「そう、ファルのこと』



『…何だ?特に問題は無いと

 思うが』



「そろそろ、年が明けるでしょ?」



『ああ、それは、時が何かの間違いが

 あって止まったりしなければ…。

 明けるんだろう…』



「…なにそれ?」



『うん…。ああ、以前精霊にこちらの

 時を止めてもらって別世界に行った、

 "良い夢"を病状でみたからな…』



「へぇ~。何かすごい夢をみたね

 今度詳しく教えてね」



『ああ…。いや、だが、その内容は、

 その夢の中の人間の許可を得てから

 にしないと話すのはダメかも知れない』



「………まあ、いいや。で、話を

 戻すけど、ファルのことであり、

 少なからず僕のことでもあるけど…。


 年が明ける直前に、サラが故郷の

 南メイガンに戻る。僕は元奴隷の

 立場もあるし、サラに言われて

 ネムコの面倒をみているから

 ついていかないけれど…」



『何だ…。本当はクロも一緒に

 来たいのか?』



「来ればいい…。とセタならいいそう

 だけど、サラのことを少しは考えて

 上げてね…。


 サラはセタと"二人きり"で、故郷に

 戻って懐かしい思い出を振り返ろう

 としているんだから…


 僕のサラを、がっかりさせないでね」



『………わかった。二人きりで

 私はメイガンに向かう』




「うん…。それはそれでいい…

 でね、ファルはどうするの?


 というお話し…。ちゃんと

 伝えているのかな?」



『……………すまない。まだ

 私からは、言ってない…』



「だろうね…。サラも、僕も、

 他の人も誰も何も言っていないから

 ファルは、そのことを知らないと

 思うよ…。モテる人は大変だね…」



『………うん?それは、クロらしく

 ないちょっと意地悪な言い方だな』



「そうかな…?僕だって意地悪なところ

 があるし、嫉妬深いんだよ…


 僕を置いて、僕の大好きなサラを

 独り占めするなんて、セタは贅沢だよ」



『…………それは、すまない

 何というか…。まあ、流れの中での

 約束であって、行為であって…

 仕方のないことだから、その…

 仕方がないだろう』



「……まあいいさ。で、セタは、

 

 ファルが好きなの?

 

 サラが好きなの?


 それとも…そこで寛いでいる、

 ネムコのノーラが好きなの?


 …はっきりしてよ」



『……それは、全部大切で、大好きだ…

 だが、一番好きなのは、ノーラだ…

 間違いない』



「…………ふぅん。そっか。ノーラなら

 仕方ないな…。まあ、ファルのことは

 自分で何とかするんだね。僕は知らない

 から………。


 と、言いたいところだけど、僕に何か

 出来ることがあれば言ってね…

 

 包容力のない僕が、慰めることが出来る

 とは到底思えないけど、

 ちょっとはファルの役に立ちたいな…と

 思ってるから


 それに…。もちろん、"セタの役"にも

 立ちたいよ…。僕とサラのことを救って

 くれたのは、セタだからね…」



『……わかった。ありがとう。まあでも、

 何とかなるよ…。ファルだって子供じゃ

 ない。意地が悪いところもあって、

 嫉妬深いけれど、全部含めて私にとって

 は決して憎めない愛くるしいやつ。


 …わかってくれるさ』



「だといいけどね…」



 ★



 翌日の昼過ぎ…。寝台端にて密着し

 並んで座っているセタとファル



「ねぇ…セタ」



『何だ?』



「あの時の私の心境を、言い訳の

 ように聞こえるかも知れないけれど…

 教えておくね」



『あの時とは?』



「変に拗ねて素直じゃなかった

 こと…」



『別にそれはもう終わったこと…

 いいんじゃないか?』



「ううん。よくない…というか、

 聞いて欲しいの、セタに…」



『………』



「とある海辺でね。砂浜を歩いていたら

 少女に会ったの…。とてもお母さん

 思いのお母さん好き。無垢な声で、

 何度も聞いたの


 "お母さんが大好き"って…」



『………』



「…だから、それに影響を受けて

 ちょっと少女の頃の自分に戻って

 みただけ…


 素直でありながら、素直じゃない、

 純粋な少女の気持ちが乗り移って

 しまったの…


 わかるかな?」



『……うん。よくわかる』



「……セタのことを信頼しているから、

 してしまったの」



『………そうか』



「何か私に話があるのでしょう?…

 今日のセタは何か変……

 私にはわかる。でもこんなにわかり

 やすい感じなら、私じゃなくても

 わかるかも」



『………先に謝っておく。

 すまない…。ファル』



「何を?…怒らないから、教えて」



『サラと二人…。


 年末に故郷の南メイガン街に帰る

 ことになっている。一晩だけだ』



「………そう。二人きりで、というわけ

 ね?…それで私が怒る理由がどこにある

 の?…それとセタが謝る理由なんて無い」



『……そうなのか?』



「そうよ。全然怒ってない。先着順だから、

 …今回はサラの勝ち。悔しいけれど譲って

 あげる」



『…………』



「まあ、セタとの関係で、文句があるなら

 私はサラに直接すべてをぶつけるから、


 安心して…」



『………サラは、別に悪くない』



「知ってる。悪くないの…。サラと私は

 お互いに取り決めをしているの…」



『取り決め?』



「"内緒"と、言いたいところだけど…

 教えてあげる…。その前に、今して…」



『…………先に教えてくれないのか?』


 ファルはそんなセタを無視して

 セタの頬に口吻をした


 少し驚いた反応のセタに

 ファルは、

「逃さない…」と言って、追撃の口吻を

 セタの口にした


『んん…』とセタの甘い声が漏れる


 ファルはその声に満足したようで

 唇を離すと、

「ふふっ…。これが答え…。素直に

 想いをぶつけましょう!…

 大好きなセタに……。


 そういう"戦い"の取り決め」



『……………なるほど。わかった』


 とセタは一息ついてから、

『ありがとう。では、サラと

 行ってくるよ…。この埋め合わせ

 は必ずするから、待っててくれ』



「いいえ。埋め合わせは不要…

 悔しいから年末前には旅に出ます」



『………そうか。残念だ…』



「また戻ってくるから、安心して…


 そしてまた戻ってきたらいつもの

 ようにこうして口吻をして、

 誰よりも、優しく抱きしめてね』



『………ああ、誰よりも優しく

 抱きしめることは約束しよう』



「ふふっ…。やった♪…

 サラに勝てた…。では早速

 実践して…」



『わかった。だが一つだけお願いが

 ある…。ノーラだけは、別にして

 欲しい』



「……………まあ、それは寛大な

 心で、許しましょう。私には

 永遠に勝てない相手なら

 どうしようもないからね…


 でもノーラは人では無いから、

 セタとの濃厚な口吻と抱擁は

 どうやっても真似出来ないで

 しょう?


 …だから、許して上げる」



『………それもそうだな。残念だが

 それは出来ないな…』



「………半分冗談よ。ノーラのことが

 一番好きなのは前々からわかっている

 から、もう諦めている」



『………』



「暗いまま、別れるのは嫌…

 ねぇセタ。今夜はここで寝ても

 いい?』



『ああ、構わない』



「やった♪…いろんなところ

 触っちゃおう…」



『…ふふ。何をしてもいいぞ』



「あ…。そんなことを言って…

 どうなっても、知らないよ…」



『ファルなら、平気だ…』



「ふん…。じゃあ、今夜は

 寝かせない。百回くらいする」



『…どうぞ、ファルなら……』


 とセタが言い掛けた瞬間に

 ファルはセタの胸に埋もれる

 ようにして顔を擦りつけ、

 セタの着ている衣服のローブを

 ギュッとつかむと


「………悔しいから、胸が苦しい

 から、もっと優しくして…

 もっと抱きしめて…。もっと

 好きだと言って…お願い…」


 と言った


 セタは『…わかった。ファル…

 好きだ…。大好きだ…』と言って

 誰よりも優しくファルの小さな体躯を

 抱きしめ…。黒い髪を撫でた



 ・・・


 翌朝…


 気づくとファルは居なくなっていた

 男に尋ねると、夜明け前に出ていった

 らしい


 そしてその日。セタの元に儀式の為に

 やってきたサラは、自分のほっぺたを

 さすり、気にしながら、


「ファルは早くに旅に出たようだな……


 どこまでもせっかちで、身勝手で

 変なやつだ…


 偶然と嘘をついてたが、

 待ち伏せされたよ」



『…そうか。相変わらず、ふらっと

 何も言わずに出て行ってしまった』


 サラはセタの何とも言えない表情を

 みながら、

 

「色々と昨晩のお前との熱い触れ合いの

 自慢をしておいて、別れ際には


 この愛のある置き土産だ…」


 と頬をペシペシと軽く叩いて 

 セタにみせた


「結構本気で痛かったぞ…

 お前への愛の深さを、力に変えている

 …。とても清々しい気分だ…」



『………何か、すまんな…』


 セタの少し困惑気味の、若干しょげた

 ような言動にサラは、


「まっ…。でも、こいつは、私達の

 問題で、いつものことだ…

 

 憎たらしいくらい、愛らしくて

 元気だった…。気が向いたら、

 ひょっこりちゃっかりお前のもとに

 戻ってくるさ…」


 と笑みを浮かべながらセタに伝えた

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