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剣の魔女と英雄志願  作者: 荒野ヒロ
第二章 新たなる仲間

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レスティアを愛する者

第二章を改稿中。

 シグナークは宿屋で朝食を取り、簡単に身支度を済ませるとギルドへ向かった。

 街の人々は各々(おのおの)の仕事に向かうか、買い出しに行くために道を行き交っている。昨日よりも若干あたたかいためか──朝早い時間にもかかわらず、人の姿は多かった。


 ギルドの待合室を覗いたがレスティアの姿はない。少々早く来すぎたようだ。

 つぎに彼は掲示板に貼られた依頼を見て回り、昨日少女の言っていた、ミメト遺跡での依頼が入っていることを確認する。

 それは遺跡内に出没する牛頭人ミノタウロスを三体討伐し、その角を持ち帰る──という依頼だった。


 この遺跡の牛頭人は遺跡にある地下迷宮から地上に上がって来るのだが、多彩な武器や防具を身に着けている場合が多く。大型の斧のほかにも、大剣や斧槍ハルバードを手にしている牛頭人も出て来るのだ。中には高い戦闘能力を持つ個体もおり、ここミメト遺跡の牛頭人討伐の依頼は、魔法銀ミスリル階級以上の階級に依頼が推奨されていた。


 そのほかにもミメト遺跡に現れる危険な存在に、「魔人の尖兵せんぺい」と呼ばれるものがある。これは幻霊の一種と考えられる存在で、倒すと身に着けていた装備品以外の痕跡こんせきを残さずに消え去ってしまうのだ。(まれにだが灰や結晶が残されることもある)その個体は、どれも優れた戦闘能力を有し、魔法や戦技も繰り出してくる、危険な相手として警戒されている。

 これの多くは迷宮などに出没するが、まれに迷宮から地上に現れる。魔人の尖兵が持つ魔法の宿った武器や防具は、高値で売ることもできるし、通常装備しか手にしたことのない者には、どれも貴重な装備となるのである。


 魔法銀階級から受けられる依頼ではあるが、その一つ下の階級である鋼階級でも、受けることができないわけではない。そのもっとも簡単な方法が上位階級の者と共に依頼を受けることである。そういう意味もあってパーティを組むほうが効率が良いのは間違いない。

 それに、ギルドの指定している階級別の依頼内容は、ギルド側が「()()する」ものであって、必ずしも守らなくてはならないものと決まっているわけではない。……もちろん二階級や三階級も離れている者に、依頼を出すことを認めない場合が多いだろうが。



 彼は待合室で少女を待つことにした。

 数名の冒険者の出入りがあったが、少女は現れない。掲示板の前に立つ者も少なく、今日は冒険者の数自体が少ないらしい。おそらく数日かけて遠くへ行ったか、時間をかけて目標の討伐数などを稼いでいるパーティが多かったためだろう。


 そんなことを考えているとレスティアが彼の前にやって来た。少女は待ったかと尋ねたので、彼は「そうでもない」と口にした。

「ごめんなさい。厄介な奴に足止めを食らっていたのです」

 少女の言葉はいら立ちを抑えながら話していると感じたが、シグナークは特に少女が遅れて来たとも思っていなかったので「そうか」と返事をして、依頼が貼られた掲示板の前に少女を連れて行く。


「ミメト遺跡の牛頭人討伐依頼が入っているが……ここのは、魔法銀階級からが推奨すいしょうとなっているな。どうする? 俺は構わないが」

 彼の言葉を聞くまでもなく、少女は「行きましょう」と返事をするつもりであったが、後方から聞こえてきた声に少女の言葉は打ち消された。


「魔法銀階級なら、ここにいますよ!」


 そう言って現れたのは、威勢の良い女冒険者と、その後ろから気乗りしない感じでついて来ている──神官姿の少女であった。

 首から下げられた蒼い色の魔法銀階級章を得意げに見せる女冒険者は盾を背にし、長剣を腰から下げ、胴には肩当ての付いた鋼の胸当てを、腰から下がった数枚の革の垂れ幕に似た防護スカートを身に着けている。

 上半身をおおう防具はともかく、革の脛当てと革の長靴などは、彼女がまだ魔法銀階級になり立ての戦士であることをうかがわせた。


 神官の少女のほうは白い法服ローブと銀の錫杖しゃくじょう。腕に青玉サファイアの付いた銀の腕輪を身に着けており、指には金の指輪が一つはめられていた。こちらは三光神教会の神官から冒険者になった少女だろう。


「君らは……?」

 シグナークはそう言いながら、となりに立つレスティアの様子をうかがい、女冒険者に向ける視線を見てなんとなく察した。


「私はクイントゥス・グラトリム。ご覧のとおり魔法銀階級の騎士です!」

 ちらりと、その背後にいる神官に視線を送るシグナーク。すると彼女は丁寧なお辞儀をして「エレミュス・アルマトゥーカ。神官です」とだけ告げた。


「俺はシグナーク・ギオスヴァーク。戦士──階級は鋼」

 彼はそう言って、ちらりとレスティアのほうを見たが──彼女が名乗る必要もなさそうだ。クイントゥスはレスティアのほうに近寄ると、「一緒にミメト遺跡に行こう!」と声をかけた。その様子を困ったように見つめるのはエレミュスである。


 レスティアの()()()()した表情を見る限り、彼女がさっき言っていた「厄介な奴」とは、クイントゥスのことだろう。いったいどういう関係なのかとエレミュスに尋ねると、神官の少女はこう答える。


「え──と、つまりクイントゥスは……可愛い女の子が好きなんです」


 彼女の言葉を受けてシグナークは「なるほど」と納得し、一呼吸置いて「同性愛者か」と付け加えた。


「違います!」と叫んだのはクイントゥス本人であった。彼女は、自分が可愛いと思う少女と行動を共にしたいだけで、同性愛とか、そういうのではないんだと、強く主張しはじめた。

 彼は面倒くさいことになりそうだと思いつつも、クイントゥスらとパーティを組んでミメト遺跡に行くことは賛成だったらしい。


「魔法銀階級がいるなら依頼を受ける正当性が増すから、こちらとしては悪くない提案だな」

 シグナークの言葉にレスティアは反論しようと口を開きかけたが、その言葉を飲み込んで少女はこう言った。

「ですが、階級がそうであっても、それに見合った実力とは限らないのでは?」

 この言葉に彼は肩をすくめて「この際それはどうでもいい」とでも言いたげな顔をして、ちらりと神官の少女を見る。


「えっと……私は青銅階級なので、──ですが回復魔法と防御魔法以外にも、攻撃魔法も多少は使えます。それに私たちはいままで何度か、ミメト遺跡の探索に行っています。──そのときは六人パーティでしたが、牛頭人とも戦ったことはあります。一応」


 エレミュスの言葉は簡潔でわかりやすい。シグナークは頷くと、リーダーをクイントゥスにして、ミメト遺跡で牛頭人を三体討伐する依頼を受けることをレスティアに告げ、少女も、それをしぶしぶといった感じではあるが承諾したのであった。(ちなみに青銅階級は鋼よりも二つ下の階級)



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