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僕は過ちを正すため、過去に飛んだ  作者: クロヤギ
一章燃える財閥とあり得べからざる今
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第1章EP07結衣とのひと時の休み時

コツコツと、静かな空間に聞こえる足跡。それは、わかりやすいように近づいてくる。

ゆっくりとゆっくりと、それは着実に来ている。鈍い鎖の音。そして徐々にその音は大きくなっていく、どうやら近づいてきてる人数が増えてきているようだった。


今日も始まるのか。


受け入れた現実を、受け入れたく無かった現実を見るために、暗い部屋から私は顔を出した。


ーーーーー


「はぁ、はぁ、」


その日、全速力でホテルの前の坂を駆け下りる男、西峰隼人は寝起きで溶かしていない髪に荒々しく風を当てるくらい全力であった。

呼吸は荒く、服も決してかっこいいチョイスとは言えない。

完全なる部屋着に安物のコートを羽織り、携帯を握りしめた。

途中で財布を持っていないことに気づき急いで取りに戻ったりもした。危うくサ●エさんみたいになるところであった。


実は今日は、隼人が東山吹雪と接触した翌日。つまり、早希結衣と遊ぶ約束をしていた日なのである。

8時に約束をしていた2人であったが現在の時刻は10時過ぎ。

隼人にしては珍しい寝坊だった。


クネクネとした近道を通りながら結衣との約束の場所へ急ぐ。


大きなビルがたくさんそびえ立つ道の角を曲がると、見えるのはイ●ンモール。

その入り口に、赤いパーカーに地味な緑色のハーベスティ。少し小さめな肩からかけるショルダーバッグをしている女の子が立っていた。


髪は風で揺れ、地面に大量に落ちる桜の上に立つ彼女の姿はまるでこの時期に咲く美しい花。牡丹のようであった。

その姿に一瞬見とれ、隼人は足を止めていたが、我に戻るともう一度走りだし、彼女に話しかける。


「ご、ごめん!寝坊した!」


「あ、大丈夫だよ!!誰かと待ち合わせするの初めてで昨日はずっとドキドキしていたから心の準備が出来たもの!」


2時間遅刻も遅刻した隼人に負い目を感じさせぬよう、笑顔で接してくれた。

なんて優しい子なんだろう。

隼人は彼女、結衣の優しさに涙が出そうだった。


「さ!遊ぼう隼人君!」


結衣はそういうと、隼人の腕を引っ張り、イ●ンの中に引きずった。


ウィーンとドアは開き、2人はゲームコーナの付いている二階へと向かった。


クレーンゲームに太鼓系の何か、音ゲーやカードゲーム、ダンスゲームにメダルゲーム、シューティングゲームまである。


「わぁ、いっぱいあるねぇ」


結衣は目を輝かせながらゲームの方を見ていった。


一度もきたことがないのだろうか?でも、そんな事はあるのだろうか。


「私、初めてきたんだぁ。スーパーとかコンビニとか小鳥遊君とかがいるかもって思うと1人で行けなくて…。かといって一緒に行ってくれる人もいないからさ」


「…」


そ、そんなに辛いのか。


隼人は結衣がこの場所に来たことがない理由を把握しつつ、深く、このいじめの根絶を心に決める。


「だから、西峰君がきてくれて嬉しかったんだぁ。1人じゃなくて安心するからさ。」


「…」


胸が痛む。


現在、胃がキリキリしている隼人は結衣の顔をまともに見れていなかった。

と、空気がとても落ちているのに気づいた結衣が


「あ、ご、ごめんね!今はこんな話するより早くゲームやろ?ほら!あそこにダンスゲームがあるよ!やろ!」


結衣はトテトテと音ゲーのところへ走っていく。隼人も慌てて後を追う。


機械の前に立つと結衣は彼女のバックからゲームの無料チケットを4枚取り出した。

そして、そのうちの一枚を機械の中に入れる。

機械は途端に大きな音を上げテレレーとメニュー画面が現れた。


「うわぁ。いっぱいあるなぁ。何を踊ろうかなぁ?」


結衣は右手の人差し指を口に当て、首をかしげる。


「西峰君はどれがいいと思う?」


と、隼人に話を振る。

隼人は画面を除くと一番最初に目に留まったとあるアイドルグループの歌を指差す。


「おっけ!」


結衣はためらわずその曲を押す。するとすぐに曲の伴奏が流れ始めた。

画面には踊りを踊る対象者用の見本みたいな動く影が現れる。

要するに、その影を真似してダンスをすればいいのだ。


結衣は軽やかなステップを踏み、ほぼ完璧にダンスをこなした。顔は常に笑顔で、華奢な体を精一杯動かし、可愛く又、かっこよく踊っている。

曲のダンスとダンスの合間に画面に【ウィンク】と出ると、結衣もウィンクをする。


やばい。惚れそう。


思わずそう思ってしまうほどに。しかし、隼人は結衣を好きになる資格はまだない。ここはぐっと堪えなくては。

そう、手に力を入れた。


少し汗をかき、結衣は曲を終え、戻ってきた。


「楽しかったぁ」


結衣はそう言って、隼人の隣の席に座る。そして、何やら一枚の紙を隼人に渡した。


「え?無料チケット?」


隼人は首を傾げながら結衣に聞く。


「西峰君もやってきて!」


結衣はそう言うと、隼人を無理やり前に押し出す。


「仕方ないなぁ。チケットありがとう。」


隼人はそう言うと渋々音ゲーのところへ向かう。


男が踊っている姿は皆も知りたくないであろうと思いますので割愛します。

と、しておく。


その後、あんまり高得点を取れずに落ち込んでいる隼人と上機嫌な結衣の2人は彼女がどうしてもやりたかったと言うシューティングゲームのところへ向かった。


2人は小さなシューティングゲーム用のコーナーの中に入り、チケットを2枚入れる。

そして指示通りに用意されていた拳銃を受け取る。


「西峰君!楽しそうだね!」


結衣は意外にもたくましく隼人にそう言った。

これは、しっかりとゲーム内でも戦力になるのだろうか?と淡い期待を思ったのもつかの間。


「きぃやぁぁあ!隼人君!死ぬ!死ぬ!」


「え、どれどれ?!あ、こいつか!うらぁぉ」


バンバンとお互いに超大声を出しながら足手まといをしている結衣を隼人が援護している図となった。


予想通りだと思うがゲームはすぐに負けてしまった。

結衣は少ししょんぼりと肩を落とす。悔しいようだ。


「…」


少し空気がどんよりとしてしまった。

このまま帰るのもなんか辛いので、隼人は自分のバックから財布を出すと2人分の200円をもう一度ゲーム機に入れ直す。


「え、いいよ!西峰君?」


結衣はとんでもなく申し訳なさそうに両手をブンブンと横に振る。


「残念。もういれちゃいましたー」


隼人は悪戯っぽく舌を出していった。


結衣はムーと頰を膨らませながらも、なんだか嬉しそうだった。


そうして始まった2回目シューティングゲーム。

たくさんのゾンビたちが隼人と結衣に向かってせまってくる。

ストーリーとしては、とある大財閥で爆発事件、つまりテロが起きてそこから人々がゾンビ化してしまうウイルスが流れてしまうと言うものだ。言うならばバイ●ハ●ードとストーリーは似ている。


しかし、


ズキッ


静かな痛みが隼人の頭をよぎる。それはストーリーを読んでいる時であった。テロが起きてしまう、というこのワードを聞くたびに頭が痛んでいるようであった。


その時、隼人の視界は真っ暗となった。


何も見えない。暗いその空間が広がっていた。そして、どこかから小さな声が聞こえてきたのだった。


「暑いよ!痛いよ!お父さん!仁君!助けてぇ」


その声とともに現れたのは、スクリーン。そのスクリーンには背景に崩れた建物を写した地獄のような場所に倒れる血だらけの女性だった。どうやら、OLのようだった。


「誰だ、この人」


全く見覚えがなかった。

しかし、一つ気づいたことがあった。その女性の後ろに看板のような物が落ちてあった。おそらく、後ろにある崩れた地で者の看板であると予想される。

その看板には


【東山財閥】と書かれていた。


それを見た瞬間、隼人の頭に急速に古い彼の記憶が蘇っていった。


「そうだ。これが高校一年の時。」


そう、彼が本当の高校一年だった時、東山財閥で爆発事件が起きたのだ。多くの社員を死に追い込み、社長にその子供まで亡くなるという恐ろしい事態となった。


「あ、あぁ。なんで、こんな大事なことを忘れていたんだ!」


隼人はそう自分を責めた。そして、今、彼が最もやらなくてはならないことを理解した。


「こんな遊びをしている暇じゃないな。」


そう、呟いた時。暗かった周りが急速に明るくなっていく。


気がつくと先ほどのシューティングゲームの席で銃を握っていた。


「ん?西峰君どうしたの?ボーとしちゃって。やられちゃうよ?」


結衣は隼人に心配そうにいった。

隼人は結衣の方を向くと言った。


「ごめん早希。俺、超大事な用事を思い出したんだ。だから、今から行かないといけないんだ。」


隼人の言葉に結衣は少しうなだれたように俯いた。


「そっか。」


と、それだけを結衣は呟いた。


「すまん。」


隼人もそれだけ呟き、機械から降りて走り出した。すると後ろから結衣が隼人に向かって叫んだ。


「なら!代わりに今度また遊んでね!」


隼人は結衣の方を向き、


「ああ!絶対に!」


そうして隼人は再び結衣に背を向け走り出した。

件の東山財閥へ。

本日はここまで投稿します!僕の個人的な事情で続きはしばらく出せないかと思いますが、どうかご勘弁下さい!

その代わりに皆さんが楽しめるように、作品のクオリティは上げていきます!

これからもどうか僕の作品をよろしくお願いします!

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