5 お友達
「レオはさ、ブラットフォルン様と友達になりたいんだよね」
「えっ?」
「はっ?」
声が被った気がする。
でもその言葉に僕の嬉しさスイッチが入ってしまった
お友達…!
僕のお友達になってくれるの?
もう誰一人お友達が出来ず天涯孤独になってしまうのかと、学園生活に絶望を感じていた僕に?
「僕とお友達になってくださるのですか?」
おそらく期待に胸を膨らませて言ってしまった言葉だ
この際友達が出来るならこの二人でも構わないと痲痺していた。
そもそもこんな会話存在するかも知らないのだ。
二人は僕のことばに驚いたような表情をしてまた固まってしまった。
あれ?変だったかな・・・聞き間違いだった?
「あっ、あの、嫌々言ってるのであればっ、そんな、無理になっていただかなくても」
うわああああ恥ずかしいっおそらく羞恥で真っ赤な顔を両手で煽りながら言葉を発した。
友達欲しさに聞こえた幻聴だったのかもしれない!泣きそうだっ穴が合ったら飛び込みたいっ
うっ恥ずかしいっ
「もう無理…かわいすぎる」
そんな声とともに視界が見えなくなった
「こ、こら!ハルトはなれろ!」
「あ〜〜〜っ駄目っ!可愛い!お友達になろうね!!」
うぐぐ、苦しい、ここは飛び込んだ穴の中でしょうか?
ハルトさんにぎゅうっと抱きしめられてるのに気付いたのは数秒してからだった
お友達になろう!?
えっいいのっ?
なんと僕は単純なのだろうか・・・
恥ずかしさは吹き飛んで今はもう幸せ一杯になってしまっていた
「う、嬉しいですっ」
「僕の事はハルトって呼んで良いよ!おれもミーシャって呼ぶね?」
「は、はいっ!ハルトくん!よろしくお願いしますっ」
「おいっ、俺もミーシャってよぶからレオと呼ぶ事を許す!」
「キングレミス様もお友達になってくれるのですか?」
ぱぁっと笑顔で言えば
「レオと呼べ!」
「レオくんっ!」
「っぐ、よしっ」
う、嬉しいっ・・・
僕に友達っ!
帰宅して夜までその喜びに浸っていた。
攻略対象二人と幼なじみの3人として成立してしまったのだった。
これもまたゲームと大きく外れた展開であり
そしてミーシャにもレオンとハルトに同じく親衛隊が結成されている事も
麗しの子猫様などと男女に囁かれていると言う事にミーシャは気付くことはない。
いつも行動は3人セットという形になった。
ビバ友情学園ライフ!
レオ君とハルト君はとても面倒見がよくお兄様のように僕を甘やかそうとしてくるのだ
たしかに身長はモデル体系を約束された二人の王子様よりTHEフツウである僕は低めだけども・・・
中身は圧倒的に年上だし、そもそも同級生なんだけどなぁ・・・
でもその二人の好意はすごく嬉しくて僕は甘えてしまう。
レオ君は心を許した人にはすごく甘いらしく僕とハルトくんにはとっても優しい、最初の印象は何処へやら?相変わらず気に入らない物には厳しいけどゲームの印象より大分丸く感じる気がするのだ。
お昼のお時間学園には大きな学食も有るけれど初等部は弁当の子がほとんどだ、ただお弁当は普通の物とは違う、ここは貴族の学園なだけあって自分のもそうだが専属のシェフが学園の厨房でお昼に合わせてお弁当を作ってくるのだ。
初等部の校舎のテラスにはレオくんとハルトくんの専用の席が入学が決まってから既に用意されていたそこに何故か僕も加わらせて貰っているのだ。
椅子が無いからと兄様と読書をするようになぜか僕が毎回何方かの膝の上でお弁当を食べるのが日課になっている交代制らしいけど僕は同級生だし恥ずかしくて僕はいいよと遠慮してもレオくんに駄目だと睨まれるだけだ。
「おいしいか?」
少し上から振ってくる声に満面の笑みで答える
「はいっ」
「ずるいっずるいっ!」
「お前は昨日と明日だろうが欲張るな、毎日俺でいいくらいだ」
「ハァ〜〜!?それは却下だね!」
「ならば大人しくルールに従え」
「うぐぅ〜」
おべんとうは本当に美味しい。とくに大好物のミニハンバーグだ、家庭的なお弁当とはかけ離れた高級な味わいではあるが。
今日はレオくんの膝の上でお弁当の日だ
レオは美味しそうにお弁当を頬張るミーシャを見て満足そうな笑みを浮かべている
二人とも本当にお兄ちゃんみたいだなぁ
このまま平和にヒロインちゃんとレオくんあたりが結ばれてくれれば…あぁ〜でもお兄様も応援したいしハルトくんだって応援したい!これは大変だなぁ、乙女の恋を僕は温かい目で見守りつつ色々サポートすることを心に誓う。
ただし破滅だけはなんとしても避けたいのでそこらへんの準備もしっかり進めなければ。
筋肉こそつかないものの剣術、護身術共にに公爵家に恥じぬ腕前と先生から太鼓判を推されているのだ。
勉学も常にトップを取り続けているし、最初こそ悔しそうにしていた二人だが今ではすっかり
「さすが俺のミーシャだ!」「今回もがんばったね」なんて頭を撫でながら褒めてくれるレベルだ。
可愛い弟ポジに収まりつつある気もするけど、平和に過ごせるにこした事は無い。
中等部に入る頃には幼さも大分抜け二人は凄く大人びた王子顔になるわけだが相変わらず二人はとても優しいただ1年から6年までずっと3人同じクラスだったのは違和感を覚えたけどね?普通無いでしょねぇ?金の力かな?
あえて突っ込まなかったけど毎年クラス替えはきちんと存在したしね
初等部は上流階級の子供達が溢れていてそれなりに規律が守られていたが中等部からはそうはいかないらしい、勉学、スポーツなどもそうだが中等部高等部はヒロインちゃんが来るように外部の子達が増え始めるのだ。そして選民意識の高い学生が衝突を起こしたりするからまた厄介なのだ。
巻き込まれたく無いなぁ・・・平和が一番なのになんて思いながら自覚無いうちに敵に回しては行けない貴族トップ3の頂点に自分の存在が置かれているのをミーシャは知らない。
中等部始めの成績表ランクの確認に足を運んでいるとドンと知らない学生とぶつかった
ぶつかって来たのは相手だが争いごとは避けたいために先に謝る。
「ごめんなさい」
「は?なんだ、御坊ちゃまの進級生様かよ」
チッと舌打ちされた
がら悪いなぁ・・・しかもぶつかっておいて謝らないなんて
まぁ前世では普通の学校に通っていたわけだしふざけてぶつかる男子なんて珍しく無いか。
ゲームでもあったように自分の外見は小者のそれだとミーシャは信じ込んでいるため弱そうだから見逃してもらえたんだなと思う喧嘩売られてパシリとかにならないだけ良しとしよう。
背後から慣れた体温と臭いに包み込まれる
すっかり大人びてゲームさながらの素敵な王子様の外見を持つ兄に後ろから抱きしめられた
兄弟の距離感をしらない僕はこれが兄弟得というやつか!と鼻血をこらえる
「ミシャ」
「兄様!!!」
「進級おめでとう」
「ありがとうございます」
「しかしせっかく同じ中等部になってもまたすぐ離れてしまうなんて悲しいな」
「そんなそんなっ僕だってそうです」
初等部の頃から自分を気に掛けてよく下の学年である僕のクラスに兄様は顔を出してくれた。
兄様が中等部に上がってしまってもそれは変わらなかったがいまいち僕の友達のレオくんとハルトくんとは仲が悪いようでやっぱり将来ヒロインちゃんを取り合うライバルの勘が働いてるのかなって思う。
「ミシャは年々可愛さが増しているからね、へんな虫が増えないか心配だよ、それに外部の生徒も増えるし危険に巻き込まれないかで・・・」
「へんな虫って、僕は友達のレオくんやハルトくんみたいにモテないですよ・・・」
事実そうだ。レオくんやハルトくんはキャーキャー騒がれていていろんな子に好意を寄せられてるのは知っているが僕はそう言うのとは無縁だ
恋愛も憧れるけど記憶が女性だし男の子と恋愛するわけにも行かない、これは仕事一筋の独身ルートかなぁなんて思ってしまう・・・
「ミシャ?」
「すみません、考え事をっ」
「大丈夫だよ、いざとなったらお兄様がミシャを幸せにするからね」
「お兄様・・・」
なんてキラキラスマイル・・・うっかり頬を染めてしまったが腐女子が喜びそうだッ
いけないいけない、禁断の扉が開きかけるっ、でもそんなお兄様も将来ヒロインちゃんが来たら好きになっちゃうんだよなぁ・・・
「おい、クソブラコンいい加減にしろ」
「ミーシャ!」
レオくんの声が聞こえたと追えばハルトくんに腕を引っ張られた
「おーいでっ」
「ハルトくん!レオくん!」
「なかなか来ないから探したぞ」
「あっ、ごめんね」
「どうせそこのブラコンに引き止められてたんだろ?」
「兄様はブラコンじゃないよ、そんな呼び方は・・・」
「いやいや・・・ミーシャ、それは無理が有るよ」
小声でハルトくんがそれに反応した
険悪な雰囲気が漂う中兄様からドス黒いオーラを感じるのは気のせいかな?
「おや、キングレミス様にフィルスタット様こんにちは。一応上の学年にはそれなりの敬意を払う物ではありませんか?」
挨拶に丁寧な注意まで、紳士として完璧な兄様カッコいいなぁ
僕の反応を知ってか知らずか兄のオーラは引っ込んだようだ
反対にレオくんはさらに不機嫌をあらわにする
「何を今更」
うーんこれ以上は良く無いと判断して行動にうつす
「レオくんハルトくん、僕まだ順位見てないんだけどっ早く見に行かない?」
「そうだねっ早く行こっレオ〜置いてくぞ?御兄様も失礼しました!」
「あっおいまて!!!おいてくな!!!」
ばたばたと走り去る中「いや御兄様なんて呼ばれ許した覚えないけど・・・」
と聞こえた気がする。