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僕は過ちを正すため、過去に飛んだ  作者: クロヤギ
一章燃える財閥とあり得べからざる今
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第1章EP03逆回転する時計

気がつくと、隼人は見慣れた高校の校庭に立っていた。


「…なんだこれは」


理解しがたい現状を目に焼き付けたのち、自分が高校時代の制服とバックを持っているが分かった。


ああ。なるほど。これは、きっと俺はさっきのやつで死んだんだ。きっと、死ぬ直前の走馬灯の延長みたいなものだろう。


隼人は直感でそう思った。


企業を倒産させた挙句、数え切れないほどの社員を路頭に迷わせ、持ち物は全て売り払われ、自身も食べるもの一つ無くし裏路地に入り浸っていたらホームレスに殺された。


なんて、惨めなのだろうか。


そんな時だった。


「どけよ。財布」


後ろからそんな声とともに背中に強い衝撃を感じた。蹴られたのだ。


「っ…。いってぇな」


隼人はそう行って後ろを向くと数人の生徒が立っていた。

その中心にいた人物は…

背丈は隼人より少し高め、ガタイも良い。少し前に金髪に染めた髪に若干の元の黒も戻りかけたユーチューバーヒ◯ルのような特徴的な髪型。間違えるはずもない。


「小鳥遊…」【たかなし】


思わずその名前を口にしていた。


「あ?なんだそのほうけた面はよぉ。朝から頭がぶっ飛んじまってるのか?」


小鳥遊は小馬鹿にするように笑う。


「おい、財布。今日も一番高額な売店のパンな。忘れんなよ」


そう言って小鳥遊達は校舎の方へ歩いて行った。

そうして


「走馬灯のくせに、いてぇし不快だな畜生。」


と、小鳥遊がいなくなったのを確認してそう呟いた。


実は、なにを隠そう、西峰隼人はいじめにあっていた。

そこまで酷いというものでもなかったが今のように財閥の息子って言うだけでお金をたかる。それが8割だ。

それで、隼人が対抗した時の暴力、それが残りの2割である。

実に気分が悪かった。

一刻も早く走馬灯を終え、迎えが来ることを望む隼人。

しかし、天はそんなに優しいわけでもなく、時は刻々と過ぎ、学校ではチャイムもなる。校庭に隼人がいるのを確認した教師は無理やり教室へと連れて行った。

一度は受けたことがある授業。どんな問題も一瞬でわかってしまう。


「…たく、退屈だ」


問題を解き終えて、机に突っ伏していると、


「え、えーと、これは、えっと…あ、」


「あ、」


わかりやすいくらいに困惑した隣の席の女子と目が合った。


「え、えーと。西峰君?この問題わかるかな…えへへ。わたし、さっぱりで…」


恥ずかしそうに頬を掻く。


「分かるよ。」


「え、ほんとう!?えっと、お、教えてくれないかな?えへへ」


少し頬を緩めて頼んできた。


「うん、いいよ。」


「!?やったぁ!」


女の子は子供のように笑いながら喜んだ。

そのとき、


「…?」


隼人は女の子の机の上に3人分のワークが積み立てられているを見つけた。

そこには一冊は小鳥遊、もう一冊には津田、そして、最後に早希とそれぞれ名前が書いてある。


「えっと、なんで3冊も持っているの?」


隼人はおもむろに尋ねる。


女の子は無言で下を向き、三冊を隠すようなそぶりをした。

そのとき、隼人の目に飛び込んできたのは、首にある大きな火傷の跡。そして、三冊の本を隠すために伸ばした手に見えた無数の切り傷。世間でいうリストカットというものだ。

それはともにとても痛々しく、見ているだけで、心臓がシクシク痛むようだった。


そして、隼人の頭、正確には記憶に大きな矢が刺さったかのように衝撃が走った。

間違いない。この女の子こそ、当時いじめを苦に自殺をした早希結衣だ。


それに気づいた隼人の顔はどんどん青白くなっていく。

何故だかは分からない。なのに、ものすごい罪悪感が背筋の細い道を通り、直接脳に訴えかけるようだった。


「貸せ。」


隼人は三冊のうち、早希本人以外の二冊を衝動的にさっと取り答えをスラスラと記入した。そしてすぐに返し、

「どっちかのを写しな。」とそう言った。


「あ、ありがとうありがとう…」


早希は震える声でそう言った。

よほど嬉しかったのか、目がウルウルしている。たったこれだけのことでここまで喜ぶのは、隼人には理解できない感情だった。

しかし、そんな身近な喜び、当たり前のことでさえ、彼女は知らなかったんだと痛感した。

自分がいかに他人を無視し、自分中心に行動した最低な野郎であったことも同時に理解した。


この時点で隼人はこれが既に走馬灯でないことは分かっていた。

痛みもあれば感情もある。

そして、まるで十字架を背負うような重い重りをつけられたような意図的な感覚に現実味を感じたからだ。

そして、この奇妙な事態。タイムスリップさせてまでおれにさせたかったことも理解した。

だから、隼人はきめた。

この子を守る。何が何でも自殺をさせない。俺の将来のため、彼女のため、そしてなにより、自分への贖罪【しょくざい】のために。


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