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第24話『従者の名前』


 セタの従者である少女は

 主であるセタの為に、規則正しく

 今日も一生懸命に尽くす


 セタの肌を拭い、髪をとかし、

 掃除洗濯をして、お茶と食事を運ぶ


 冬になっても、日に照らされた

 汗が光るのは、すべてセタの為だ


 そんな健気な様子をみて、シャーマンの

 幽霊はセタに言った


(そういえば…。あの子の名前は

 まだ決めていないのですか?)


『んん…?』とセタは今日もノーラと

 イーシャと触れ合いながら、


『それはまだ…。考えていない』と

 返した



(まあ、別によいですけど…

 早くしないと"お兄さん"から催促が

 来てしまいますよ?)


 お兄さんとは坊主頭で長身のセタの

 半従者的存在の男だ


『それはない…。説明はしてある

 …。何だか、名前を付けてしまうとな』


 とイーシャを抱えあげて、互いに

 じっと見つめ合い…



『こいつ、イーシャのように、変なこと

 に巻き込まれてしまいそうでな…』



("変なこと"とは?)


 幽霊の反応にセタは『うん?…』と

 一寸考えてから、


『……みてのとおりだろ?』



(…そうですか?)



『そうだろう?…"人がネムコに"なって

 しまったんだ…。


 これは変なことだろう?』



(ただそれは、望んだ結果です。

 純粋な気持ちが生んだ"奇跡"

 素晴らしいことだと思います


 決して"変なこと"では無いです)



『…………………』



("すれ違い"ですかね?)



『…さあな、…わからん』



(また、怒ってますか?)



『………………別に』



(では、名前を付けて上げて下さい。


 あの子はネムコ好きでは無い。ただの

 セタ好きですから、問題ありませんよ)



『…………うん。ま、それもそうだよな』



(では、"今"決めましょう…

 パトリノクスとか、テトポリンクスとか

 はどうでしょう?)



『…………何だそれは?…

 精霊の名前か?』



(いいえ、適当です…

 昔の地名ですよ)



『…………そうか。まあ、ちょっと呼びに

 くいけれど、参考にするよ…』



(では、アプリコ・クコンも

 おさまりが良いかと思います)



『………うん。わかった、もういいぞ…

 よくわかったから…』



(……はい。では止めますね)



『………ふむ。では………………

 …………………』


 とセタは考えてみたものの、何も

 浮かばない…。何も特徴が無いから…

 というのが主な理由だ



(どうです…。決まりました?)



『……いいや。また今度にする…

 もうちょっとよく"観察"しないと

 駄目だ。見ているようで私は、

 見ていないのかもしれない…』



(はあ…。そうですか…)



 気づくとノーラもイーシャにまざって

 セタの膝上、腕の中に入り、愛情を欲する

 為にゴロゴロと喉を鳴らし、セタと視線が

 合うなり「あっ…」と乾いた声で控えめ

 に鳴いていた



 ★



 男は今日も砂箱に入った糞を取り除き

 その色と形をみて、


「う~ん。今日もだいたい一緒だな

 問題なさそうだ…」


 と呟いた


 現在砂箱は二つある。ノーラとイーシャの

 を分けている。二つ分の手間にはあるが、

 男は楽しげに分別をして、砂を取り替える


 専用の蓋付きの桶の中に糞尿に塗れた砂を

 集めておき、溜まってきたら村の外に捨て

 にいく


(セタ様に名付けられた奴隷

 "イーシャ"…

 

 もしかしたら、あの聴唖の娘がネムコの

 姿になってしまったのかな?)


 と桶を抱えて思いながらも、


(そんなことはない…。ありえない…

 似ても似つかない…"今回も"同じだ…

 ただ、この村を出ていっただけだ…)


 男は奴隷であった、こちらもセタに

 名付けられたノーラ少年のことを

 思い出していた


 セタは今回も、ノーラのときと同様に、

 少女は、イーシャは、ネムコを残して、

 遠い旅に出たと男に説明をした


 セタとしては変な噂が立つのが嫌だった

 というわけではなく、単純にそう説明

 したかっただけだ…


 いつか戻ってくるような気が

 無意識化…。拠り所となる心の

 "どこか"でしていた…


 ノーラも、イーシャも…


 人の姿になって、自分の元に戻ってくる

 セタはそう信じていた。そしてイーシャの

 完全なる変身まで過程から、それは可能性

 のある"期待"へと変わった



 男はその後、イーシャのことを思いながら、

 ついで、セタの従者である少女のこと…


 そしてまた幼くして死んだ妹のことを

 思い出しそうになり…


 それを振り払うように桶を逆さに持ち

 廃棄場にて糞尿を纏った砂を振って捨てた



 ・・・



 男が庭に戻ると、木と青銅で出来たベンチ

 椅子にて、セタとファルが日を浴びながら、

 くっついて並んで座っていた


 セタの視線の先には従者の少女が

 せっせと洗濯物を干している姿があった


 男は邪魔しては悪いと思い、桶をこっそり

 と置いて、黙って宿の中に入ろうとしたが


 セタが男に気づいて手を上げた

 男はさり気ないお辞儀をして中に入った


(あれ…。ノーラとイーシャは?)と

 男は宿に入るなり思い、セタの部屋の

 階まで上がっていった


 砂箱は先に砂を取り替えて部屋に

 戻してある…


 階段を上がってセタの部屋の前についた

 念の為ドアの面を小突いてみると

 中から『はーい。どーぞ』と声が聞こえた


(ああ…。ネムコの面倒を見ているのは

 "クロさん"か…)

 

 と納得してドアをゆっくりと

 半分だけ開けて


「すみません。庭にセタ様がいたので

 ネムコ達の確認です…」と理由を伝えた


 クロは『そうなんだ。うん。わかった

 ところで、ねえ…。触っていく?


 お日様に当たるとフサフサになるんだよ

 …。もうたまらない感触…最高!」と、

 男をモフりの花園へ誘ったが、


「いえ…。どうぞごゆっくり。たまには

 独り占めしてください…。玄関の見張り

 がありますから」と男は伝えて

 

 クロの『わかった!また後でね』

 との言を聞いて、ドアを閉めた



 ・・・


 男が階段を下りていくと…

 少女が階段を上がって来た


 少女は男に気づいて踊り場

 にて立ち止まった


 何となく自信に溢れた表情を

 している少女に、


「何だよ…?何か用か…?」

 と男が声を掛け、


 少女は一呼吸置いてから

 ちょっと上品に、


『ディルベット…』と

 聞いたことのない単語を発した


 男は「はぁ?…」と眉をひそめながら

 発して、しばし考えてから、


「ああ…。もしかして名前か?」


 と聞いた


 少女は


『そう。あたしはセタ様の従者、

 日の当たる場所で輝く、

 ディルベットです』


 と答えて、少し恥ずかしそうに

 微笑んだ

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