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第12話『それぞれの"心境"』

 セタがノーラと一緒に宿の階段を

 下りていくと、少しくたびれた

 様子のサラが階下からゆっくりと

 歩いてくる


 そして二人は距離を縮め目が合った


「………」


『………』


 その間、ノーラは軽快な足取り

 でサラのいる段差まで下りて

 サラの足に顔をこすりつけていた


 サラはそんなノーラをひょいと

 抱え上げると、お返しとばかり

 に頬をノーラの顔にこすりつけた


『…クロのところか?』

 とセタが伝えると


「いいや…。セタ、お前だ…」

 とサラが返した


『疲れているだろう?』



「………少しな」



『朝食は食べたのか?…

 今朝は来ないから心配

 したぞ』



「すまん。ちょっと話が

 あってな…。来れなかった」



 サラは毎日、神官として夜明け前

 には起きて、祭祀場にて祈祷をし

 ている


 そしてその後は通常であれば宿に

 いるセタやクロと一緒に朝食を摂る

 ことが習慣となっていた


『クロのところで休んでからでいいぞ?

 私は逃げたりいなくなったり

 しないからな…。いつだって

 捕まえられる存在だ』


 サラはセタの言葉を聞いてから

「うん…」と言って、ノーラを

 段上に優しく置いてから

「少しだけだ…」とあえて気丈に振る舞う

 ような表情と声でセタに伝えた


 セタは『…そうか』と言ってから

 戻ってきたノーラをひょいと抱えて


『わかった…。戻ろうか?』と

 手元にいるノーラに伝えるようにして

 サラへの返答とした


 ・・・


 その頃、クロは部屋にてサラの事を

 待っていた


 廊下を通り過ぎる音が聞こえた

 先ほど出てきたセタと…もう一人は

 誰だろう?もしかして、サラかな?


 クロはドアを半分開けて廊下の様子

 をみてみた


 セタの部屋に入っていくセタとサラ

 がみえた…


 クロはサラが来たことに安堵しつつも

 …少し何だか嫌な感じ、不安な気持ち

 になり、そして言いようのない悔しさ

 がこの身に、感情の中に湧き出てきた


(サラ…)


(サラ…)


(サラ…)


 何度も"主"の名前を呼ぶ自分がいた

 前世の黒猫としての記憶が蘇る


 雨中に走り去っていった育ての親で

 ある少女と…ずっと鳴いていた、

 何も出来ない無力な自分…

 

 クロはドアの前で座り込み、

 気づくと大粒の涙がぼろぼろと出て

 …泣いていた


 ファルが隣りの部屋に入れば

 自分は駆け込んでいただろう…


 そして自分の弱さをさらけだして

 ファルの"答え"をもらう


 だがすでにファルは旅立っていた…


 居なくなる事でわかる重要さという

 ものをクロは身をもって大きく気づ

 かされていた



 ★



「こぉら、なぁーにしてるの???

 さっさと砂箱持っていきなさい

 よ!」


 宿の地下にある狭い廊下にてセタの

 従者である少女が、自室の小部屋の

 粗末な寝台端に座って休んでいた

 セタの半従者である坊主頭の男に伝える


『あ゛あ゛?…何だよ』



「ノーラが"ウンチ"できないじゃない」



『予備の小さいのがセタ様の部屋に

 あるから大丈夫だよ』



「むっ…。狭い所より広い所でウンチ

 したいでしょ?」



『そんなの…俺はどっちでもいいよ』



「いいわけないでしょ。いっぱい

 ウンチ出て、箱からはみ出たら

 セタ様の部屋がウンチで汚れちゃう

 でしょ?」



『お前がその汚れ具合を"喜んで"

 掃除するからいいだろ…』



「ああっ、もう!!!分からず屋!


 私はノーラの水とセタ様のお茶を

 持っていくから、一緒に来なさい」



『ちょい、待てよ!』


 ぷりぷりとしながら去ろうとする

 少女を男は呼び止めた


「なぁ~に?」と少女は再度小部屋

 に顔を覗かせる



『さっきな…。サラ様に会ったんだ』



「それで?」


 男は坊主頭を両手で触ってから、

 ふぅ~と息を吐いて首を鳴らし


『挨拶のあと、クロさんなら部屋に

 いると伝えた…が、セタ様の所在を聞いた』



「………」



『そして、だいぶ疲れているように見えた

 …。まあ、いつもの調子ならお邪魔して

 でも伺うけどな…


 そんなわけで、今日はサラ様が帰って

 からにするよ…。もしくはセタ様の部屋

 を出た後かな?』



「………」



『そーゆーわけだ…』



「………早く言ってよ」



『……そうだな。気づく人間もいれば

 気づかない人間もいるからな…』



「あたしだってサラ様に会っていたら

 気づいたもん…。多分…」



 男は少女の意地っ張りな言動に

 対して、こみ上げる笑いを抑えながら

『ふふ…。そうだな…。セタ様の

 従者だからな…。当然だ…』


 といった



「……意地悪。…うんち博士」



『はいはい。うんち博士でも、

 うんこ博士でも何でもいい…


 好きにしてくれ。


 お茶なら、クロさんにでも淹れて

 やれよ…。あっ、そうだ。


 砂箱"ついでに"俺が持っていくよ』



「………うん?…うん。わかった

 でも砂箱ごと持っていくの?」



『違うよ…。砂箱は持って行かない

 あくまでも"都合"の問題、

 そういう意味での"ついで"だ…』



「あっ…そう。…わかった"ついで"

 ということだね…。う~ん?…」


 少女のよく意味がわかっていない

 怪訝な返答と様子に男は、


(まだまだ、だな…)とひとりで納得

 …。妹の成長を楽しみにする兄の

 心境となっていた

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