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遭遇と試し切り

 あぁ気持ちいい。晴天、晴れ晴れだ。自由だ。


 緑、青、世界が色鮮やかだ。


 龍の墓場は瘴気で薄暗く、臭く、魔力が濃い。それにドラゴンの圧力に殺気の重圧。全てから解放された。


 あぁ空気が美味い。深呼吸が止まらない。


「はぁこんなに空気って旨かったんだな。それに世界が広い」


 空を飛んで初めて見える広い、広い世界。


 5歳では味わえなかった解放感。魔力を魔法を扱えるようになったせいか、森のあちこちに魔力を感じる。魔力が多く集まってる所が恐らく住んでいた村だろう。覚えている限り距離的にもそうだ。


 結構近かったんだな。


 谷と村とは目測で10キロ位かな。


 アクジキによればグズー村の本当の目的は龍の墓場の墓守りらしい。こんな辺鄙(ヘンピ)な地に村があったのもたまに騎士が来てたのもこれで納得できる。


 とっとと心を決めて行かなきゃな。


 飛べばひとっ飛び。でも、あぁ体が震える。12年いなかった。


 その間に何があったのかもわからない。もしかしたら村にはもういないかもしれない。


 考えても考えても考えが纏まらない。


 とりあえず歩いて行くか。


 こういう時は当たって砕けろだ。数多くの経験者の記憶と経験がこう言う時は何しても無理と教えてくれる。


 もぉこんな時の先人の知恵だろうが役に立てよ!


「はぁ疲れる」


 とぼとぼと森の中を歩く。


 魔力感知内に反応がある。これは魔力波長的に魔物だ。


 アクジキや他のドラゴンとの戦闘訓練でぶっちゃけ龍の墓場を出て危険地帯での戦闘訓練や潜入訓練をさせられた。過去の記憶がなかったらヤバかった。絶対死んでた。


 その中で体を動かしながら先人の経験や能力を現世の自分に降ろす作業を散々してきた。


 お陰で魔力無しでも気配を感じれる。前世の英雄の剣技の6割りは引き出せる様になった。つくずく反則的だ。


 龍の力を得ずとも覚醒した状態でかなりの力を手に入れれた。予想ではなく、これは確信。それだけこの知識は反則。知識だけでなく経験も一緒に体に宿す。


 少し経験を謎っていけば力を手に入れれる。まぁそれにはその力に見合う体を作らないと知識と経験を知っていても使えない。

 魔力コントロールだって感覚は人それぞれ。いくら賢者の知識があろうと技術が稚拙では直ぐに賢者の力を使うことは出来ない。


 それ相応の修行が必要だが、幸いにも俺には魔法龍リューミィがそばに居た。だからこそここまで龍の力を制御し、魔法も使えるようになった。


 ま、まだまだ使える魔法は少ないんだけどな。リューミィにも詠唱していてはまだまだ魔法使いとは言えないとか言われた。


 何せ龍の力を制御するのが大変で魔法の修行に時間を当てれなかった。あの悪食(バカドラゴン)が制御するには実践あるのみって考えだ。1日最上位ドラゴンと戦えば体力も尽きる。お陰で危機感知能力と身体強化魔法の腕はかなりのもんになったけどな。


 それにしても詠唱くらいいいではないか。前世の記憶でも詠唱が基本だ。リューミィみたいに無詠唱でほいほい魔法使えたら学校はいらない。


「ん?お、これはこれは」


 森の中を走ってこっちに向かって来ていた魔物が目の前に現れる。


 巨大な猪の魔物、イブブーガ。


 かつて俺が谷底に落ちるきっかけを作ってくれた魔物だ。


「これはこれは飛んで火に入る夏の虫とはこの事だな。イブブーガ」


 手土産にして機嫌を取ろう。


「今日は猪鍋だな」


 龍牙刀デスポタを抜く。刀身が70センチ程しかない分森の中でも取り回ししやすい。


 殺気も闘気も一切発せず、心は湖面の様に揺れず無心だ。


 自分を追い詰めた相手にここまで動揺も見せずに落ち着けるとは自分で自分を誉めたい。


 イブブーガはデスポタを抜いた所から落ち着きが無いように感じる。俺が一匹のドラゴンと感じた様にイブブーガもこのデスポタの異様さに気づいたのかもしれない。そういう些細な事には野生は異様に敏感だ。


 動揺も見せず、異様な圧力を放つ剣を持っている者が目の前に立っていれば落ち着きも無くなるか。圧倒的強者を目の前に逃げ出さないだけ凄いと誉めた方が良いかもしれない。


 それにしても良いタイミングで現れてくれた。デスポタの試し切りにちょうど良い肉の塊だ。むしろもう頭には猪鍋のことしかない。


 前世の記憶でもここまでの圧力を放つ剣は早々ない。かなりの業物。ドワーフも崇める工房龍グライが最上位ドラゴンの素材で打った剣だなまくらな訳がない。


 魔剣と呼ばれても不思議ではない。まだ試し切りもしていないが、そこら辺の魔剣は絶対に凌駕する。そう確信できる。


 イブブーガ相手なら刀身を変形させて大剣サイズに変える必要ない。構えば無形の位。剣を持ったまま腕を下にダラリと脱力して下げる。どんな動きにも反応できる千変万化の構えだ。


 緊張が走る。数多くの魔物と戦わされ、勿論イブブーガよりも格上を屠って美味しくいただいてきた。


 気圧されているイブブーガから動くことはまずない。魔物も動物も強者と別れば本能的に逃走を選ぶ。こりゃ自分から動くしかないか。


 膝を落として姿勢を前傾に倒す。イブブーガも何かを悟ったのか後ろ足で地面を何度も蹴っている。


 イブブーガに向かって走り始める。俺の動きが合図になりイブブーガも突進を始める。初動が早く直ぐにトップスピードにもっていくのは流石イブブーガだ。


 イブブーガとぶつかる瞬間左に飛び、躱し際に右手に持ったデスポタでイブブーガの喉元を撫でる様に振る。


「え、おい」


 柔らかい物を切った時の様にイブブーガの喉に刃が通り、首を半分斬り落とす。


 イブブーガは首を半分斬られたことで大量の血を流して地面に倒れる。血抜きしないで済むな。


 それにしても驚異的な切れ味だ。斬った感触すら感じなかったぞ。むしろ水の中の方が抵抗を感じるかもしれない。それほどの切れ味。


「嘘みたいな切れ味だな。こりゃぁもう一本剣を用意しないといけないかもな」


 下手に目利き出来る奴に見られたらヤバいかもしれない。流石最上位ドラゴンの素材と言ったところか、それとも工房龍グライの驚異な鍛冶技術を誉めるべきか。いや、両方だな。


 試しに大剣に変形させて近くの大木に剣を振り下ろす。


 わかってはいたけど大木じゃイブブーガの強度よりも劣る。そんなのを試しに斬っても何にもならないとは思ったけど、やっぱり抵抗もなく斬り倒せた。


 スゲェ。スゲェしか言葉がでないほどスゲェ。てかスゲェしか当てはめれない。


 剣としてここまでの性能を持った剣には中々巡り会えない。剣士冥利に尽きる。ま、まだ剣士って言える実績はないけどな。


 それに年齢は17だけど10年は寝てたから人生7年生きた位だ。ぶっちゃけ記憶があるのは3歳からの2年と修行していた2年の4年程。ここまで人格を保ってられるのも前世の記憶のお陰が大きい。過去の偉人に感謝だ。


 人生ここからだ。リューミィも言っていたけど半分以上龍の体になった以上人生も恐らく長い。人の身を超えるだろう。

 楽観的にいかなきゃ気も狂うってもんだ。


 イブブーガをリューミィとグライ合作のウエストポーチ型のアイテムバックに入れる。

 これは次元魔法が施されており、ウエストポーチの中はかなりの広さに拡張されている。それにウエストポーチより大きい物を入れる時には入り口が広がってさらには吸い込んでくれる。

 取り出すときは使用者の意思を読み取ってくれて自動排出までしてくれる優れ物。さらになんと中に入れた物の時が止まるので劣化もしないときた超便利バックだ。

 防犯も俺以外は俺が許可した者しか使えないようになっている。


 まったく便利道具を用意してくれたもんだ。


 まだまだ魔法の扱いが甘いから次元魔法なんて超高等魔法は使えない。前世の英雄時代ですら次元魔法はほいほい使えるもんでもなかった。賢者時代でようやくって感じだ。


 まぁダンジョンに潜って素材を集めて作れないこともない。過去の記憶では全員がアイテムバックを持ってはいたが、防犯はずさんだし、勿論時も止まらない。拡張空間の大きさもまちまちで品質に差がかなりあった。


 このウエストポーチ程の大きさでこれほどの機能を搭載した物ははっきり言って前世でも見たことがない。


 ますます旅が楽しくなる逸品だ。


 前世で成し遂げれなかったダンジョン踏破ってのも夢じゃないかもしれない。ワクワクが止まらないぜ。


 まずは難敵母さんだ。ここを攻略しなきゃ話が始まらない。


 勇気を振り絞れクレイ!!

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