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1話 (加筆予定)

 その日、雨が降っていた。

 純白なフルプレートに、腰に添えている十字型の剣。まさしく王国の騎士団の正式装備であった。

 そんな騎士二人にそれぞれの腕を拘束され、足には足枷がはめられていた。

 前にも護衛の騎士がおり、さらにその前にはこれから乗るであろう、全体は黒色で、金の飾り付けが施されている馬車があった。

 無数な驚愕や恐怖の叫びが不協和音のように聞こえてくる。

 いくら雨に打たれても、体についた血の温度や生臭さはもう二度と取れない気がした。


 パシャ、パシャ、と沢山のシャッターが切られる。

 カメラというマジックアイテムによるものだろう。


 「カナタっ!」


 聞きなれた声で自分の名前が呼ばれ、足を止め、白髪の少年、カナタは声の主を見る。

 その目の奥は空っぽで何もないように見えた。


 「なぁ、嘘だよなぁ」

 「クレイ……」


 クレイは訴えるような目で、問いかけた。

 カナタはそれを否定も肯定もせずに俯くだけだった。


 「騎士団に入るんじゃなかったのかよ!精霊教の血縁者でも偉くなれるんだって、みんなを見返して、レセシルを守ってやるって、お前が言ったんだろうが!」


 クレイの激しい怒号を受けても、カナタは特に怒りも泣きもせず、ただボソリと呟いた。


 「誰かを守るためには、代わりに何か大事なものをを捨てるしかないんだよ」


 カナタの言葉が思いのほかに残酷で、冷酷だったらしく、クレイはその場に崩れ落ちた。

 それから、ゆっくりと馬車に乗り込み、牢獄へ運ばれた。




 ☆★☆

 



 ライザー王国。

 周辺の国とも仲はよく、国民は比較的に裕福で、労働力も豊富である。

 まさに安泰の国であった。

 しかし、十年前に当時の国王はサエル教を狂信と呼べるほど、熱心な信徒であり、少しずつ増えていった精霊信仰者を毛嫌いしていた。

 宗教の教えの違いもあり、精霊教はいつしか迫害を受けるようになった。

 迫害を受けた精霊信仰者たちは、国外に亡命したり、隠れ家を作ってそこでひっそり暮らしたりしていた。

 当然、食料や日用品が手に入らず、とても貧困に苦しんだ。

 今の生活に耐えられず窃盗や殺人などの罪に手を染めるものもいた。

 その結果、精霊信仰者は更に軽蔑されるようになり、まさに悪のサイクルであった。


 だが、あくまでも十年前の話である。

 国王が病気で死に、新しい国王が即位してからは、迫害を疑問に思い、迫害をやめるように呼び掛けていった。

 そして、近年。迫害もほとんどなくなり、精霊信仰者たちは普通の生活を取り戻しつつあった。

 まだ精霊教を軽蔑する人間もいたが、新国王の取り締まりにより、危害を加える行為をした人ははほとんど逮捕された。

 

 しかし、新たな波乱が巻き起こっていた。

 それが聖セルメド学園教師惨殺事件であった。

 当時十四歳の少年が学園の薬物学の教師を殺し、自ら罪を自白した事件である。

 動機は、『ムカついたから』であり、しかも容疑者の少年は精霊信仰者の一族の末裔であることから、精霊信仰関連について、騎士団が取り調べを行っている。

 この事件によって、精霊教を軽蔑する人も増え、地域によっては迫害が再発していたところもある。

 だから、精霊信仰者たちもその他の人々も犯人を心から憎んでいたことは間違いないだろう。


 

 そして、年月が流れ、あの『事件』から三年が経った今、罪を背負った英雄の物語が動き出す。


 

 

 ☆★☆




 ルンニア。

 ライザー王国の西の辺境にある小さな集落の名前である。

 ベリデーゼ辺境伯領に属してはいるが、ほとんど外界との交流はなく、自給自足で生活をしていた。

 

 そこから少し離れているところに森があり、ルンニアへ向かっている異色な二人の姿があった。


 片方は身長が180近くある白髪の男性で、歳は17といったところだ。

 黒色でローブを身に着けており、左側の腰にはいかにも高価そうな剣を二振りを下げている、

 ローブのフロントにあるトグルとそれに対するループは灰色に色づけられている。

 

 もう片方は背が低く、小学生中学年のような背丈である。髪は光沢のある綺麗な銀色で、それを自然に流している、ロングヘアーと言われる髪形をしている。

 その髪の上には黒のカチューシャがついていた。

 目は透き通った水色で、あまりに無垢な目をしているから、宝石のような輝きを放っているように思えた。

 服装は、貴族や芸術家が着るような白いワイシャツで、襟を黒い紐でリボン状に閉じている。

 下半身は黒色と紺色と白色の格子模様が入り混じったサスペンダースカートを履いている。


 「この方向をまっすぐ行けば、バルタナの町に出るはずだ」


 色褪せた地図を両手で持ち、白髪の少年は言う。

 

 「カナタ、それ、反対に持ってる」


 銀髪の少女は、感情のあまりこもってない声で、カナタと呼ばれる少年の間違いを指摘する。

 少女の声は無機質だが可憐さをも持ち合わせる、そんな声だった。


 「いや、間違っていないはずだ。ほら、前んとこの爺さんに道を聞いたら、大きな森を抜けた先に、バルタナがあるって、言ってたろ。だから道は間違えてないし、地図も正しく持ってるはずだ。わかったか?レノ」


 微妙に誇らしげな口調でカナタは反論する。

 レノと呼ばれる少女は、この会話に意味を見いだせなかったのか、少しだけ呆れたような顔でカナタから地図を奪い、それから正面に立ち、地図を広げた。


 「ここの方位を表す地図記号、みえる?」

 「ああ」

 

 地図を持つ手から指を一本伸ばし、右上にあるマークを指す。

 

 「カナタが持ち方は、南側が上になる。バルタナは北にあるから、間違い」

 「は、はぁ」


 レノの説明がよくわからなかったのか、困惑の声を漏らす。

 レノはとうとう理解させるのを諦め、持っている地図を丸めて、独りで歩き出した。


 「おい、待てよ」


 カナタは置いてかれないようにレノを追いかけようとしたその時。


 

 

 森の奥から、女性の叫び声が鳴り響く。

 木々は不吉に揺れ、葉が落ちる。

 その悲鳴に反応し、二人とも声が伝わってきた方向に振る返る。

 

 「道に迷っている最中に……全く」

 「でも、行くでしょ?」


 カナタの口元が緩み、二人は目を合わせる。

 それだけで、十分に意思疎通はできた。

 そして、一斉に声の元へ急いだ


 加筆予定です。

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