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第23話『臆病者の口吻』


 翌朝…


 サラはセタの部屋のドアを軽く

 小突いた


 最近のサラは朝食は神官宿舎にて

 摂るようにしている


 はじめは、クロとの時間を増やそう

 と思い、宿にて朝食を摂っていたが…

 自分なりに、"立場"というものを

 意識するようになって止めた


 クロは寂しさを感じながらも

 サラのひとつの変化、成長過程と

 捉えて了承をした


 

 ・・・


 ドアを開けるなり、セタはサラに

 気まずそうに言った


『すまん…。今日は…その

 口吻をする気分になれない…』


 サラは、


「どうした?そのわかりやすい表情と

 取って付けたような言い方は?


 私にお前の都合を"色々と"察しろ…

 ということか?」


 と言って、微笑んだ



『いいや…。そういうわけじゃない

 …。ただ、私なりのケジメという

 か…。接し方を変えたほうが

 いいというか…。難しいのだが

 な…。…うまく伝えられない


 …許してくれ』



「…わかった。ところで、臆病者の

 ファルはここにいるのか?

 "この部屋"に隠れているわけでは

 ないよな?」



『いいや…。"隣の部屋"にいる…

 ちょっと嫌われてしまってな…


 口を聞いてくれなくなった…

 触れてもすぐに離してしまう


 何だかな……』



「…ふん。そうか…。アイツは

 一般的には頭が良くて、

 意地が悪いからな…


 まあ、仕方のないことだ

 気にしないでいい…」



『うん…?…そうか…?サラが

 気にしないでいいと言っても

 私は、非常に落ち込んでいる』



「………まあ、事情はよくわかった


 じゃあ、今日は口吻をしないで

 終わり!…ということでいいか?」



『…ああ。だが私が言っているのは、

 "今日だけ"じゃなくて…

 "これからも"なんだが……』



「……すまない。それは"無理"だぞ

 不可能だ…」



『…なんでだ?』



「…何故って、私が"する"からだ…」



『それはつまり、無理やりか?』



「う~ん…。それは"大分"違うな…


 無理やりとか強引に…とかは、

 相手が嫌がっている場合を指す


 …わかるだろ?」


 セタはサラの言葉の意味を考えて


『…………わかった。私は別に、

 嫌がってはいない…。うん…』



「だろ…?素直でいいんだよ…

 私も、お前も…


 そして、隣りにいるよくわからない

 えらく面倒な言動をしているファルも…


 おっと…。"いつもの"が…」


 セタの足元に、ノーラとイーシャが

 やってきて、スリスリと顔を擦りつけ

 て回った。いつもの挨拶であり儀式だ



「ほらっ…。この"ネムコ様"達をみて

 みろ。素直で健気で愛くるしい…」


 サラは軽く屈んで、ノーラとイーシャ

 の額をいつも通りに撫でる


 セタはその姿をみて、

『…そうだよな。素直でみていて

 気持ちがいいよな…』と呟き



(…今日も、してくれ)と小さな甘い

 声でサラに伝えた


 その声を聞いて、サラは姿勢を戻し、

 セタの目をみつめ、わかった…

 等とは言わずに、ただ黙ってセタの

 肩に触れて引き寄せつつ、身を寄せて

 静かな口吻をして、そのまま優しく

 抱きしめた


「…寂しかったか?」



『…うん。寂しかった』



「今日はいつも以上に、"長め"に

 しよう…。私の…甘え上手の可愛い

 セタの気持ちが、落ち着くまでだ」



『…うん。ありがと』



「このままいったら、お前が

 女性らしくなりすぎて、婚期が早まる」



『……そうかな?』



「そうだ…。私以外の特に異性に対しては、

 へんてこな奴か、嫌味な奴か、蛮族さな

 がらの勇ましい輩の感じでいてくれ…」



『……ん。冗談か?』



「本気だ…」



『…わかった。考えておく』



「………大好きだ」



『…うん。わかってる。私も

 同じだ』




 ★




『で…?アナタは、その口で、わざわざ

 私にそんなことを伝えに来たわけ?』


 とファルはサラに言った



「ああ、そうだ…。何度も言うが

 私はセタと口吻をしている


 これからもする…。お前にとやかく

 言う権利はない。もうセタを許して

 やれ…。


 というか…セタは何も悪くない…

 私がセタに助けられた流れで、

 決まった神聖な儀式だ


 だから悪いのは私だ…

 セタに罪は無い


 セタとお前のやり取りで言えば、

 殆ど全て、"ファル"が悪い

 間違いない…

 

 諸悪の根源はお前だ!」


 ファルは"むぅ…"と眉間にシワを寄せ


『だから…何?…私はセタにサラと

 していることを止めろとは、言って

 いない…。


 セタが、勝手に変な配慮だか、遠慮

 だかを、しているだけでしょう?』



「じゃあ、どうするんだよ?

 お前は、ファルはどうしたいんだよ?

 "私の"大切なセタが困っているぞ…

 ちょっとは本気で考えろ!」


 ファルはサラの言いぶりに拳を握りしめ


『たくっ!!さっきから何なの?

 堂々と…。


 そんなにアナタとセタの関係が

 親密であるとか、私よりも濃くて

 密度が違うとか、愛の深さがどうとか、


 そんなことを、これ見よがしに

 自慢したいわけ?』


 サラは「うぅ~ん」と面倒半分、

 困ったような顔をして


「…ああっ?何を言っているんだ?

 事実としてそうだろう


 お前とは、過ごしてきた時間と長さ

 が違うから、密度も濃度も親密度も

 何もかも違う、というのは…それは、

 そうだろう


 ムキになるなよ。受け入れろ、

 意地っ張りの大馬鹿者」



『うぅ…。なにそれ?…その台詞?

 この村の神官なんでしょう?


 神官がどれだけ偉いか知らない

 けれど…。この部外者の私に対しては

 偉そうにしないで!


 私とセタのことは放っておいて!』


 サラは「あ゛あ゛~」と濁点付きの

 声と疲労感たっぷりの大きな溜息を

 ついて


「…じゃあ、お前は。さっさと"ケリ"を

 つけろ…。グダグダウダウダしていると…

 私の可愛いセタが、このままじゃ、

 輝きを失って可愛くなくなる……

 かもしれない


 まあ、どんなときでも、セタは

 "可愛い"けどな…


 ファルはそう思わないか?」



『私は。………………悲しいけれど、

 私には、永遠に、本当の…


 セタの姿形は、わからない…』



「……あっ。すまない…

 でも、すごく可愛いんだ…


 見えなくても、感じ取れるだろう?

 出会っていちゃいちゃしていた頃は

 可愛いから、そんなセタが大好きだから

 一緒にいて、くっついて…


 私に"見せつけるように"していたん

 だろう?」



『……………そうね。あの時は、

 ごめんね。

 

 サラのことは特に考えていなかった

 よく知らなかったし…。まったく

 興味なかったし…。すごく意地悪で

 嫌いだったし…


 最初はどうでもいい存在だったから…』



 サラは「ふっ…。はははは!」とふきだし

 笑い出した



『何よ…。素直に謝っているのに…

 笑うなんてヒドイ人』



「………すまない!何だかあの時のことを

 思い出して…。今のお前が滑稽で……


 何だか無性に可笑しくなって

 しまって…。つい…。悪気は無い…

 

 いや、すまん。悪気は"ある"な…」



『その想像するに腹立たしいであろう

 お顔…。一発殴ってもいい?』



「…ああ、いいぞ。殴られるのは

 久しぶりだ…。おもいっきり

 やってくれ!」



『…………じゃあ、近づいて』



「……わかった」


 ファルは屈んだ状態のサラの顔に

 触れる



『いくよ…』



「ふふ…。早くしろ!…」



『…………ぎゅっ』



「むぅっ…」



 サラのほっぺたをつねるファル


『…殴っても笑って、その馬鹿顔が

 更に喜びそうだから…


 "これで"許して上げる』



 ファルにやんわりとつねられた状態の

 サラは、そのまま笑みを浮かべながら


セタ(ふぇた)こんな具合(ほんなふはい)

 に(ふふ)して()れ…。


 そして(ほひて)口吻(ふひふへ)をした

 かったら、お前から(ふば)ってやれ……。


 (わはひ)()めたとしても

 振り切る覚悟(はふほ)()てよ…」


 ファルはサラの頬をつまむ手を

 緩めて離し


『ちゃんと喋れているはずなのに、

 わざとぼかさないでいい…』と言った



「…意外と話せないんだって…」とサラは

 言いながら、自分の頬をなでなでする



『……相変わらず、馬鹿ね

 

 ここに戻って少しは成長したのかな…?


 何だか凛々しい風を纏っているなぁ…


 というのは私の思い過ごし…

 勘違いしていた。安心した…』 



「…ふふ。そうだな…。セタとの関係で

 いえば、子供の頃から進歩はまるでない…

 嫉妬深くて、未熟なままだ…


 まあ、それはそれとして、今回は

 ファルの方が"馬鹿"だけどな」



『………う~ん。そうね。本来であれば

 私には永久に勝てない領域にいるとん

 でもない馬鹿なサラの言うとおりね…


 悔しいけれど、今回は、認めるわ』



「はははっ…。そうか。じゃあ、

 今回の大馬鹿者は、セタのことを

 どう思っているんだ?

 どうしたいんだ?」



『…ふん。教えない。私達の関係に

 どうのこうの言ったり詮索する

 権利は、サラにはありません


 どうしようと勝手…。


 お互い様でしょ?』



「…うん。まっ…。そうだな…


 お前の言うとおり、勝手にしてくれ…


 私も勝手にするから、お互い様だ」



『……そうね』



「そうだ…」



 ・・・


 ファルは決めた…。この会話のあと、

 サラが居なくなってから…

 ファルはセタの部屋に向かい


 "こちらから"胸に飛び込み、手繰り

 寄せるようにセタの頬をおさえ口吻を

 して「大好き!」と言ってから、

「ごめんね…素直じゃなくて」と謝った


 セタは『いいんだ…』とだけ言って

 優しく受け止めてくれた


「ねえ、セタ…

 これからも私のことを、よろしくね…」


 ファルの言葉にセタは『うん…』頷いて

 今度はセタの側から口吻をした

 

 ファルは泣きそうになる自分を抑え

 ながら再度「大好き…」と伝えた

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