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原因は俺だった

 数分歩いた所で気配感知にユイナの言った気になる反応が感知範囲に入る。


 これは・・・魔族か。なんでこんなところに?


「ユイナ止まれ」


 腰を落として物陰に隠れる。魔族とはまだ距離があるが、こんな所に来る魔族だ。弱い訳がない。恐らくもう相手に気づかれてる。


「ユイナ。落ち着いて聞け魔族がいる」


「ま、魔族がこんな所に?」


 魔族とドラゴンは絶望的に相性が悪い。何せ魔族はドラゴンの昼寝の邪魔をする一番の敵だからだ。

 魔王を勇者と一緒に討伐するくらいにドラゴンは魔族を嫌っている。


 魔族は魔族で強力な武器の素材になるドラゴンは喉から手が出る程欲しい。それにドラゴンは一枚岩ではない。

 邪龍と呼ばれるドラゴン達は世界の平和を崩そうとする者が多い。


 ここはドラゴンの墓場だ。墓荒らしをするだけで強力な武器の素材がいくらでも手に入る宝の山だ。たが、それがあったとしても魔族がここまで来るのはリスクが高い。

 今代の魔王がよほど強くても龍の怒りを買えば魔族と言う種すら滅びかねない。それほどに龍の怒りは怖い。


 それにおかしいのはこの魔族は気配を消す魔法を使っている。

 感知系の魔法を使わない限りわからない位だ。恐らく龍の墓場のドラゴン達はまだ感知していないか、感知していても襲う気が無さそうなので放置して惰眠を貪っているかの二つだ。


 ま、恐らく後者だろう。


「とりあえず俺だけで魔族に会ってくる。ユイナはマズイと思ったら村まで逃げろ。わかったな?」


 俺の言葉にしっかり頷き返す。


 魔族は人族よりもスペックがかなり上。魔力総量も魔族が人族よりも上だ。外見は人間に近いが特徴的なのは頭の角。

 魔族にも様々な種族がいるが全員が角を生やしている。


 まともに戦って勝てる者は少ないだろう。


 何せ人族が他の種族よりも勝っているのは繁殖力だ。亜人種つまり人間以外の種族は人族よりも何かしら基本スペックが上。他の種族からは人族は劣等種族と思われている。


 それでいて世界の覇権を握れているのは一重にその物量があるからだ。つまり繁殖力だ。


 人数が多い分俺みたいな人族を超えた人間も中にはいる。一例が勇者だろう。


 ユイナを草影において俺だけで堂々と魔族に近付いていく。


「こんな所で何してるんだ?」


 魔族は全身の周囲を隠密魔法の魔方陣を展開することで隠れていた様だが、俺が来たことで魔法を解除して俺から距離をとる。


 もしかしてまだ俺らに気づいてなかったか?


「何故こんな所に人間がいる!?」


 どうやら気づいてなかったみたいだ。予想より弱いかもしれない。


 男の魔族はコウモリの様な翼を生やし、赤い短髪の間から角が生えている。


「それはこっちが聞きたい。墓荒らしをしてドラゴンと戦争でもする気か?」


「貴様に話すと思うのか?」


「なら力ずくで行くぞ」


 俺の言葉に魔族は直ぐに構えをとって殺気を向けてくる。


「人間風情がこのガルバ様に勝てると思うなよ」


 腰に携帯していた剣を抜いて斬りかかってくるが太刀筋が甘い。


 振り下ろされる剣にあえて進み、魔族の手の上から束を掴んで魔族を投げ飛ばす。ついでに剣は没収だ。


「お前こそ墓守りの一族をなめるなよ」


 ガルバに奪った剣を向けてガルバと同程度の殺気を向ける。


 気のコントロールは散々やらされたし、出来なきゃ死ぬ様な場所に送り込まれた。だいたいにしてアクジキの殺気を浴びればガルバの殺気なんて微風にも感じない。


「貴様ラスクードの一族か!」


 まったくこんな危険な森にラスクードの一族以外でこんな身軽な格好で来る馬鹿はいないっての。


 はぁ。馬鹿の相手は疲れる。


「とっとと何しに来たか答えてもらおうか」


 殺気を強める。これで話さないなら強行手段だな。


「わ、我々は龍の墓場の調査にき、来た」


「調査だと?」


「こ、ここ数年龍の墓場に最上位のドラゴンが集まっている。それはまだ良い。だが、強大な魔力反応をいくつも感知した。ドラゴンと敵対する我ら魔族としてはそれを放置することは出来ない。それ故、調査しに来たのだ」


 うん。間違いなく原因は俺だな。それにしてもペラペラ喋ってこいつ大丈夫か?


「【フレイムバーナー】」


 熱線がガルバ目掛けて飛んで来る。


 こいつら味方関係なしか。


 ガルバから奪った剣に水の魔力を纏わせる。魔力を込めすぎて剣が軋んで悲鳴をあげている。


 水の魔力を纏わせた剣で熱線を弾き反らす。弾き反らし終えると剣が魔力に耐えられずに砕け散る。


 なかなか良い剣だと思ったけどこれだけで砕けるとは剣を用意するときはちゃんとしたのを選ばなきゃいけないな。


「味方もろともとは流石魔族だな」


「ふん。ペラペラと話す奴などいらん」


「イーバイ様!!」


 ガルバは周章(シュウショウ)と言った感じで狼狽えているが、イーバイは我関せぬと言った感じだ。


 イーバイと呼ばれた魔族は紫の髪に渦巻く角を生やしている。しかもイケメンだ。

 何より特徴的なのは両腕だ。真っ黒い肌にまるで血管の様な紫の線が浮かび上がっている。


 危険だ。気を付けろと英雄の記憶が訴えてくる。


「調査以外には何しに来た?」


「話すと思っているのか?」


「いや、聞き出すさ」


 何せコイツらが来た理由は完全に俺だ。俺がやらなきゃならないだろう。


 鞘からデスポタを抜き放つ。異常な程に龍の気を放つ龍牙刀デスポタにイーバイが目を開く。

 流石にこの気を感じ取るか。


 イーバイの両腕の紫の線が脈打ち紫電が具現する。


 先程の炎の魔法とは比べ物にならない圧力を感じる。


 互いの殺気が膨れ上がり、闘気が体を満たす。


 タイミングを互いが取るわけでもなく同時に一歩を踏み出す。


「【紫電豪腕(シュランゴウガ)】」


 両腕の紫電が意思を持ったように両腕を埋めつくし紫電のガントレットに変わり、俺の振るうデスポタと打ち合う。


「ガァッ」


 すれ違い様に数合打ち合い振り替えるとイーバイの両腕からは血が流れ、デスポタには傷一つ無い。


 こりゃスゲェ。流石に魔族の魔力強化は打ち破れないと思ってたけど斬り裂いちまったか。

 相変わらず凄い切れ味だ。ドラゴンの牙を使ってるだけあって、刃に細かい刃がノコギリ状に付いているから切れ味が落ちない。まぁ素材が素材だけに強度も凄いので傷付けることも難しい。


 流石、暴君(デスポタ)と付けられるほどだ。


「オォォォ【万雷(トール・バ・サンダー)】!!!」


 イーバイが腕を天高く掲げ、巨大な魔方陣を出現させる。同時に森の上空が急速に暗くなり、雷鳴が轟き、雷が迸る。


 この出来事が一瞬で起こった。


 一際大きな雷鳴が轟いたと同時に無数の雷が雨のように降り始める。


「アァァァァ!!イーバイ様ぁぁぁ!!!」


 太い雷撃がガルバに降り一瞬で黒焦げに焼き尽くす。


 ちっ。殺りやがったか。


 このままじゃ近くにいるユイナも危ない。森が焼かれれば村にも被害が出る。


 仕方ない、か。もう約束を破るよ。


 龍装纏衣(リュウソウテンイ)


 デスポタに魔力を流し、大剣形態に変形。さらに龍の力を発動して力を刃に流す。


 やっぱり出来た!!


 デスポタの刃が黒く染まり、アクジキの気を強く感じる。


 漆黒のドラゴンの翼を生やし天に舞う。


「喰らえデスポタ!!」


 魔法を斬り裂き、黒い雷雲を斬り裂く。


 雲が晴れ、森に再び日が差す。


 俺が森に降りた時にはイーバイは姿を消していた。

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