3 初等部
バレットフォルン公爵家は国に大きな利益をもたらす企業の一つである。
父も母も選民意識は高く、マナーにも厳しい。
赤ちゃんの頃は甘くとも成長して行くにつれそうはいかない、跡継ぎに関わる事なのだから。
マリアージュ学園は言わば貴族のための学園であり初等部・中等部・高等部とエスカレーター式となっている。
お金さえ有れば高等部までは貴族の家計であれば学力無くとも余裕で過ごせてしまうのだ、だがそんなことに甘えてられないのがこの貴族の世界なのだ。
地位に甘えていれば簡単に蹴落とされる。
公爵だろうとそれは変わらない。
僕はそのマリアージュ学園の初等部に入学したのだ。
たださすがは兄様で成績も優秀で運動も出来るのを僕はよく知っている。
だからこそ学園でも注目されていて、さらには家の爵位は上位の公爵なのだから当然モテる。
そしてその弟が入学と言う事で注目されてしまうのだ。
できれば平和にこっそり生きたいのだ。
メインキャラに比べて僕はイケメンでない自覚はあるしお兄様なんかと比べられたら最後だ。
モブキャラよろしく母親に目元が似ている兄さまはうつくしいが僕は目つきの悪い父親似の三白眼だしね
ゲーム中のミーシャはそれこそ愛想が悪く横暴なキャラだったが手下を何人か連れていたな・・・
初等部から爵位と兄を振りかざし生意気なガキ大将をやっていたのが目に浮かぶ。
ただ今のミーシャは僕でありそうはならないよう努力しているつもりだ、
権力なんて振りかざしたくないし兄の名前だって迷惑をかけたく無いからだしたくない。
ヒロインが現れるのは中等部の2年生の春だしそれまでに良い人間関係を作り上げておきたいと思っているのだ。
なんとか大人しく平穏な日常を送りたい。
そんな事を思っているとよく知る声に名前を呼ばれた
「ミシャ!!!入学おめでとう!!!」
「兄さまっ!」
王子の笑顔だ〜〜〜ふわぁ〜〜〜
兄さまのスマイルは協力だ・・・僕鼻血が出そうだよ・・・
笑顔で駆け寄れば嬉しそうに兄さまも笑い返してくれる
優しく抱きしめるように花束を渡された
「何か困った事があったら俺に来るんだよ?お兄様を頼ってね」
「はいっ!」
嬉しくてぎゅっとだきつけば兄さまも抱きしめ返してくれる
「本当に仲良しねぇ」
「母様っ!」
楽しそうに声をかけたのは母様だ
「ミーシャ、学園に入った以上家に恥じぬ成績を保つのですよ?」
「母上、ミシャはとても覚えが早いですし成績は絶対大丈夫ですよ」
「それもそうね」
「が、頑張りますっ!」
そんなに評価してもらえるのは嬉しいけどこれは油断していられないなと思った。
兄様が高等部1年の時にヒロインの子が入って来るので僕と同い年なのだ、そしてクラスも同じといね・・・ヒロインと同学年と言う事はメインキャラ達と同学年という事になるのだ。
絶対関わらないようにしよ・・・でも正直プレイして来た王子様達の幼少の姿を見れるのは最高すぎる…役得だ…ただ将来その方達に殺されかねないのだが。
剣の練習も密かにしているしいざ戦っても生き延びられる努力は怠らない。
そして入学最初の初等部のテスト成績が発表された時、僕はやってしまったと後悔するのだ。
入学時に一度行われたテスト順位が発表される日
上位30名が掲示板に張り出されるため新入生達が集まる。
ミーシャもその新入生の一人として紛れてみていた
ぽかーんと口を空けて立ちすくんだ
1位 ミーシャ=バレットフォルン
2位 レオ=キングレミス
3位 ハルト=フィルスタット
おかしいな・・・
僕の下の順位二人・・・ゲームで見覚え有る名前だった気がするんだよなぁ
特に攻略キャラで・・・
正直楽勝だなこんなのとか思ってました。
だってそうでしょ、小学生のテストを大人が受けるんだものっ、それに元々私は前世で頭が悪いわけじゃないし
例のゲーム内であの二人は常に1位と2位を独占している中で外部のヒロインの名前が二人を抜く所で色々なってた気がする・・・えっこれはどうなるの?ゲームバランス崩してない?
王子であるレオ様を差し置いて下の公爵の僕が1位ということはかなり問題だ・・・ハルト様は親がらみでレオと仲が良い幼なじみとしていつもそばに居るキャラクターなのは覚えていた爵位もおなじ公爵家なので問題は・・多分無かったと思うけど・・・
考え事をしている中
気付くと回りの新入生達が王様に道を譲るようにザザーーっと下がっていた
ボクは気付かずポカーンと見つめていた。
二人の男の子が人が引いた掲示板の前に立とうとしていた。
「えっ!?レオ2位じゃん!!!」
そんな声が聞こえてハッと我にかえる
声の元を見ると燃えるような奇麗な赤い髪と蜂蜜色の髪が視界に入る
赤色の髪の人からはすごいオーラが漂っていた
「・・・ミーシャ=バレットフォルン・・・誰だ・・・コイツは」
「バレットフォルンてあの公爵家の!!えっレオしらないの〜?」
「バレットフォルンくらい知っている」
ぎろりと赤い髪の少年に睨まれてからかっていた蜂蜜色の少年がごめんごめんと反省の無い声で謝っていた。
「気にくわねぇな」
「あっはは〜」
不快そうな声が聞こえて僕はビクリと体を震わせた
バレる前に逃げよう・・・バレれば最後学園生活がパシリ生活にされてしまいそうだ・・・
僕は忍のようにササーーッとその場を後にした。