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剣の魔女と英雄志願  作者: 荒野ヒロ
第八章 「英雄の資質」

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新たなる旅へ

最終話です。

冒険者として、戦士として生きる主人公たちの生き様みたいなものを感じてもらえれば。

 二人は戦士ギルドの訓練場に向かう。

 訓練場では二組の実戦訓練がおこなわれていた。

 ドーファの相手をレスティアがしていた。それは少女から申し出たものだ。金階級の戦士と戦える機会を少女が求めたのである。

 ゼシルレイラの相手は赤色の短髪をした女剣士。レイラとその女剣士は木剣をぶつけ合い、すばやい剣戟けんげきを交わしながら、互いに魔法を撃ち合い出す。


「レイラの相手をシャスさんが……魔法まで使って、互いの能力の測り合いですか?」

 シグナークはツァークと共に一人の女魔法使いのそばに立つ。

「シャスが相手をすると申し出たの。珍しいけれど、剣の魔女の力を知りたいのかもね」

 と、女魔法使いのフィーナ・ネフティネスがシグナークに言った。

 長い緑の髪をした魔法使いはにっこりと笑いながら「ひさしぶりね」とシグナークを見る。

 華やかな水色の法衣ローブを着た彼女は二人の女に防御魔法をかけ、二人の戦いを見守っている。


 シャス・エレフィ──この魔法剣士も若く、かなりの熟練度を持つ剣士だった。あのゼシルレイラと剣技でわたり合い、さらには魔法の扱いも決して剣の魔女に劣っていない。

「やるわね」

 レイラの声に剣を片手で構えながら楽しげに微笑むシャス。

 この二人の訓練もまた激しく、見ている者たちの度肝を抜くものだった。

「ん……そういえばベレクさんが見あたりませんが」

 シグナークはそう言いながらツァークの横に立った少女を見た。その少女には見覚えがないらしい。

「ベレクの奴は別行動中なんだ。……お、そうだ。まだ紹介していなかったな。彼女はユナ・ティーグナン。俺の──恋人、というやつだ」

「え」


 少し年が離れているようだと思ったのだろう。じろじろと少女とツァークを交互に見る。

「おいおい、ぶしつけな奴だなぁ」

「すみません。しかし──まさかツァークさんに恋人ができるとは。……てっきりどこかの貴族の──具体的に言えば、()()()()()()()()()()──」

「おい、()()()()()()()()()?」

 しまった、といった顔をしてシグナークは舌を出す。

「すみません、舌がすべりました」

「おい、私は誰から聞いたかと聞いているんだぜ」

 顔は笑っていたがツァークの言葉と笑顔には険が含まれている。


「ところでユナさんは──、ああそうか、以前ドーファさんが言っていた新人を鍛えているというのは、あなたのことか」

「あ、はい──」と彼女は戸惑ったような笑みを浮かべる。その緑色の瞳は不安に揺れていた。

「シグナーク」と明確に怒気をはらんだ声で呼びかけるツァーク。

「そ、そろそろ訓練を止めたほうがいいかもしれませんね」

 彼はそう言葉を残して、逃げるようにレスティアとドーファのもとへ向かう。




 二人の闘いは速度と力、その二つのぶつかり合いだった。

 木剣が折れるのではないかというくらい、すさまじい音を響かせている。

 シグナークが近づいて来たのを感じると二人は互いに間合いを取り、木剣を下ろした。

「いやぁ──さすがだな。これだけの速度で動けるとは。シグナークも彼女と闘ったか?」

 ドーファが木剣で肩を叩きながら言った。

「ええ、まるで太刀打ちできませんでしたよ」

「そうでもないでしょう」

 レスティアは木剣をくるくると回しながら言い、訓練の疲労などまるでないみたいに振る舞う。


 レイラとシャスの訓練も終了した。両者ともかなり真剣に闘っていたが、まだまだ奥の手を隠した感じもある。

 二人の女剣士は互いの健闘をたたえ合っていた。

「ひさしぶり」と、シャスがシグナークに声をかける。

「ええ」

「ふぅん……話に聞いていたけど、なるほどね」

 容姿の変化について言ったのだろう。彼はその言葉に苦笑を浮かべる。

「魔女王とやりあって生き残るなんて、なかなか強くなったようね」

「いえ、まだまだです」


 剣の魔女たちとシグナーク。

 その三人を囲むツァークの仲間たち。

 フィーナとシャスは魔女王との戦いの細部を知りたがってシグナークを質問責めにし、ドーファはレイラとも闘おうと考えていたらしいがツァークが彼を止めた。

「残念だが私たちはクラドニアのほうへ向かわなくてはならないんだ。海路を使うからすぐにでも旅立たなくては」

「そうだった。むこうの地下迷宮を探索する予定なんだよな」

 シグナークたちは? そんなふうに尋ねるツァーク。

「俺は彼女らと共にモルガ・ディナに行く予定です」



 彼らは互いの旅について話し、ここで別れることになる。



「では──またな」

「はい」

 言葉少なく、戦士ギルドの前で握手を交わした冒険者たち。

 ツァークはシグナークと拳を突き合わせるとたった一言、こう残して背を向けた。

「強くなれ」



 三人の男女は凄腕の冒険者たちを見送ると、互いの顔を見つめあった。

 孤独なる戦士と魔女の少女。その二人の出会いから、古い歴史の亡霊との死線を経て──彼らの旅はまだつづく。

 強さを求める男シグナークと危険を求める少女レスティア。その二人を見守る少女の姉ゼシルレイラの三人は、剣の魔女の故郷に向けて再び旅立った。

 新たな力を獲得し、姿形も変わってしまったシグナーク。

 彼は荷物を背負うと二人の姉妹に笑いかけ、大きく頷いた。

「行こう」


 シグナークは英雄ではない。

 だが彼には目指すべきものがあり、そこへいたろうとする強い意志がある。

 力を求める男のすえにはいくつもの可能性が──それは彼自身すら知ることのできない未来の自分への道が──ある。

 日々高みを目指す戦士の魂。

 その中には未来の英雄の姿がある。

 そして彼と共に歩む二人の魔女たちにも──きっと。




            ──剣の魔女と英雄志願 完 ──

お読みいただきありがとうございました。


この物語は多くの人の力や意思があって世界は動いてるんだ、という雰囲気も大切にしたいと思っているのであえて主人公以外の人々の話も盛り込んであります。そちらの人々の物語もありますので。


容姿も変わってしまったシグナークは今後もさまざまな問題が起きたりしながらも、強さを求めて旅をつづけて行きます。そのあたりを想像しながら幕引きとしました。

感想などいただけるとうれしいです。

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