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剣の魔女と英雄志願  作者: 荒野ヒロ
第七章 過去から未来へ息づく邪悪

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魔女王、その力の封印

 大通りをわたってレスティアたちがシグナークのもとへ向かう。

 皇族の少年と護衛らしい男も小走りになって、悩んでいる彼のもとに駆け寄った。

「どうしたんですか? そんな難しい顔をして」

 レスティアに声をかけられたシグナークは少女たちを見ると、二人の見覚えのある顔に向かって軽く会釈をした。


「ああ……、これを見てくれ」

 そう言って彼は羅針盤を取り出した。

 銀の針はカタカタと震えながら円形の通りを指し示している。

「これは……! アイラスが近くに⁉」

 レスティアは剣の柄に手をかける。

「まあ待て、そうじゃない。──あなたたちも魔人アイラスの討伐に参加するんですか?」

 シグナークは少女の後ろにいる二人の男にも声をかける。


「ええ、ぼくにはこの街に守りたい友だちがいるので。──本当にこの街にアイラスやルディアステートが現れるとしたら、全力で立ち向かわないと」

「そうか──なら、俺たちは仲間。ということでいいのかな」

口調を冒険者らしく変えたシグナーク。

「もちろん」

 少年はにこやかにそう答え、環状交差点の中央にある黒い石塔を見つめた。


「あの建国記念碑がどうかしましたか?」

 羅針盤の針が差す意味を知らない少年が羅針盤を見ながら尋ねた。

「この羅針盤はイズアルベラが作った物で、魔人アイラスやルディアステートなどの持つ魔神の力に反応するようにできている」

 シグナークがそう説明すると、少年と護衛の表情が険しくなった。

「すると──まさか、あの記念碑に魔女王と関係のある何かが……?」

「おそらくあの石塔の中には、魔女王の封印された力の一部が隠されているのだろう」

 それを聞いた四人は黙り込んでしまう。


「まさかこんな街中に魔女王の力の一部が封印されているなんて、思いもしませんでした」

「俺もだよ」

 四人は黙って黒い影を見つめていた。

 それは街の中にありながら、不気味な怪物の巣くう城のように思えてくる。レスティアはいまにもあの記念碑に斬りかかりそうな気配をにじませている。


 レイラはシグナークの発見した封印の場所を見つめながらしゃべり出す。

「イズアルベラが残留思念から読み取ったという記憶は、おそらくリシュバークから感じられる魔力を魔女王が感じていたからでしょう。──つまり魔女王はアイラスと共に、必ずこの石塔のところまでやって来て、封印された自分の力を解放しようとするはずです」

「奴らはどう攻めて来るかわからない。もしかすると吸血鬼にしたゴブリンどもをけしかけて来るかもしれないな」

 シグナークの言葉にレイラも「その可能性は高いでしょう」と口にする。

「……ところで、こちらのお二人は?」

「彼らは──ええと」

 そう言えば少年が皇族の関係者ということ以外には名前も知らないのだと気づいた。


「ああ、ぼくは──ルイルと言います。こちらはぼくの剣の師匠でもある傭兵のグエン。見識を広げるため、各地を旅しながら修業をしている冒険者です」

 皇族というのは秘密にしておくほうがいいのだろう。少年は身分を「冒険者」とだけ説明した。

 三人は少年と強面こわもての戦士に相槌あいづちを打ち、それぞれも名乗って階級章を見せる。


「皆さん魔法銀ミスリル階級ですか。頼もしいですね」

 二人の男は鉄の階級章を見せた。──少年はともかく傭兵だという男のほうは、銀階級であってもおかしくなさそうな気配をまとっていたが、シグナークは無粋な詮索はせずにいた。

「相手の目的がこの石塔だとわかれば、最終的にはここを死守すればいいわけだが──」

「そう簡単にはいかないかもしれませんね。たぶん戦士ギルドは街の防備にも冒険者を使うでしょうから、街の中心部に兵士や冒険者を配置する判断をするかは難しいところです」

 ルイルの発言はもっともだ。

 この石塔を敵が狙ってくるという情報は、ここにいる者たちしか知り得ないことなのだから。


「……しかたありません。少し手配して戦士ギルドには、ぼくたち五人と数名の冒険者を街の中心部に配置するよう、お願いしてみましょう」

 少年はそう切り出した。

 ただの少年の言葉ならそんなうまくいくはずがないだろうと反論もしようが、シグナークはあっさりと「それではルイルに任せよう」と返答する。

 レイラは少年から感じられる魔力について感づき、妹の顔を見て確信すると、この少年の処遇については触れないことに決めたようだ。




 五人は戦士ギルドに向かい──ギルド長に会うことを求めると、羅針盤のことや街の中心部にある建国記念碑についての推測を話して聞かせ、彼らと十数名の冒険者に街の中心部を守らせるという取り付けを得た。

 ギルド長に会わせろと言った少年の言葉をすぐに受付嬢が受け入れたのは、少年が片方の手にだけした手袋をはずして見せたときだ。

 その手にあった物を確認した受付嬢は飛び跳ねる勢いで、ギルド長のもとへ走って行ったのである。


「それでは今夜から警備のほうをよろしくお願いします」

 ギルド長はあっさりと──うやうやしく言い、ルイルと彼らを送り出した。

 その手にはギルド長の手配した指示書を握らせて。

 少年はいつの間にか手袋を付けていて、何事もなかったみたいに三人を振り返る。

「これでぼくたちは、あの記念碑の周辺で敵を迎え撃つことになったわけですが……」

「いちばん危険な役回りだな」シグナークはそう言いながらも口元がにやりと笑っている。

「わくわくしますね」レスティアも楽しそうに相槌を打った。

 二人の会話にため息をつくレイラ。


「剛胆な人たちですね」

 少年はそう言って笑い、何か考え込むみたいにあごに手を当てる。

「それではぼくたちはここで……。今夜にまた、あの場所でお会いしましょう」

 ルイルは礼儀正しく礼をして三人の前から去って行った。




 三人はルイルとグエンと別れたあとでじっくりと石塔を調べていたが、剣の魔女にもそこに隠された力が魔女王のものかどうか、判断できないと言う。

「魔力が感じられるわけでもありませんし──けれど、羅針盤はそれを感じ取っている。魔女王も自らの力の一部を身近に感じているのでしょう。私たちには感じられないのは封印の効果によるものでしょう。どうやって羅針盤や魔女王がそれを感知しているのか……その仕組みは謎ですね」

 レイラは正直に、石塔の中に魔女王の力が封印されているかはわからないと説明した。


「問題はすでに魔女王ルディアステートが復活し、この街に向かって来ているということだろう。それが近いうちに判明するわけだ。俺たちはその決戦に向かって覚悟を決めるだけだ」

「そうですね。伝説の魔女王とその配下アイラス。その二つの悪夢のような存在と戦える機会なんて、この時代に生まれた私たちにしか経験できないことですしね。全力で戦い抜くだけですよ」

 そう話すレスティアの声には、目には見えない気迫がにじんでいた。

 二人の戦意はその人生観にあるのだと思われた。命の危機とか、名誉の獲得とか、そうした通俗的な想いとはかけ離れた戦士としての生き様。

 彼らを突き動かすものはそうした精神の──いや、魂を燃え立たせる衝動。


 シグナークとレスティアの二人は間違いなく戦士の魂を宿す者たちだった。

 戦いの中で己と向き合い、強さを伸ばし、弱さを克服する。そうした人生の道を戦いの中に見いだしているのだ。

 レイラの中にも戦いの中で己の成長を感じる瞬間はあるが、それを求めるために戦うような気持ちはなく、この二人の戦いに対する前のめりな感じを見て、彼女は少しうらやましく思うのだった。




 三人は夕食を食べる前に仮眠をとった。

 夜に敵が攻めて来るのは間違いない。それが今日か明日かはわからないが。たぶんそう日はまたがないはずだ。イズアルベラもルディアステートは急いで封印を解こうと、焦っていると言っていた。

 危険な古き魔女たちは間違いなく近日中には、このリシュバークの街に侵略しに来るはずだ。

今年中に七章を完結するには──少し頑張らないといけないかもしれません。

応援のほどよろしくおねがいします。



ルイルの手にあるものは……もちろん皇族のあれです。痣の位置は人によって変わります。

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