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出発、始めの町タスタス

 目指すはダンジョンの街『カルナック』


 カルナックでまずは資金集めと魔族の情報収集だ。


 俺の生い立ちが特殊なので巡回の騎士には龍の墓場に魔族が監視に来ていたことだけを伝えるらしい。


 俺の生い立ちを話したら国のお偉方に捕まって戦争の兵器として扱われるだろうとのことだった。


 実際にラスクード一族の中でも力の強い者は国の騎士団上層部に召し抱えられていたりするし、王直属の騎士にもラスクード一族の者が多いらしい。


 やろうと思えばうちの村の人だけで国家転覆もできんじゃないか?ハハハ。

 まっドラゴンの近くにいたせいなのかうちの村の人は面倒臭がりが多いし、楽して金稼げれば万歳って方針の人が大半だ。


 国の上層部に黙っているのは村やラスクード一族の者達を守るためである。


 他国からも自国からも力を狙われているので自国くらい裏から牛耳ることで色んな危険を払っている。


 母さんの場合は村に帰る前に「手を出したらわかってんな?」って自国と近隣の国の王の寝床でナイフ一本持って脅してきたらしい。


「忍び込むのも簡単だったぜ!それにあの王達のビビった顔!思い出しただけで笑いが止まらないよ!!」って酔いながら話してたのを思い出す。母さんの恐さに鳥肌が立つ。


 ラムカイン王国も昔と違ってだいぶ変わってきている。ラスクードの時代ならば人の驚異よりも魔物の驚異の方が被害が多かった。


 今や人間同士や種族間での戦争が絶えない。龍の力を使えるなんて知られれば直ぐに召し抱えられるのがおちだ。


 裏に母さんがいると知ったらビビって逃げそうな気もするけどな。てか俺なら逃げる。


 とりあえず母さんに頼らなくても良いように冒険者としてランクを上げ、味方を増やし、権力を得る。これが当面の目標だ。


 じゃないと身の危険だけに構っていたら魔族とは殺りあえない。


 冒険者ギルドは各国の支援は受けているがどの国にも属していない。当然危機があれば国と協力して魔物や犯罪者を討つが、ギルドとしては戦争には参加しない。


 冒険者ギルドと国はそう言う取り決めをしている。


 なので国の誘いが五月蝿ければギルドのお偉方の力を借りることも出来るみたいだけど、それは高ランク冒険者に限ってだ。

 ギルドもごまんといる低ランク冒険者の面倒は見てられない。


 カルナックは飛んで行ったとしても2、3日はかかる程遠い。馬車だと一ヶ月以上は掛かる。


 それに飛ぶのは良いが見られれば何者かと疑われる。そんな面倒なことをしてるほど暇でもない。いや、隙だけど面倒事は勘弁だ。


 なので馬車に乗せてもらうか定期便の馬車に乗せてもらいたい。ほのぼの行きたいのだ人生長いのだ。


 それにしても旅立ちの時のユイナの号泣には手を焼いた。旅立ちは父さんと母さんにしか話してなかったから当然と言えば当然だが、あれほど泣かれるとは思わなかった。


 なんなら付いてきそうな程の勢いだったけど、森を抜けるまでは空を飛んでいく事を話したら渋々了承していた。

 

 何せ森を抜けるだけで3日は掛かるからな。それに自分を抱えながらだと大変だとでも考えてくれたんだろ。


 でも妹くらい抱えながら飛ぶのなんて簡単だけどそこは秘密だ。


「お、ようやく町が見えたな」


 直線距離で飛べば森近くの町までは直ぐだ。初めて森を出ての街だ。母さんから当面の資金を貰ってるのでとりあえず町でカインケル行きの馬車を探そう。


 近くの林に見つからないように降りて町の門に近付いていく。


 デスポタはアイテムバックに入れてある。見る人が見れば超高級装備だ。出所を聞かれても困る。


 装備も何もないと怪しまれるのでナイフを腰に差してあるが心許ない。


 まっ大抵の攻撃なら身体強化で返り討ちなので武器は飾りにしかならないが雑魚相手には使えるので見せかけでも購入しておきたい。


「止まれ身分証はあるか」


 町の衛兵に呼び止められる。この町の名はタスタス。龍墓の森アルバーの手前にある最後の町。騎士も逗留するのでそこそこ良い宿もあるし、町の中に騎士団が常駐している。


「グズー村の人でしたかどうぞお通りください」


 グズー村住人である証明書を渡すと態度が軟化する。

 グズー村の住人は国から税金や通行量など様々な面で優遇されている。何せドラゴンのいる墓場の守り人なのだ。

 ここが荒らされれば龍の怒りを買う。それを代々防いできている。これくらいは当たり前だ。


「すいません町の中の武具屋とカルナックへの定期便の場所を知りたいのですが」


「それでしたらここをーーー」


 地図を広げながら説明してくれるなんて親切な衛兵さんだった。お陰で迷わなくてすみそうだ。

 龍の体が7割になって、ラスクードの力に目覚めてから脳処理能力が上がったのか記憶能力がかなり上がってるせいで見せてもらった地図もバッチリ頭に入ってる。ドラゴンとラスクード様様だ。


 タスタス町は常駐している騎士団が町の半分以上を使っている。そのため住民も半分以上が騎士団関係者だ。

 残りの住民もタスタスを町として機能させるために移り住んできた人達らしい。


 龍墓の森アルバーの最終防衛として騎士団がいるので基本的に冒険者も来るわけでもないので武具屋は1軒しかないらしい。


 カランカランと鐘の乾いた音を立てて武具屋に入る。タスタス町には1軒しかないのでお店に名前もないみたいだ。

 中には剣や槍、斧と一緒に(クワ)や包丁等の家庭用調理器具も置いてある。むしろ鍋とかお玉とか鉄製のボウルの方が多いくらいだ。


「いらっしゃい何をお求めで?」


 奥から店主と思われる男性が出てくる。頭にタオルを巻いて、顔は煤で汚れている。職人気質な漢字を思わせる。


「剣と革鎧で良いのがあれば買いたいんだけど何かあります?」


「ならこれなんてどうだい?」


 1メートル程のロングソードだ。重過ぎず軽過ぎない。


「軍用のロングソードだ。量産物だが悪くないだろ?あいにくうちでは一から剣は売ってなくてね。うちではこれが一番だ。あと革鎧か・・・なら」


 店主が奥から茶色い革鎧を持ってくる。


「これは魔牛ウードンの革を鞣した物だ。防刃性は保証するが魔法体制は低い。次の町まではこれでも持つだろう」


「有難うございます。ではそれでお願いします。ついでに剣と防具の手入れが出来る道具もお願いします」


「あいよ」


 パパっと店主が用意したものをアイテムバックに入れる。防具と剣は装備済みだ。冒険者らしくなってきた。


 後は適当に食料の買い出しと馬車乗り場の確認だな。


 騎士団の若者が多いせいか肉のガッツリ系の屋台が多い。肉系とパンと買える分を買ってアイテムバックに保管だ。保管していても腐らないところが便利だ。


「すみませんカルナック行きの馬車はこれですか?」


「そうだぞ。もう少しで出発するからお代を払って乗りな」


 一人分の代金を払い。馬車に乗る。カルナックは後一つ町を経由する。次の町で御者の交代と降りる人は降りていくらしい。


 街道も騎士団が定期的に魔物を狩ってはいるが魔物が出るらしく、冒険者の護衛が馬車に付いている。

 馬車は3台からなるキャラバンだ。


 次の町までは早くて1週間。


 魔物や野盗が出ればそれだけ遅れるそうだ。なので倍の2週間を目安に移動日数を考えておいた方が良いらしい。


 馬車の中はそれほど広くなく、全員が座れるスペースがあるのみだ。


 乗車している人も馬車の半分にも満たず、全員がタスタスから次の町チストまでの移動だそうだ。


 護衛の冒険者の方がカルナックに戻るまでの護衛任務らしいので護衛の人の方が長い付き合いになりそうだ。

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