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悪ガキ目覚める

  僕の名前はクレイ。性はない。歳は5歳。


  辺境の村グズーに住んでる。父はザンガ、母はイーラ。

  狩人の父と元冒険者の母の元家族3人で暮らしている平凡な恐妻家の家庭だ。


「そっち行ったぞクレイ」


「わかってる。ミック追い立てろ」


「わかってるよ!」


 クレイ、ミック、アカスの悪ガキ3人組み。


 僕達はお世辞にも良い子とは言えない。悪戯を日々楽しむ純粋無垢な少年達だ。狩人の父と元冒険者の母の教えを受けている僕は仲間のミックとアカスと一緒に森に入り狩人や冒険者の真似事をして日々探検を繰り返していた。


 そして今日も3人で森を探検している。狙いは小鹿。


 森を縦横無尽に走り回る小悪魔だ。前は猪をけしかけられ酷い目にあわされた。


 今日こそは小鹿を狩ってみせる。そう意気込んで3人で森に入った。


 アカスとミックが左右から追い立てる。日々森を走り回り、村の屈強な男達と鬼ババァに追いかけ回されて鍛えた脚力は伊達じゃない。小鹿に迫る勢いだが、まだ歳は5歳。追いかけることは出来ても追い付くことは出来ない。


 なので小石を投擲して小鹿の行方を操作する。行方を操作するのはかなり難しい。大人でも大変だ。だけど森の中は迷路のように要り組んでいる。その地形を利用する。


 え、何で出来るかって?


 そりゃ元冒険者の母さんによくやられて捕まっては3人仲良く拳骨をくらっているからしっかり体で覚えているからさ。

 体で覚えたことは実践に移すのは簡単だ。なんせ毎日追いかけ回されてるから嫌でも覚えるし、嫌でも出来るようになるってもんだ。


 小石や小枝、地形を利用して3人で小鹿を追い立て、ようやく崖っぷちに追い詰めた。


 小鹿は逃げ場を失い、こちらの様子を伺っている。


 このままじゃダメだと思ったのか小鹿が間をすり抜けようと走り出す。アカスとミックが同時に捕まえようと飛びかかり、同時に小石を投げる。


 5歳児の割りに早く投げられた小石が小鹿を土手の隙間に誘導する。


 小鹿が誘導された隙間に僕は飛び込む。


 小鹿が僕に気づいてギョッとしたのか動きが一瞬止まる。動きが止まったお陰で僕のジャンプでも追い付くことができ、小鹿の首にナイフを突き刺し動脈を断ち切る。


 我ながら改心の一撃だ。


 小鹿は悲鳴を上げて事切れる。


 勝利である。


「やったなクレイ!!」


「最後のは上手かったよ!」


 ミックとアカスが喜びの声を上げてこっちにやってくる。上手く仕留めたが、こっちは血だらけになってしまったのでちょっと臭い。


「ようやく借りを返せたな!」


 この小鹿じゃないかもしれない。でも前に酷い目にあわされた仕返しが出来て気持ちが晴れ渡る思いだ。


 移動しやすいように仕留めた小鹿の足を紐で結び、村に移動しようとしたその時動物の鳴き声が辺りに響く。


「な、なんだ」


 アカスが怯えた様子で周りをキョロキョロ見ている。


 血の臭いに誘われて魔物が近くに来ているのかもしれない。母さんや父さん達狩人が村の周りの魔物や動物を定期的に間引いているとは言え、全てを狩れている訳じゃない。


 そのせいである程度の強さを身に付けないと村の外にでるのを禁止されてる。毎回拳骨が降ってくるのもこのせいだ。


 それにここは辺境の村グズー。


 商人も滅多に訪れない。訪れるとしたら何故かたまに甲冑に身を包んだ兵士だけ。辺境の村なので兵士も商隊も来ないので魔物が普通の村の倍以上いるらしいし、魔物も他より強いらしい。

 全部聞いた話なのでよくわからないけどそうらしい。


「アカス大丈夫か?」


「な、なんか嫌な気配がする」


 アカスは3人の中で一番気配に敏感。お陰で母さんからも逃げれる。まぁ結局捕まるけどな。


「早く戻ろう」


 小鹿を3人で引きずって移動しようとしたその時、木の影からそいつが顔を出した。


 魔物、イブブーガ。


 猪を2回り大きくし、より鋭利な牙を生やし、強靭な肉体を持つ。何人も止めることの出来ない猪突猛進の魔物。


「グルァァァァァ!!!!」


 威嚇、魔力、殺気、食い気。獣の本能丸出しの咆哮。


 5歳児が受け止めるには強烈過ぎる。


 動きが止まり、目が離せない。強烈な殺意に息が止まる。汗すら止まり、肌が、喉が渇く。


 イブブーガが一歩、また一歩と踏み出す度に圧力が増す。


 圧倒的な強者による行進はただの暴力。


 首を締める圧力が増し、息が止まる。


 アカスとミックは今にも泡を吹いて気絶しそうだ。僕が二人をけしかけここまで来た。なら二人を守るのは僕の役目だ。


 意識を強く持ち、イブブーガの圧に抗う。


 だが、圧に逆らえば逆らうほど首が締まる。


 数秒の時間が伸び何時間にも感じ始める。


 すると僕の中の何かが弾ける。


 弾けた何かは僕の体を包み込む。全身が包み込まれると、濃密な液体の中にでも入っているかの様に感じさせ、暖かさすら感じさせる。


 その何かの影響か、全身に力がみなぎり、高揚感が感覚を麻痺させる。


 今なら何でも出来る気になってくる。せれこそ目の前の魔物イブブーガがすら打倒出来る気にすらさせる。


「アカス!ミック!逃げろ!!!」


 声すらも強化されたのか大きな声が衝撃と僕の意思をアカスとミックに伝える。

 僕の声が気付けとなってアカスとミックが正気を取り戻す。


「クレイ!」


「いいから逃げろ!!!」


 アカスとミックが森を走り始める。


 イブブーガがは二人にはお構いなしといった感じで僕を睨み続けている。

 驚異になるのは僕ただ一人だと感じたのだろう。


 殺気を向けられているのも僕ただ一人に対してだ。


 お陰でアカスとミックが逃げることに成功した。


 勝負はこれから。この全能感のまま戦うか、この場から逃げるか。

 森の中は知り尽くしているとは限らない。森の中はイブブーガの方が1枚以上上手だ。それにイブブーガの突進力は森の木々をなんなく薙ぎ倒す。


 今力に目覚めたからと言って5歳児が魔物から逃げ切れる別けない。


 なら出来ることはただ1つ。


 戦う。


 死地に活路を見出だすのみ。


「行くぞイブブーガ」


 自然と拳を握り構えをとり覚悟を決める。


 僕はやる。


 勝って生き残る。

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