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剣の魔女と英雄志願  作者: 荒野ヒロ
第七章 過去から未来へ息づく邪悪

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戦士ギルド、魔術師ギルドの対応

不定期更新ですが、なるべく1週間から10日に1回は投稿するようにします。

ブックマークや感想などをいただけるとありがたいです。

 イズアルベラが口にした内容に、シグナークはレスティアの顔を見、レスティアはゼシルレイラの顔を見た。


「……ごめんなさい。よくわからなかったわ。魔女王は六百年も昔に倒されて封印され、それを魔人アイラスが復活させようとしているんでしょう?」

 レイラは眉間にしわを寄せて古馴染ふるなじみの魔女を追及する。

「わ、私に言われても困るわぁ……だって、本当のことだものぉ。この中には、確かに魔女王の魂が()()()()()のは間違いないものぉ」

 うるうると涙目になるイズアルベラ。


「姉さん、待ってください。魔女王は初代皇帝ザッハレーグに討ち取られる直前、その力が消耗しているように感じられたと手記に書かれていたと……」

 少女はそう言ってシグナークを見た。

「どうやらシグナークさんの言っていたとおり、あの洞窟で感知された反応は魔人アイラスのものではなく、魔女王ルディアステートのものだったようですね」

 強面こわもての戦士は怖い顔でうなずいた。


「そうか──! 彼女は自分が倒されるのを『先見の魔眼』で知り、自分の力や魂を分けて首飾りの中に封じ込めた!」

「そして、その首飾りを手にしてあの洞窟に隠したのが……」

「魔女王の片腕、アイラスか」

 三人の出した結論に、イズアルベラは黙って頷いて見せた。

「そっちの吸血鬼の灰は、たぶん五年から十年くらいのあいだに灰となった吸血鬼のものよぉ。そいつは魔人アイラスの力によって吸血鬼化した村人で、洞窟に隠しておいた首飾りを回収しにきたようねぇ。けれど、そこにはコボルドたちが巣くっていた」

 机の上にいた白鷹がイズアルベラをじっと観察している。


「吸血鬼はコボルドを殺しまくったようだけどぉ、そこには不思議な剣を持ったコボルドの長がいたようなのぉ。その剣に貫かれた吸血鬼は、首飾りを手にしたまま倒れ──灰になったみたい?」

「そのあとは?」

 冷静にシグナークがつづきを求める。

「あン、せっかちねぇ」

「早く言わないと、あなたの尻を蹴り上げますよ」

 色っぽい声を出そうとしたイズアルベラに、ドスの利いた声で言うレスティア。

「も、もぅ~みんながっつきすぎぃ」と冷や汗をかきながらしゃべりはじめる。


「首飾りはその場に放置されてしまったのぉ。コボルドたちは吸血鬼に襲われた恐怖から、あの洞窟の住処すみかを捨てて逃げ出したみたいよぉ。

 本当なら首飾りを回収しに来た吸血鬼の身体に、ルディアステートの力──いわば半身が入る予定だったと思うのだけどぉ。このときは失敗に終わったみたいねぇ」

 それならルディアステートは復活しなかったことになる。

「そう。──けれどぉ、私が察知した魔力の反応は数週間前。つまりぃ、また魔人アイラスが吸血鬼を生み出してぇ、あの洞窟に落とした首飾りを回収したんだと思うわ。

 けどどうやらぁ、急ごしらえの肉体だったせいかぁ、首飾りの宝石の中に入っていた魔女王は吸血鬼の身体に収まらずにぃ、暴走してしまったみたいなのぉ~」

 そのときの反応をイズアルベラや、戦士ギルドの「千里眼」の力を持つ者が感知したのだ。


「暴走したルディアステートはその後、どうなったんだ?」

 シグナークは当然の疑問を口にした。

「それは私にもわからないわぁ。たぶん、その肉体のまま洞窟を飛び出して、近くの村人などを襲ったりしてぇ、力を安定させるだけの魔力や人間の魂を集めたんじゃないかしらぁ」

 魔女王は人の命とともに魔力を奪い去って、なんとか暴走状態を脱したと推測するイズアルベラ。

「近ごろ、行方不明者が多いっていうのは……」

「たぶん、そういうことでしょうね……」

 姉妹が暗い声でまとめた。


 いずれにしても、すでに魔女王が半分の力とはいえ、復活していることが判明した以上。これを撃退する方法を考えなければならなかった。

 すると白鷹が机からテーブルに飛び移り、鋭い爪の付いた足で首飾りをつかんだ。

「持って行くのぉ? いいわよねぇ?」

 と、三人を見る。

 剣の魔女の長に首飾りを持って行き、さらに深く首飾りを調べようというのだろう。

 シグナークは頷き、何かわかったらすぐに知らせてくれと頼んだ。

 すると白鷹は窓に向かって羽ばたいて行き、あっと言う間に遠くの空へと飛び去って行ったのだった。




「魔女王が復活していたか」

 シグナークは自分が予想していたこととはいえ、あらためてことの重大さを認識した。──六百年のときを超えて、伝説級に恐ろしい魔女が現代に蘇ったのだから。

「望むところですよ」

 レスティアはブレない。はじめから魔人アイラスなどと戦うためにここに来たのだと言わんばかりだ。


「ひとつ気になったんだけど。どうして魔女王は復活できなかったのかしら? ほら、最初の──洞窟に入って行った吸血鬼は、どういうわけかコボルドに倒されちゃったんでしょ? 先見の魔眼を持つ魔女王なら、そんなの予測できたんじゃない?」

 レイラの言葉にイズアルベラが答えた。

「それはねぇ……コボルドの長が持っていた不思議な剣。あれはねぇ──星鉄(隕鉄)から作られた剣なのよぉ。それが吸血鬼の不死身の身体を破壊し、灰にしてしまったのねぇ。なんでコボルドがそんな武器を持っていたのかはわからないけれどぉ」


 その説明では魔女王が復活するのを失敗した理由はわからなかったが、あの先見の魔眼もいまでは多くの力を失っているから、万全ではなかったのかもしれないという結論で落ち着いた。

 四人は魔女王やアイラスのことで話し合った。

 あとは白鷹を使いによこしたヴェルカーリムが魔女王の首飾りから、魔女王の潜伏場所などを読み取れるか、期待して待つことになった。

「ヴェルカーリムは魔女王から奪った『先見の魔眼』を受け継いでいる。それを使えばあるいは──、魔女王やアイラスの居場所をつきとめられるかもしれませんね」

 レイラはそう言って、これからどうするか考えましょうと言う。


「ひとまずヴェルカーリムからは新たな情報が得られるまで、ここで待ちましょうか。今晩にでもなんらかの情報が得られるかもしれませんし」

 鷹は今日中にモルガ・ディナ(魔女の領域)に着くはず。すぐに首飾り手にして先見の魔眼を使えば、遅くても明日の朝には情報が得られるのではと期待した。

「ではイズアルベラさんには、この話を帝都のお偉いさんにでも通してもらいましょうか。帝国の兵士たちの力も借りるようなことになるかもしれません」

「確かにそうねぇ……けどぉ、わかってもらえるかしらぁ」

「こののんびりした話し方じゃ、信じてもらえないかも……」

「ひどいぃ~」

 レスティアの言葉になげく魔女イズアルベラであった。




 彼らは魔導師の研究棟を離れると、そのまま城を出て行き、戦士ギルドにこの情報を伝えることにした。

 魔神の力を感じる銀の羅針盤はシグナークが持って行くことになった。まだこの先必要になるかもしれないとイズアルベラが言ったのだ。魔人アイラスや魔女王を捜すことになるかもしれない。シグナークはそう考え、羅針盤を上着のポケットにしまう。


 三人はイズアルベラの書いた報告書を手にして戦士ギルドに向かい、ギルドにいる責任者に面会することになる。

 執務室にいたギルド長は四十代前半の男で、鍛えあげた体をちぢこまらせて紙の束と格闘しているところだった。執務室にはほかにも三名の補佐官のような職員も仕事をしていたが、彼らを退席させるように言うと、ギルド長は嫌そうな顔をした。

「おいおい、まさかまた面倒事じゃぁないだろうな」

「ええ、面倒事です」とシグナークはばっさりと切り捨て、補佐官たちを退室させると、ギルド長にイズアルベラの報告書を提示する。


「────なるほど。王宮魔導師の……剣の魔女が。なるほど」

 ギルド長は頭をかかえた。

「最近いくつもの村や町で、行方不明になった人の捜索依頼が増えたり、町を襲撃するゴブリンの集団が立てつづけに現れたりと忙しいんだ。……まさか、本当に魔女王ルディアステートが復活するって言うのか」

「おそらく、もう復活しています」

 レスティアの言葉に大きなため息をつくギルド長。

「それは厄介やっかいだ。厄介なんてもんじゃない。──確かなのか?」

「今晩中にでも魔人アイラスか、魔女王の居場所が判明するかもしれません。そのときにはギルドや、帝国軍の協力を求めるようにと──」

 その言葉にギルド長は「わかっている」と答える。


「すでにそうした指示は受けている。『魔女王復活のきざしあり』とな、そのための優秀な人員を帝都周辺に集めている最中なのだ」

 まさかこんなに早くことが進むとは……、ギルド長は苦々しい口調で言うと、おまえたち三人にも協力してもらうぞと念を押す。

「もちろんです」

 シグナークの返事に満足すると、彼は新たな情報が魔女の長から得られたら、すぐに──たとえギルド長が眠っていても──情報を知らせるようにと言って、三人にこの情報を魔術師ギルドにも伝えるよう頼み、彼らを執務室から送り出した。




 戦士ギルドを出た三人は、すぐ近くの魔術師ギルドにも同じ情報を知らせに行った。

 そこのギルド長は五十代くらいの女性で、魔女王の復活と聞いたとき、失神したのかと思うほど目を白くして天井を見上げた。

「ぉおお……なんてこと! 魔人アイラスだけでも恐ろしいのに、魔女王ルディアステートがよみがえるだなんて……! いえ、待って! 彼女は力の半分を首飾りに残して復活したのね? なら──勝ち目はあるはず!」

 ギルド長はすぐに部下を呼びつけると、内密に魔法使いなどを帝都周辺に集めるよう指示を出した。


 魔術師ギルドにも、戦士ギルドの中央部から魔女王の件で協力要請があったらしい。あくまで密かに──情報が外部にもれぬようにしながら、各地にあるギルドで警戒に当たっているのだ。




「どうやらセーヴァさんがかけあってくれたみたいですね」

 魔術師ギルドを出た三人は、ガレンツァールで出会った監査官のセーヴァの働きに安堵あんどした。

 彼のおかげでことを進めるのが楽になったと感じていた。魔女王の復活などを進言しても、彼らのような冒険者三人だけの話では信じてもらえなかった可能性もある。


 安心した彼らは食事を食べたり、アイラスの探索などに必要な道具などを改めて確認し、無ければ買いに行った。

 三人は帝都グランダイアスに宿を確保し、剣の魔女の長ヴェルカーリムからのしらせを待つことにしたのである。

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