恐怖(ホラー)の欠片~廃遊園地で遊びましょう~
【幻想の欠片~今日の授業を始めます~】の小話集を作ってしまいました。
……まだ1話ですが。
気が向いたらご覧くださいませ。
今日、僕たち5組の面々は夏の長期休暇を利用して廃園となった遊園地に来ている。
何故 わざわざ廃園に足を伸ばしたかというとね、ここは出るって有名なんだって。
ゴースト系の魔物なら……って、討伐しようとした人もいたみたいだけど、正体はわからず。ちょっとした怪奇現象程度で実害は無いけれど、気味が悪いからと客足は遠退いてゆき……廃園となってしまったというわけ。
そんな怪奇現象を面白がったクラスメイトの富豪な父親が、廃園を持て余していたオーナーから1日借りきったみたいだね。経営不振から、資金繰りに苦労していたオーナーも 自己責任でなら と、快く貸してくれたらしいよ。
というわけで。せっかくだからと僕たちクラスメイト一同まで招待してくれて、遠くの土地や国外に帰省している子を除いて、皆で貸し切りの遊園地で遊べることになったけれど……
「大丈夫? アーシャ」
僕が手を引くアーシャは、普段から色白で無表情だけれど、明らかに顔色が悪くて表情が固い。彼女もまだ帰省しないみたいだったから誘ってみたけれど、失敗だったかもしれない。
(これは、確実に怖がっているね)
「無理そうだったら、僕たちは先に帰らせてもらおうか?」
「んん。……せっかくの遊園地……」
ふるふると頭を振る姿は、僕でもからかうのを躊躇ってしまうほど弱々しい様子だ。守ってあげないといけない気がしてくる。
「……でも、手は放さないで……」
消え入りそうな声で呟かれた言葉は、思わぬ威力を持って僕の中に響いた。ちょっと胸から変な音がしたよ。
「大丈夫だよ。ずっと一緒にいるからね」
「……ウォルセン……」
いつもは 僕に頼ったりしない自立心の強いアーシャの縋るように潤む青灰の瞳に、秘かに決意を新たにしていたところで、僕とは逆側のアーシャの隣で心配そうにしていた ティタリアがおずおずと声をかけてくる。
「大丈夫ですわ、アーシャ。何かがいたら、わたくしも一緒に戦いますから」
「ティタリア……!」
見た目と態度にそぐわぬ勇ましい発言に、僕はちょっと驚いたけれど。
(どうしてアーシャはさっきと違って目を輝かせているのかな?)
「さぁ行こうか、アーシャ、ティタリア」
二人の友情は麗しいけれど、僕はアーシャの手を少しだけ強めに引っ張って アトラクションへと歩き出した。
「ティタリア。ん」
「あ、はい!」
……アーシャを中心に3人で手を繋いで。
~*~*~*~
アーシャはさ、何か……そう、悪戯好きな運命神か何かに愛されているのかな? というくらいに色々な事が起きた。
「ふわっ?!」
「アーシャ?! 大丈夫、ただのチーフだよ」
ジェットコースター付近で、飛ばされて来たらしい誰かのチーフが顔に被さり。
「ひにゃーっ!!」
「落ち着いてくださいアーシャ、水滴が落ちてきただけですわ!」
トイレからは悲鳴が上がり。
『キャー!』
「《風よ》……もう、大丈夫! 遠くに飛ばしてしまったからね! って、二人とも落ち着いてーっ!!」
休憩にと座った木陰のベンチで、木の枝から降りてきたクモにティタリア共々悲鳴を上げて。……クモはお化けと関係ないけれど、面白いように簡易的な恐怖現象(?)に引っ掛かっては律儀に怯えている。
(ミラーハウスで鏡に映った、青白い自分の顔に卒倒しかけてたしね。笑い声がしたとか言ってたし)
その点、一見 儚げな風情のティタリアは(お化けは)意外と平気みたいで、アーシャを宥める側に回っている。…… アーシャが怖がりすぎて、逆に落ち着いちゃったのかもしれないけれど。
メリーゴーランドでは 他のご令嬢方が馬車へ乗るのを後目に、アーシャの真似をして馬に乗ったりするくらいだから、見た目によらず剛胆なところがあるのかもしれない。僕はアーシャと一緒に居るって言ったからね、もちろん馬に相乗りだよ。
(……危うく前に乗せられそうになったのは、気にしたらいけない)
颯爽と後ろに乗ったよ。
「……えぇっと、そろそろ日暮れも近いから、最後に観覧車にでも乗ろうか?」
「そうですね。他の皆さんも、最後に好きなアトラクションへと行っているみたいですし」
「ん。シメは観覧車がいい」
そんな風に意見も纏まって、夕暮れ時の観覧車へと乗り込む。
「素敵な眺めですわね」
「うん。夕焼けが綺麗だね」
「ウォルセンのお家も見える」
「……うん、確かにお家ではあるね。少しだけ規模が大きい建造物だけど」
アーシャのちょっぴりズレた発言に気を抜かれながら、頂上付近で沈む夕日を見送る。と。
軽い衝撃と共に止まる観覧車。
すぐにまた動き始めたけれど……
「ひぅえぇぇぇ~!!」
本日一番の間抜け……じゃなくて変わった悲鳴とともに、アーシャがしがみついてきた。
「今度は何ごと?!」
僕の胴に手を回して服を握りしめ、ぶるぶると震えるアーシャはとても話せる様子ではなくて、向かい側に座っているティタリアに視線を向ければ、彼女も真っ青だった。
「で、殿下……あ、アーシャの、せな……背中に……」
「背中?」
アーシャを宥めつつ、彼女の背中側を覗き込めば。
「紅い……手形だね」
アーシャのしがみつく力が強まった。手形は小さなもので、悪戯盛りの幼児のような大きさだった。
~*~*~*~
それから 帰り際。遊園地の広場にクラスの皆で集まれば、状況は違えど幾人かが夕暮れ時に同じような手形をつけられていた。
幸い、怪我や呪いなどの不調は誰にも無く、水属性の“洗浄魔法”ではなく光属性の“浄化魔法”で手形は消えたけれど、帰りの馬車は重苦しい沈黙で満たされていた。
くすくすくす。。。 ばいばい、可愛いナイトさま。。。
なんだろう。僕も背中が寒い気がする。
悲報。コメディの中に埋もれるホラー。
どうしてこうなった……|||orz
アーシャには、もともと怖がり設定はありませんでした。殿下のお胸に“きゅん”とか“ドキッ”という類いの音を立てさせたかった 作者の出来心です。反省はしていません(`・ω´・)+