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瘴穴ダンジョン2層 熱帯林

 2層攻略中。


 予想外に雑魚魔物しか出てこない。ささっと倒して魔石を回収。たまにドロップアイテムが出てくるがあまり良いのは出てこない。


 出てきたドロップアイテムはコウモリの骨や狼の魔物の牙や爪等なのであまり使い道がない。


 薬の材料になるものもあるがとりあえず今は放置。雑魚魔物はドロップアイテムより魔石の方が金になる。魔石は需要が高いので買い取り価格が安定しているのだ。くわえて魔物のドロップアイテムは薬師や鍛冶師やコレクターが買い求める事が多いため、需要がある時に持ち込まないと中々高値で売れない。


風道の行方(シルフ・ミルバード)】での探索でサクサク攻略中だ。分かれ道に何度かあたったが、風が先導してくれるので行き止まりも直ぐにわかる。


 風がこの先が広い部屋に繋がってることを教えてくれる。


 空気が変わる。湿度が高く空気が重い。


「こりゃまた」


 フロアに入ると広大なフロアに熱帯林が広がっている。


 また一つダンジョンが厄介になるな。高温高湿度の環境はそれだけで体力を奪う。それにこう言う環境にいる魔物は厄介なのが多い。


 俺の場合、龍の血のお陰で環境対応もバッチリだ。全く便利な体になった。火山帯や氷雪地帯等の超過酷な環境でもないと適応に時間がかからない。


 こう言う場所だと【風道の行方(シルフ・ミルバード)】は役に立たない。道の沿って風を流して探索する魔法なので、広いフロアや広範囲探知には向かない。それに元々探索に使う魔法なので探知魔法に比べると索敵能力があまい。


 こう言う場所ならユイナの使った【ヒートサーチ】の方が感知しやすい。あの魔法は熱を探知する魔法。地形の把握には向かないが、人や動物、魔物は感知しやすい。魔法式を弄れば魔物だけを感知なんてことも出来る。


 俺がここで使うのは【風精霊の導き(シルフ・フラール)

風道の行方(シルフ・ミルバード)】の上位魔法。【風道の行方(シルフ・ミルバード)】と違って【風精霊の導き(シルフ・フラール)】は超広範囲感知・探索魔法。発動に精密な魔力操作技術にかなりの魔力量が必要だ。なにより発動後にやってくる情報量の多さを受け入れる脳の情報処理能力が必要だ。耐えきれない場合は最悪廃人になる可能性すらある危険な魔法だ。

 本当なら軍所属の魔法使い10人以上が役割を分担しながら使う軍用魔法なのだ。


 だが俺の情報処理能力は人間の枠に収まらない。


 魔法発動に対するリスクを克服出来ればハイリターンな魔法だ。

 その探索範囲は魔力量にもよるが直径5キロの範囲を網羅する。さらに感知能力は【ヒートサーチ】以上。熱感知では感知しにくい変温動物も簡単に感知する。

 魔物の中には完璧に姿を周りと同化させ、体温も外気と同じ、臭いも無くする厄介な魔物もいるが、そんな魔物も風の流れまではいなせないので感知出来る。何人も風の流れは誤魔化せないのだ。


「これはまた広いフロアだな」


風精霊の導き(シルフ・フラール)】を発動したがフロアが広すぎて把握しきれない。


 森の中には猿や蛇の魔物や厄介なカメレオンタイプの魔物までいる。何より猿の魔物がいるせいで落とし穴等の罠が沢山設置してある。


風精霊の導き(シルフ・フラール)】を変質させて探索範囲の風を操る事も可能なので、風を操って罠を破壊する事も出来るが、それをすると流石に魔力消費が多過ぎるのでやらない。

 敵と戦わずに精神統一した中であれば魔力消費を抑えながら出来なくもないが疲れるのでダンジョン内では却下だ。


 とりあえず罠は近くに行ったら魔法で破壊するのが一番効率がいいか。それよりも問題はフロアの広さだ。2層に入って格段に広さが変わった。これはダンジョンなら良くあることだが、瘴穴だとかなり珍しい。

 まぁこのダンジョンはイレギュラーみたいな感じだから今更か。


 探索を再開する。森の中を駆け抜ける。


 サラ姫達が後を追ってきても罠に掛からないように見付けにくい罠を重点的に潰していく。そうすると必然的に敵も引き付けられる。


「「キキ!キキー!!」」


 数十体の猿の魔物。ズーモントモンキーが襲い掛かってくる。80~120位の体長で俊敏で力も強い。ゴブリンだったら一捻りに出来るほど怪力だ。知能はゴブリン以上。仲間意識が強く連携した動きで襲い掛かってくる。それになんと言っても罠の設置だ。簡単な罠から大掛かりな罠。魔物を誘導して冒険者を襲わせる等絡めても得意な魔物。


 木々からズーモントモンキーが次々に顔を出す。手には木の槍や弓矢を持っている者すらいる。


 また厄介な奴らに出くわしてしまった。コイツら力の強さ以外が強いから面倒だ。

 前なんて不用意に追い掛けて落とし穴に落とされた。そこにワーム系の魔物が来たものだからパニックだ。身の危険よりも気持ち悪さで体から炎を出して一瞬で滅却してやった。


 一斉にズーモントモンキーの投石が始まる。


 一つ一つが当たればかなりのダメージを負う。身体強化を覚えてなければ致命傷もあり得る。

 群れで緩急をつけながら投げられる石は当たらなくてもイラつかせる。


風盾(バラムダウン)


 風の魔法を使い、突風の盾が投石の軌道をずらす。これだけで投石は簡単に防げる。

【風盾】に込める魔力を強め、風の方向をズーモントモンキーに変えて投げてきた投石を風で押し返してやる。押し返した石が何個かズーモントモンキーに当たるがあまり効果はない。

 ダメージ効果は無いがかなりの挑発にはなる。

 予想通りに顔を赤くしながらズーモントモンキー達が雄叫びを上げて飛びかかってくる。


 飛び掛かってきたズーモントモンキーに剣を振り、切り落とす。


 身体強化と同時に剣にも魔力を通わせているため、そこそこの剣が名刀並の切れ味になり、強度もかなり増す。

 少し乱暴に振るっても特に問題なくズーモントモンキーを切り捨てられる。


 頭に血が登った敵ほど戦いやすいものはない。動きが単調になり思考が狭まる。


 後は俺の体力の続く限りズーモントモンキーを切り捨てるだけだ。


 数分でズーモントモンキーの群れを殲滅した。


 だいぶ時間を取られた。ズーモントモンキーの群れを殲滅してもまだまだ体力は有り余ってる。まだかなり余裕がある。

 久しぶりのダンジョン攻略の出だしにしてはまずまず。


 それにしても2層で熱帯林とズーモントモンキーが出てくるか。熱帯林はダンジョンの中でも10層以降に出てくるエリアだしズーモントモンキーは熱帯林のエリアでも中の上。微妙な強さだが上層には出ない魔物なんだが。


 サラ姫達は絶対に後を追ってくるだろう。ベアトリスは俺の意図を理解してあえて安全と思われる道に進んだみたいだから、恐らく合流を待たずにこっちに向かってくるはず。


 追ってくるならズーモントモンキーみたいな面倒な魔物は先に倒しておいた方が良い。

 サラ姫は臣に熱い。民に慕われる貴族だ。臣下にあそこまで言わせるのは日頃から民と共にあるからだろう。


 過去の記憶でもそんな貴族は珍しい。この時代の貴族も昔と変わらなければ、懐を肥やすことしか考えていない貴族が多いはず。民をゴミとしか見ていない者も多いだろう。

 サラ姫は苦労してでも護る意義がある人物だ。それに恩を売っておけば何かと今後役立つかもしれない。


 ダンジョン攻略を再開する。


 熱帯林だけあって木々が鬱蒼としている。環境対応出来てはいるが、あまり好きにはなれない。高温多湿は過ごしにくいし、攻略のやる気も落ちる。

 気持ちの下がったところにカメレオンタイプの魔物。ニューバンの舌が伸びてくるが剣で切り落とす。しっかり【風精霊の導き(シルフ・フラール)】で補足済みだ。


 ニューバンが声を上げるが、気にせずに距離を詰めて首を切り落とす。直ぐにニューバンは霧散する。


「瘴穴にしては良い魔石だ」


 時を経たダンジョンの方が純度の高い魔石をドロップする。瘴穴は魔物の強さの割りに魔石の純度が低く、屑魔石がドロップする率が高いのだ。

 それでも下位の魔物のドロップアイテムよりは屑魔石の方が買い取りは良い。小さな爪や牙をいくら集めても金になら無いのだ。それでも駆け出しの冒険者にとっては良い小遣い稼ぎにはなるのだが。


 ☆


 私達は突き当たりまで探索すると集合場所へ向かった。でもベアトリスの言うとおりクレイさんは集合場所には来なかった。

 仕方なくクレイさんを追うことを決めて探索を開始する。


 まったくクレイさんは何を考えてるのかしら。いくら強いと言ってもダンジョンを一人で攻略なんて無謀。いえ、愚の骨頂です。


「もう邪魔しないでください」


 コウモリの魔物を数体を一瞬で細切れに切り刻む。


「姫さん。そんなイラつかなくても追い付けますよ」


「そうですか?」


「こっちはパーティーですからね。確かに単独よりは探索スピードは落ちますが、敵と相対した時の突破スピードは上なはずです。それにクレイが露払いをしてくれてるみたいですからね。ちゃちゃっと追い付いてやりましょう」


 ほどなくして私達は2層に到達する。


 見渡す限りの森。高温多湿の熱帯林が広がっている。ダンジョン探索をする上では仕方がないこの地形の変化。

 ですが瘴穴ダンジョンは基本洞窟ダンジョン。初めの入り口が洞窟にら最後まで洞窟。それが瘴穴なのですが、これは想定していませんでした。


 それにしてもここまでに見たドロップアイテムの数は凄いの一言。百にもおよぶ数の魔物のドロップアイテムが道に落ちていた。クレイさんの強さを見くびっていたかもしれません。


 熱帯林だけあって歩いているだけでじわじわと汗が滲んでくる。女性だけのパーティーでも淑女としては少し恥ずかしい。

 でもそんな事を言っている場合じゃない。一刻も早く瘴穴は閉じなくてはならない。それが民の安全。強いては国益にも関わってきます。


「これは凄いですね。クレイは私達が追ってくることを見込んで罠の破壊までしながら進んでるな」


 何かで破壊された罠の跡。周囲にはドロップアイテムの山。

 ドロップアイテムは必ず出てくる物ではない。数体に1個。そのドロップアイテムが辺り一面に転がっている。どれ程の魔物を相手にしたらこうなるのか。


 これを単独でこなしている事には恐怖すら芽生える。


 これは益々急がないと追い付けないかもしれませんね。そう思った瞬間遠くで爆発音が響き、大きな爆炎があがる。

 間違いない。クレイさんはあそこにいる。


「ベアトリス」


「姫さん急ぎましょう」


 パーティー全員が身体強化を施し、さらに進行スピードを上げて熱帯林を駆け抜ける。


 待っていてくださいクレイさん。今行きます。

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