神世(いにしえ)の欠片~神の戯曲を聴きましょう~
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創世を終えた大神が、大翼を広げて次元の彼方へ旅立たれた後の世は。子たる七神により世界は保たれる。
月は闇姫神の化身。夜空の星々は闇姫神の集めた世界の記憶の欠片たち。沢山の記憶を集めて天に帰す魂もまた、そのひとつ。夜空の上で、記憶を闇姫神に捧じた魂は、流星に乗せられて 再び大地へ降り、新たな生を賜る。廻る命を見守る静寂を好む女神。
太陽は光貴神の化身。全てを照らし、命育む強き輝き。あまりにもいつも眩しいから、大地を見守る天貴神と大空で喧嘩して 時々 隠されてしまうのはご愛敬。全てを愛する博愛の男神。
大地を包む大空は天貴神の気分で色を変える。時に晴れ渡り、時に陰っては生きとし生けるものたちを翻弄する。色鮮やかな朝焼け、夕焼けで愛しき地姫神に おはよう と おやすみ を贈る一途な男神。
大空に見守られる大地は 地姫神の遊び場で、全ての命の揺りかご。ありとあらゆる動植物の生き死にに一喜一憂し、その全てを愛し抱く慈愛の女神。
自由奔放な風は世界を巡る。時に歌声や噂を運び、時にそっと我らの髪を撫でて。しかし、一度 荒ぶれば 木々を薙ぎ倒し、雪雨を暴れさせる お転婆女神。
風姫神の双子神、水姫神もお転婆女神。流れる水は多くを押し流し、時に命さえも浚ってゆく。しかし、その寛容は全てを受け入れ、求めるもの全てを潤す命の元。
気難しいのは炎の末っ子、触れるものを焼き、激しく揺らめいて侵略する。けれど、気を抜けば飲み込まんと荒ぶりながら 凍えるものを暖め、闇に迷うものを照らす一面も持つ 心優しき火貴神。
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流石、高等科の演舞である。歌舞や演奏、演出に使われる魔法のレベルが段違いである。大迫力だ。
黒い生地に星のようにキラキラした何か(小さくてよく見えない)を縫い付けた細身のドレスを纏い、黒いヴェールと銀のティアラや三日月をモチーフにした装飾品を身に着けた闇の化身が、長い引き裾を揺らめかせて しっとりと夜の世界を唄いながら緩やかに舞う。そんな チャスタル役の女の子の独演から始まり。
白い生地に 金銀の刺繍を施された裾の長い前合わせの服に革帯を巻き、細い下衣と膝下の長靴を履いて、きらびやかな長剣を携えた シャプシル役の男の子が現れて、チャスタルの手をとり 朗々と光輝く愛を歌い、ひた向きな想いと情熱によって 貞淑にして孤高なる女神を口説き落とした。
その後、少し不機嫌そうな様子で現れたウリアノスは細身の長身で、シャプシルと似た形の薄青を基調とした服を纏い、手には槍よりも刃の形が複雑な戟という長柄の武器を持っていた。シャプシルと刃を交えて後退させた後に 涼やかな声音で包み込む様な愛を唄い、舞台の端へ手招きをする。
楚ヶとした風情で現れたケレイリスはチャスタルとは逆で、頭には花冠を乗せ 袖やスカートに生地を多めに使った ふわりとした出で立ちだ。色味の違う緑色を重ねて、動物や実りを象った装飾品を身につけている。神話より大人しそうな印象を受けたけれど、彼女は弾むように舞い始めると ぱっと笑顔になり、軽やかな歌声を響かせた。底抜けの無邪気さと、時に 無邪気さゆえの残酷さを覗かせて。
(あの子……変わり身というか、演技力がすごい。きっと 舞台女優さんになれる。かも?)
チャスタル役の子は最初の独演部分を任されるだけあって、歌舞に優れていたけれど……ケレイリス役の子の表現力も目を見張るものがあった。いや、男の子たちも殺陣とかの動きに学生とは思えないキレがあってカッコよかったけど。
その後に現れるのは双子の女神である。淡い黄緑と濃い蒼という 色違いで同じ形のドレスに身を包んだ彼女たちは、ゆらゆら揺れる羽衣のような薄布をはためかせながら 時に激しく、時に緩やかに舞い踊った。
6柱の高位神が舞い終わると、光と天の貴神の戦いの最中に飛び散ったまま、双子の女神による風雨の中にあっても 1つだけ消えずに舞台端で揺らめく火種が激しく燃え上がった。その火が弾けた後に、その場に歩み出て来たのは 粗野な出で立ちと、顔や胸・腕などに赤い刺青(ペイントだろうけど)のある がっちりした体格の男の子だ。
(おぉ、ワイルド。彼も良いとこのお坊ちゃんだろうに、よく あんな格好したな~)
そんな感想を頭に浮かべながら見ていれば、武器を持たないヴァハグニスは、無手の格闘技を思わせる舞いを舞って 荒々しき炎を歌った。
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「……素晴らしかったですわ。特に 火貴神の荒々しさの中から不意に顔を覗かせる暖かな優しさ……うっとりしてしまいました」
ほぅ……と、吐息を溢したティタリアは ツンデレ気味のワイルド系が好みらしい。マイエンジェルが 子犬とかを拾っちゃう不良 に引っ掛からないか心配だ。この世界にいるのかは分からないけど。
「うん、とっても勇ましくて憧れちゃうね。アーシャも あんな風に男らしい感じが良いのかな?」
「ん~。天貴神?」
テンションが高くて気の多い光貴神や荒っぽい火貴神よりは、多少気まぐれでも落ち着きのある天貴神がマシな気がする。
「……そっか……長身の男前か……」
「あら? アーシャ! あちらで先ほど演じていた高等科の方々が見送りに出ていらっしゃいましたわ! わたくしたちも参りましょう♪」
「ん?」
いつになく暗いウォルセンが どんよりと何かを呟いた気がしたけど、こちらも いつになくテンションが高いティタリアに手を引かれて演者をしていた高等科の生徒たちの元へ駆け出していたため、よく聞こえなかった。
本編にはほとんど関係無いのに、無駄に張り切った 神さまのお話でしたw
ちなみに、大神ティリエアルマリトは他の世界での管理や創造のために去りますが、時々様子を見に戻って来ています。真面目な新神さんなのです。
[どうでもいいけど名前の由来]
《ティリエアルマリト》
メソポタミア神話の〈ティアマト〉より。
《シャプシル》
ウガリット神話の〈シャプシュ〉より。
《チャスタル》
インカ神話の〈チャスカ〉より。
《ウリアノス》
ギリシア神話の〈ウラーノス〉より。
《ケレイリス》
ローマ神話の〈ケレース〉より。
《ティルセト》
エジプト神話の〈セト〉に〈ティアマト〉を加えて、女性的な名前に。
《アーハティア》
フィンランド神話の〈アハティ〉より。
《ヴァハグニス》
アルメニア神話の〈ヴァハグン〉より。
それぞれに司っているものや役割に近い神様で、なるべく作者好みの響きを持つ名前を拝借しておりますm(_ _)m