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剣の魔女と英雄志願  作者: 荒野ヒロ
第二章 新たなる仲間
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新たな街への旅と行商

 彼らはそのあとで、次の街……フィグニアへ旅立つことに決めた。フィグニアには魔術師ギルドもあり、この近辺ではかなり大きな冒険の拠点となる街だと言える。


 だが、そこまでの道のりはかなりあり、街道沿いを徒歩で行けば三日はかかるであろう。途中にある「白帽子しらぼうし山」とも呼ばれる一年中、山頂に雪が積もった大きく高い山脈と、そのふもとにある大きな湖を迂回して行くことになるため、できれば馬車を使って移動したいところである。


 フィグニアに向かう途中にあるイフケ村に寄れば多少遠回りになるが、野宿の危険を犯さずに、一泊は屋根のある場所で身体を休めることもできる。

 そのためには街道の脇道へ入って、村までの道を二時間ほど歩くことになるが。


 彼らは冒険の予定を立てると、ギルドにこの街を去ることを告げ、フィグニアに向かう馬車の護衛依頼がないかと尋ねると、フィグニアヘ向かう荷馬車の護衛依頼が入っていることを知り、それをおこないながら移動することになった。

 四人はすぐに身支度を整え、明日にはウジャスの街を離れて、フィグニアへ向かうこととなった。


 行商人や特定の区間を移動する商会の荷馬車には、固定の護衛が付いていることが多いのだが、今回の依頼は街と街の間を自由に、時間を気にせず旅している行商人が、ギルドに依頼を出したらしい。

 護衛報酬は安かったが、四人なら馬車に乗せることは充分にできるということで、彼らは明日の早朝にはウジャスを出ることになったのである。


 * * * * *


「あらためて、行商人のサディクと言います。フィグニアまでの護衛、よろしくお願いします」


 翌朝ギルド前で待ち合わせた若い行商人は丁寧に頭を下げた。年齢はシグナークと同じくらい、二十代なかば──といった行商人は、旅用の軽装に身を包み、屋根()付きの荷馬車を二頭の馬に引かせてやって来た。


 クィントゥスらもこちらこそと言う感じで挨拶し、予定どおり荷馬車に乗って街を出ることとなった。荷馬車の移動速度は遅かったが、それでも徒歩で歩きつづけるよりは遥かに時間を短縮して、フィグニアに辿り着くことができるであろう。


 荷馬車に乗り慣れていないレスティアやエレミュスにはわからなかったが、この荷馬車の乗り心地はかなり良い。シグナークがそのことをサディクに伝えると、「シュケーヴィアの街で造られた馬車で、丈夫な木材と高性能の懸架装置サスペンションを使っているから」だと、彼は答えた。


 荷車や馬車の製造だけでなく、輓馬ばんばなどの育成にも力を入れているシュケーヴィアの街で馬と馬車を購入し、各地を旅しながら商品を売り歩いているのだとサディクは説明する。


「ところで気になったのですが、行商人にしては荷物が少なくありませんか? 木箱が二つに木樽が一つ……そのおかげで私たちも、馬車に乗って移動ができるわけですけど。」


 レスティアが不思議に思ったことを口にする。行商人は笑って「ウジャスの街に名産品があれば、それを購入して別の街へ運んで売るくらいのことはしますが、ウジャスには名産がなく、さらに私は基本的に扱っている商品が、通常の物とは異なるので」と振り返りながら言う。


「通常の物とは違う商品?」


 その言葉に反応したのはエレミュスであった。麻薬か何かだと疑ったりしたわけではないが、仮にも同乗している荷馬車に危険な物が積まれていないかと危惧したのである。


「ええ、貴族向けの香水や石鹸せっけん──そんな物ですね。もちろん、それ以外にも扱っていますが。基本的に中流階級向けの商品。最近では冒険者用に、魔法の香炉や香油などを生成した物を販売したりもしていますが」


 生成した物、ということは、彼自身が造っているということであろうか。そのことを尋ねると、答えは「そう」だと返された。


「私はもともと魔法学校で錬金科を卒業していますので。当時はまだ新設されたばかりの新しい学科で──教師も生徒も、ほとんど共同で研究をしているような状況でしたが」サディクは楽しげに語る。


「最近は冒険者の人たちも、錬金術の品物を多く扱っておられるでしょう。獣たちから匂いを察知されにくくする石鹸。というのが出回っていて──正直、驚かされましたよ。効果のほどは知りませんが、その発想は評価したいですね」


 彼の話は実に興味深いものだった。彼自身は貴族向けの、かおり高い石鹸などを造って、高価な商品として売りさばいているが。一方で安価な石鹸の生成や、冒険者たちに向けて造られている石鹸もある、というのである。


「大陸北方の東にあるルグラート国の小さな街には、だいぶ前から錬金術師が集まる街があるということですが、そこから出る商品の多くも、一般的な生活様式を変える手助けになっているらしいですね」


 そう言ったあとに彼は暗い声で。

「しかし、北方のある国の宗教が錬金術や魔法を『異端いたん』として、排撃しはじめたという噂も聞きます。嫌な話ですね、人々の生活を豊かなものにしようという錬金術師を排除して、何が楽しいのか──まったく理解できませんよ」


 彼の言葉には、言いようのない怒りが込められていた。行商人と言うよりは、錬金術師としての言葉だろう。各地を旅して錬金術の品物を扱う行商人としては、そのような思想の広がりはごめんだ、という意味合いもあっただろうが。

このサディクさんが、行商人として活動する物語をちょっと書いてあります。読み物としてはどうかと思うので、ここには投稿しないと思いますが(笑)。まあ、練習用のような感じで書いたものなので。

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