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剣の魔女と英雄志願  作者: 荒野ヒロ
第三章 大迷宮の探索
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フィグニアの街での四人

シグナークの偏屈さが垣間見えるエピソードですかね。



推敲し、読みやすくなるよう文章を一部変更しました。

 馬車は無事にフィグニアへ辿り着いた。空はすでに日が傾きはじめていたが、道の先は人通りが多く活気があった。大きな門からつづく道は荷車の通行量も多く、この街が経済的にも恵まれた状況にあることをうかがわせる。


「戦士ギルドまでもう少しですよ」と行商人のサディクが告げた。彼は馬車の行く先を指差し、一つの建物を示す。

 そこはウジャスの街にあったギルドより──少し大きな石造りの建物で、剣と靴が重なった意匠デザインの看板を、通りから見えるように高々とかかげている。

 馬車がその建物の前に止まると、四人の冒険者はすばやく馬車から降り、行商に礼を言った。


「こちらこそ、安心して移動できましたよ。それではこれが報酬と、依頼達成の証明書です」


 彼はそう言って硬貨の入った皮袋と、一枚の小さな羊皮紙をシグナークに手渡した。彼はそれを受け取ると、ほかの三人と共に行商人に別れを言う。

 サディクは片手を軽く上げて、別れの挨拶をして去って行く。こうして四人はギルドの前に立って馬車を見送り、ギルドの受付に向かうことにした。


 建物の中に入ると、もう外は暗くなる時間だというのに数十人の冒険者たちと、ギルドの事務員などで賑わっていた。受付にはシグナークのほかクィントゥスも並ぶことになり、ほかの二名は待合室のほうに向かう。


 数分後に受付の前に立つと四人の名前と階級を伝えて、ウジャスの街から馬車を護衛した証明書を手渡してから宿屋の場所を尋ねると、受付嬢はカウンターの上にある街の地図を二人の前に差し出し、いくつかある宿屋の部屋の値段などを説明してくれた。彼らは受付に礼を言うと仲間のもとへ向かう。


 レスティアとエレミュスの二人は綺麗に磨かれた丸いテーブル席を囲み、仲間の帰りを待っていた。彼女らは特に会話することもなく、ただ黙ってテーブルを挟み、向かい合っていたようだ。エレミュスにとってこの少女は──噂どおりの、危険さを孕んだ冒険者という認識がまだ取れていないのかもしれない。


「宿屋を紹介してもらったがどれにする? 俺は一番安い宿に泊まることにするよ。一応、三日ほど泊まろうかと思っているが」


 そう言ってクィントゥスやレスティアらのほうをうかがうと、彼女らもまずは三日ほど泊まってみて、悪くなければそのまま延長する方向で、もっとも安い宿屋に泊まることにする。


「レスティアちゃんも一緒の部屋でいいよね?」とクィントゥスが言うと、少女は一人部屋に泊まるつもりですと返答し、彼女は「え〜~」と猛烈に反対する。

「危ないよ! 女の子の一人泊まりなんて! ダメダメ、一緒の部屋にしよう!」


 クィントゥスは引き下がらない。エレミュスも三人でいたほうが安全と言えば安全ではないでしょうか、と控えめに言って少女を納得させたようだ。


 四人が宿屋に向かうと部屋は空いていた。──三階にある一人部屋にシグナークが。二階の三人部屋にレスティアらが泊まることになった。彼らが宿屋に来たころには日が落ちていたが、この宿は朝食以外は食事が出ないらしい。横を通りすぎながら宿を出て行った男が、小声で「朝食もくそまずいぜ」と残していった。


 クィントゥスは三日で良かったとほっとしているが、シグナークは栄養さえ取れれば、味は大して気にしないという考えで冒険しているのであった。──その気になれば、生のままの芋を食べられるし、虫の幼虫だって生きたまま食える。食い物ごときであれは無理、これは無理と言っている者が強くなれるわけがない、と彼は考えているのだ。


 古い冒険者の多くは、このような考え方の冒険者が多かったが、昨今では──冒険途中の食事くらいは、気分良く美味しい食事を、という傾向が増えているらしい。……彼には理解できないことだった。食事ごときで不満を口にする者が、逆境において真価を発揮することなどできるはずがない、というのが彼の考え方なのである。

しばらくはシグナークがどのような人間かが分かるお話がつづきます。


サディクさんは、学生時代に仲間と共同で『金属の変性』についての論文を書いて認められるなど、結構優秀な錬金術師だったりします。実のところ、彼は、護衛を雇わなくても、身を守る手段を持っている──手練れの術者──という側面も持ち合わせた人物だったりします。

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