第99話『ノーラと一緒に探す』
サラはクロに有無を言わせず、
風にように去っていった…
クロを迎えに来て、すぐに帰った
その事実だけが残った
彼女は暇無く、自分の職責の為に
帰った…というのではなく
階下の玄関の外でサラは待ち、
クロを抱きしめ、そのまま馬車で
帰った
究極。本能に理由などいらない
必要としているから、その行動を
しているだけだ
クロに別れは言っておいた
セタは、サラとクロの馬車が去り、
慌ただしい風と埃がおさまった後
今は何も無い路上の様子をぼんやりと
宿の部屋から見下ろしながら
『わかっていたことだ…』と…
セタに寄り添い、今丁度ぐりぐりと
背中に頭を擦り付けているファルに
いった
ファルは動きを止めると
「わかっていたのはいいけど…
もう少し時間は無かったのかしらね?
相変わらず、無神経で自分のことしか
考えてない人間ね…とは
思いたくない、そうではない…
"違う"と思いたいけど…少し、
少しね…(二人の関係が)理解出来ない」
セタは『ふぅん…』となんとも言えない
吐息をついて、少し間を置いてから
『そうかもな…でも、実際のところ
そうでもないのかな?…これは?
私にもわからない………でも…。
きっとこれでいいんだと、思う』
「まあね…わたしに、二人の複雑な
"それ"を完全に知るのは、強がる
自分でいるには、必要も無いし、
関係がないから別にいいけど…
もうちょっと話したかった…
久しぶりにアイツ(サラ)と……
そうね…何を話せばいいのだろうね…
セタの言う通りかもね…
どうしていいかわからないものには、
結局、何も変わらないし、何も得る
ものは無いのかもね…
これは優しさでは無いけど…
今の二人が幸せに生きるのには、
適切な表現、言葉だと思うわ」
『…………なあ、ファル』
「なぁに?…もしかして、寂しいの?
甘えたいの?…とその複雑な
思考を読んでみる…違う?」
『いや………うん。なんでもない』
といいながら、セタはファルの手を
後ろ手で握った
「……わかってる。あなたは生きてるし
聞こえてるもの…いつだって」
ファルはそう言ってから、
その手を握り、セタの背中に
その顔を埋めた
(狂おしく、誰よりも、愛してるわ…
"セタ"
"わたしの気持ちは"、ずっと一緒よ…)
◆
クロが来て、セタは真実を…
"気づき"を"与えられた"と思った
(ネムコに想いを伝えてみれば…か…)
セタはノーラの名前を呼んだあと、
『夜に光り輝くとき…
おまえに私のことを…』
と両手に抱えている
小さな獣の瞳をみて呟いた
『知っているだろう?…それは…
ずっと一緒にいるのだから…』
ノーラは欠伸をした
『ふふ…。そんなところが可愛いんだよ』
とノーラを抱きしめてから、床に置くと…
部屋の扉が僅かに開いているのに気付いた
閉めるのを忘れていた…
イーシャがいないのに気づくと
セタは部屋から顔を出して廊下をみる
(誰もいない?……か?
にしても…月がすごいな…
今夜はこの方角なのか?…それとも今は
ここなのか?)
月明かりが廊下の窓から床を照らしていた
セタが確認をしていると、するすると
ノーラがセタの足元に身を擦り
付けながら、廊下に出てしまった
(ノーラと一緒に探すか…)
とセタはふと何気なく思ってから、
(ノーラと一緒に探していたモノは、
お前ではない"ネムコ"だけどな…)
と過去を振り返り、後悔を含め、
考えると…。少し泣いてしまった




