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剣の魔女と英雄志願  作者: 荒野ヒロ
第二章 新たなる仲間
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依頼の達成、冒険者の日常

 彼らはこうして戦利品を手に街へと帰還することができた。道の途中で敵に襲われることもなく、彼らは予定していたとおり暗くなる前に、ウジャスの街に戻ってこれたのである。

 荷袋に戦利品の武器や防具を入れたままギルドへ向かい、牛頭人ミノタウロス討伐依頼と、そのほかの人喰鬼オーガやゴブリンの討伐報酬──魔人の尖兵は、遺跡や迷宮内から出ることがないため、市民や旅人などの危険を排除したことにはならず、討伐報酬は得られないのだ──を受け取ると、彼らは受付嬢が四人から預かった階級章に、魔導具で評価事項と得点を書き入れるのを見届けてから、階級章を受け取って首から下げる。


 ギルドを出ると、予定どおり戦利品を店に売却するため、二手に分かれて武器屋と防具屋に足を運ぶ。

 四人は売るべき物を売って身軽になると、店の前から去って料理屋へ向かう。


 ウジャスは小さな街である。料理屋もそれほど数があるわけではない。そんな中、彼女らが──おもに腹をかせていたクィントゥスが選んだのは、大陸南部方面の料理を提供するという料理屋であった。

 クィントゥスはもちろん、ほかの三名も大陸南部へ行ったことはないので、その料理屋で出される料理が、南部地方特有の料理かどうかはわからないが。

 とりあえず──その店に入ると、給仕の意見を参考にしながら、人数分の料理を出してもらうことになったのである。


 ダップザムと呼ばれる卵料理と牛肉の角煮。山盛りの生野菜の上に鶏肉の蒸した物を乗せ、甘辛いタレをかけた大皿や、薄く焼いたパンにタレや牛酪バターを塗って、野菜や腸詰め(ソーセージ)を巻いて食べる料理などがテーブルの上に並ぶ。


 四人はそれらを取り皿に分けると、冷えた果実水や温かい紅茶を飲みながら、珍しい味のするそれらの料理を堪能した。中でも南方では定番だと言われる牛肉の角煮は、大きな肉の塊がフォークで簡単に切れるほど良く煮込まれて、魚醤ぎょしょうを基礎とした味付けに、香味野菜を添えて食べると、いくらでも食べられそうなほどあっさりした味で、彼らは夢中になってもう一皿お代わりをしたほどであった。


 腹も膨れるとテーブルの上の皿を給仕に片付けてもらい、彼女らはそれぞれ戦利品を売り上げた物をテーブルの上に乗せた。皮袋の大きさでは防具を売った物のほうが大きく膨らんでいる。

 それもそのはずで、魔人の尖兵から得た防具の中には、魔法のかかった物がいくつかあったので、それらが買い取り価格を吊り上げたのだ。


 そのほかにも、ゴブリンから得た宝石の入った皮袋なども分けると、今回の戦利品を含めた収入は、この街で受けられる依頼にしては、かなりの金額となった。四人で分けてもそれなりの物だ。彼らが料理を一皿多く注文するのも納得の内容だったのである。


「それにしてもあの『暴走姫』が、パーティを組んで活躍する日が来るとは……」と感慨深く言ったのはクィントゥスであった。もっとも「暴走姫」などと呼んでいるのは彼女くらいだろう。


「べつに……シグナークさんの話を聞いて、意識的に仲間の立ち位置に気を配って行動することの重要性を気づかされたというか。……パーティの強さと、個人の強さを同じ枠の中でとらえない、ということを学んだだけです」


 少女の言葉に頷いたのはシグナークであった。彼はこれでレスティアが、階級を上げるための過程を一つ乗り越えたのではと語って、今度は別の街へ行き、いままでとは違った考え方でパーティを組んだり、依頼を達成したりしていく中で、より成長するだろうと太鼓判を押す。


 その言葉にレスティアは、少々引っかかって声を上げた。


「あら。もうパーティを解約されてしまったのでしょうか? もうしばらくシグナークさんとパーティを組んでいたいのですが」


 少女が言うとクィントゥスも「私も私も」と言って手をあげる。レスティアは彼女のことは無視して、シグナークに「どうでしょうか」と尋ねた。


「──そうだな。君は強いし、頼りにもなることを証明した。俺は次の街へ向かうが、レスティアが共に来てくれるというのなら心強い」


 彼の言葉に少女は認められたよろこびからにっこりと微笑んで応え、そんな表情をなぜ私にも向けてくれないのかとクィントゥスが叫ぶと、エレミュスがやかましいと言って彼女の脛を小突いた。

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