★人物紹介・用語説明
★登場人物
セタ・ブルウノス:ブルウノス村の長の一人娘。子供の頃から異世界の猫であるネムコを追い求めていた。成人し、奴隷少年であったノーラと出会い、共にネムコの調査探求をする。その後、ノーラが失踪。自身の研究場である村外れにある人工楽園にて、ネムコに変身していたノーラを発見。軟禁場であった村の宿にて一緒に暮らしている。幼い頃に母を病気で失っており、同様の過去を持つ、村の神官サラとは幼馴染であり親友である。艶のある金髪で、すらっとした体型の青い瞳の美人顔。女性らしさが無いことは自覚している。ぶっきらぼうで面倒くさがり屋。自称賢者であり自惚れている感もある。その一方でさり気ない"無自覚の優しさ"を持ったイイ男の側面がある。そのため、男性以上に女性にモテるが、本人は"ノーラ"が世界の誰よりも何よりも大好きであり、その純粋な想いに曇りは一切ない。村の住人からは接しやすい気軽さと飾らない性格故に奴隷からも慕われていて、嫌う人間は皆無。言いようのない不思議で自然体の魅力及びカリスマ性がある。
ノーラ:異世界に転生してきた猫好きの青年。奴隷少年として転生した後、セタと出会い、前の世界での心残りであった"猫を飼う"ことを目指し、セタの協力の元、異世界の猫であるネムコの調査探求をする。その後、セタが試していた本棚の上のネムコを呼び寄せる"おまじない"によって、ネムコに変身してしまう。その後は大好きなセタと一緒に猫として暮らしている。"ノーラ"という名前はセタが名付けた。奴隷の状態であったが失踪後、セタにより買い取られ、現在は"元"奴隷少年の猫である。長毛、明るい灰色の毛を持つ。ふわもふ。
サラ・ライト・ミズ・ストーン:ブルウノス村の新しい神官。セタの幼馴染、親友。南メイガン街出身。神官の家の生まれであり、ライト・ミズ・ストーン家の四女。奴隷少年であったクロを買い取って従者としている。神官になることに葛藤があり、拳闘士に憧れて鍛錬をしたり、世捨て人や旅人となることを夢見たり、素行は成長するに従い徐々に良くなってきたが、喧嘩っ早く、南メイガンの赤い狂犬と呼ばれていた。自身の大切な存在、とりわけセタやクロに何かあれば、口よりも先に手が出る。怒りだすと止まらない。涙腺が弱く、感傷的になるとすぐに泣く。赤髪の短髪、女性では長身の方でかなり目立つ。子供の頃から鍛えていた為、ガッシリとした体躯。胸が大きい。幼い頃より一緒にいたセタに感化、影響されている部分があり、口調や話す言葉にセタらしさが滲む。セタに対しては少し歪んだ好意、愛情を抱いている。
クロ:元奴隷少年であり、神官のサラに買い取られ従者となる。ノーラと同じように別の世界から死んで異世界に転生をした。前の世界では黒猫であり、子供の頃から少女に育てられたが、少女とは別れることになり、その後野良猫となり死んでしまった。以前の世界と同様に、自分の黒い髪の毛を気に入っており、サラに撫でられるのが大好きである。転生後は平民の子として生まれたが、困窮した為に奴隷として売られてしまった。小説家になることが夢であり、従者となった後も物語を書き続けている。元奴隷の為、神官の宿舎への出入りは出来ない為、セタと同じ宿に泊まっている。長い艶のある黒髪。ひょろっとしていて、黒い瞳。おとなしい。
ファル:盲目の占い師、流浪の旅人。ブルウノスの村に流れ着き、セタとネムコと出会い、その後のやり取りからセタに好意を抱き、しばらく宿に泊まり、セタと新婚さながらの甘い生活を送るも、セタのネムコ愛、ノーラへの深い愛情を知り、失恋とばかりに旅に出る。その後、セタが病の為、床に臥せっているのを知り、村の元神官であったラナと一緒に村に戻った。小柄で黒髪。朱色の法衣を身に纏う。性格はせっかち、自覚症状あり。言動により、他人を思い通りに動かす、誘導することに長けている。セタやサラに対しては飾っていない素の自分をみせる。
ラナ・ライト・ミラー・ストーン:元神官。定年(60歳)により退官。南メイガン街出身。神官の家であるライト・ミラー・ストーン家の次女。村にある教会にて神官入れ替わりの儀を終え、サラが新しい神官となり、村を出立した後は、南メイガンの南方外れにある湖近くの養老院にて暮らしていた。その後、セタの容態を心配して、ファルと一緒に村に戻った。サラと同じように子供の頃から神官となることに葛藤があり、神官となった後も悩んでいた時期が多かった。元々は冗談好きのお茶目な性格であるが、神官としての立場を意識して、近親以外には素の自分をみせることは少なかった。老齢になるに従い、徐々に素の自分を見せることが多くなると、真面目一辺倒だった表情も自然と柔和になり、村の誰からも愛される存在となっていった。その為か、ラナにとって最後の神官としての駐在先となったブルウノス村が思い入れのある故郷となった。現当主のアル・ブルウノスとは同時期に村に入っている。
宿の少女:元奴隷。セタにより買い取られ脱・奴隷、セタの初めての従者となった。元々は孤児であり奴隷として拾われ、宿の主である姉妹に買い取られ、セタの世話や宿の雑用、街の汚物掃除をしていた。ノーラ少年を探し出す過程でセタの歓心を買い、淡い夢であった…念願のセタの従者となった。セタが病になってからは、セタの従者として成長することを意識するようになった。名無しの奴隷の為、セタに自分の名前を付けられることを待っている。茶色の髪。セタに対しては誰よりも独占欲が強いが、そんな自分を戒めようとしている。
宿の男:奴隷。孤児。窃盗をして生計をたてていたが、仲間に裏切られ捕まり、拷問と去勢後は奴隷として売り飛ばされ、宿の姉妹により買い取られた。幼い頃に病で妹を亡くしている。宿の少女のことは自分の亡くなった妹と重ね合わせて見てしまうことがある。ヒョロっとした長身。坊主頭。青白い肌。当初は無口従順の冷たい目をしていたが、セタ、宿の少女、ネムコ(ノーラ)とかかわるようになると表情や態度が穏やかになり、口数も増えていった。毎日ネムコの排泄用の砂の取り替えを楽しそうに行っている。元窃盗の為か、闇夜での行動と、周囲の気配を察することに長けている。普段は地下の奴隷の居住場の階段前の部屋に居て、奴隷や階上一階の玄関前の見張りをしている。ノーラ少年の探索時の行動から、セタの歓心を買い、奴隷ではあるが、セタの半従者的存在となっている。セタを誰よりも慕っている。奴隷の為名無し。
アル・ブルウノス:土豪ブルウノス家の現当主。村の長でありセタの父親。一人娘の行く末を心配しており、セタがネムコについて錬金まがいの怪しげな試みをしているのを目の当たりにし絶句。セタを一時家から追い出して村の宿に軟禁をした。青年時代に腹違いの弟と従者を数名を連れて村を出て、放浪の末、他国の傭兵として働いていた時期もあった。放浪が一段落し、南メイガン街来訪時にフレア商会系列の酒場の未亡人であった女主人と婚約をしたが、娘のセタを出産後に亡くしている。次期当主予定であった兄の急死により、娘のセタの護衛を弟に頼み、ブルウノス村に戻った。弟は現在南メイガン街の守護者用の居住区に駐在をしている。現神官のサラの子供時代、セタと仲の良かったサラに放浪時代の話しをして、サラの熱意ある要求に折れて話の中で出てきた拳闘士の技術をちょっとした遊び程度に教えた。その後ライト・ミズ・ストーン家の当主より、以前より娘の素行が改まったと感謝され、ミズ家との関係を持った。肌は日に焼けていて短髪の白髪。大柄、長身。筋骨隆々。セタの幼少期より離れて暮らして為か、娘であるセタに対して余所余所しさがあり、また親として少しの負い目がある。
シャーマンの幽霊:ネムコ好きのシャーマンの幽霊。精霊であったネムコ(ネ…コ)を大昔に飼っていた。セタの婚約者として保留中の身であった隣村の長の長男であるダリスと知り合い、ダリスに求婚された際の条件としてネムコを見たいと伝えたことから、セタやネムコと出会う。その後はダリスに別れを告げて、村に留まっている。背は高く、すらっとしていて、まつげが長く目がやや細く、鼻が高い。一般的には美人な方で、はだけた透明に近い水色の衣装から透き通るような白い肌と鎖骨がのぞく。基本は自由奔放がモットーの性格だが、セタに対しては従順な面をみせる。幽霊となった後も精霊を僅かに飼っていて、その能力を使うことが可能であったが、セタを異世界に転移させた為、精霊は疲れ果ててしまった上、機嫌を損ね、現在は使用することが不可となっている。
ダリス:隣村の長の長男。弟にドリスがいる。セタの婚約者となっていたが、保留となり、その後シャーマンの幽霊に一目惚れして、求婚。その条件にネムコをみせて欲しいと頼まれ、その願いを叶えたが、幽霊には願いが叶ったことにより別れを告げられ、傷心を抱えて自分の村に戻っていった。
ドリス:隣村の長の次男。兄にダリスがいる。セタに想いを寄せていて、宿を来訪し求婚。その想いを強引に伝えようとした為に、サラの"熱い鉄拳"と"制裁"に遭う。その後はセタ以上に密かにサラに想いを寄せるようになる。マゾの要素があり、宿の男からは"熱い変態"と呼ばれている。運動音痴。
宿の姉妹:村の宿の主。守銭奴。奴隷を派遣して主な収入を得ている。セタからはまったく信頼されていない。ネムコが気になっていて、セタに触らせてもらえるように頼み込んで、一応の許可が出た。
アリーナ・フレア:フレア商会の現当主の長女。一人息子がいる。その息子はネムコを巡ってセタといざこざがあったがミール・フレアの強権により和解をした。
ミール・フレア:フレア商会現当主の次女。フレア商会幹部。キリッとした顔つき、優秀で理知的にみえる。セタにそれとなく想いを寄せている。すらっとした体型。癖っ毛のある金髪を尾のように束ねている。計算高く、冷酷な一面もあるが、基本的には情に厚く、義理堅い。カリスマ性もあり、本人には今のところその気は無いが、次期フレア商会当主となることを熱望している職員も多い。独身。
フレア商会(フレア商店):ブルウノス村の出身である"ライズ・フレア"がブルウノス家、ライトストーン家の庇護を得て創業。絹を中心にした衣類や装飾品、食料品、雑貨等を揃えている。南メイガン街を中心に出店をしている。昔は"商店"であったが現在は"商会"となっている。街や村の住人は、現在でも馴染みのある"フレア商店"と呼んでいる。正確には、出店している各店舗は"フレア商店"で、その集合としての全体の名称が"フレア商会"となっている。創業者ライズ・フレアの胸像が、ブルウノス村にあるタニア・ブルウノスの銅像から少し離れた隅の方にひっそりと設置されている。
土豪ブルウノス家:南メイガン街から南西に位置する村を神官であるストーン家の守護者として統治している。元々は流れ者の放牧集団であったが、安住の地として村を作り、牧畜と農業、蚕(絹)の殖産、物流により発展。その後さらに土地を開墾、拡張し代を重ね、この地域の土豪となった。初代は女性の"タニア・ブルウノス"で村の中央には、斧と盾を持った勇ましい銅像が特別に設置されている。若き日のタニアは放牧時代にストーン家の神官から教示を受け、見返りを求めずに神官移動時の警護や情報収集、物資の移動等を行っていた関係で、その存在は知られており、村の創立と同時に神官守護者となった。ブルウノス村の住人は、神官であるストーン家及びストーン教以上に、ブルウノス家を慕っており、タニア・ブルウノスの銅像は、住民がブルウノス家当主に頼み込み、費用を住民皆で負担し設置。毎朝、拭き掃除する当番が決まっている。アルとセタは村の中で、人目も構わず言い合ったり喧嘩をしていることがあり、村の住人はその開けっぴろげな飾らない二人の光景に慣れつつ、何だか親戚や身内のような親近感がわくらしい。
ストーン家:神官の家系。メイガン街を中心に統治している。メイガン街の周辺の各村には神官を配置してその村の統治権を"神官守護者"として村の長に与えている。中央メイガン街はストーン家直系、北メイガン街はストーン家の分家であるエリス・ストーン家、南メイガン街は同じく分家のライト・ストーン家が統治している。元々は異教として迫害され、信者と共にメイガンの地に流れ着いた。ストーン教の開祖、フレドシア・ストーンから始まり、現在に至る。ストーン教の戒律は他の宗教よりも緩く、飲酒や肉の摂取は可能、献金は自由、教会には年に四回、季節の変わり目に行って祈りを捧げればよい(一般の信者でなく、各村に駐在する神官は年に一回だけ休息の日が与えられ、それ以外の日は毎日祭壇にて祈りを捧げる)となっている。当初は神官という役職や存在は無く、教国の王、教王であるフレドシアとその親類や近習の信者が直接統治をしていたが、フレドシアの教王と名乗りながらの地味な出で立ちによる布教活動と、厳しくない緩い戒律により、周辺の村や地域の信者数が増加。それに伴い神官と守護者という関係性及び制度を作り、各村の自主を尊重した間接統治を行うようになった。ストーン教の教会はすべて石造りとなっていて、宝物や香木を納める地下室が設置されている。開祖である元海賊の娘であったフレドシアは、幼少期に海から流れ着いた香木の中に隠してあった小さな石板に記されていた古代文字をみて、はるか彼方からの海の神からのお告げ、天啓ならぬ海啓とし、ストーン教の根本となる教本を創り上げた。その後海賊達はフレドシアの教えに従い改心をして海から陸に上がり、布教活動を行うようになった。フレドシアは一方的な主従関係における意味の無い拷問を加える等の理不尽な奴隷制度には反対をしていたが、衣食住を提供する上での労働者としての奴隷制度には賛成であった。そしてその奴隷についての考え方は、北メイガン街のエリス・ストーン家と、南メイガン街のライト・ストーン家では真逆であり、エリス・ストーン家は奴隷制度そのものに反対、ライト・ストーン家は労働者や趣向品としての柔軟な奴隷の売買や活用に賛成という立場であり、その価値観の違いから険悪な関係にある。現在北メイガン街では奴隷制度は原則禁止、廃止されている。中央メイガン街を統治している直系のストーン家は、両家の均衡が崩れるのを恐れ、双方どちらにも肩入れや介入はせず成り行きを見守っている状態である。だが両家の末端の分家同士や住人の多くは、奴隷制度の考え方については特段思うところは無く、あくまでも北と南の制度の違いとしてみている為か、その関係は普通もしくは良好であり、両家の原理主義的対立には表には出さないがうんざりしている。