魔王との最終決戦
「≪光弾雨≫!」
白銀の騎士は手に握っていた光剣を魔王へと投擲すると強く発光し、弾け、それが無数の光る玉へと姿を変え、まるで鉄砲雨の様に魔王へと降り注ぐ。
視界を覆い尽くすほどの弾幕の濃さに避けることもできず、ただなす術なく次々に光弾が直撃していき、小規模の爆発が次々に起き、その衝撃によって徐々に後退していた。
「≪メテオ・ハウリング≫!!」
反撃の隙を与えんとばかりにアダントの追撃が直撃し、そこに上空から降り注ぐ黒い銃弾の嵐に魔王は身動き一つできず、ただただアダントたちの攻撃を耐えていた。
「押してるように見えるだろ?こんだけやって大体5%も削れてれば御の字なんだぜ?」
突然、誰かに説明をするように話し始める白銀の騎士。
「両翼落とせてたのが幸いだなこりゃあ。攻撃手段が減って行動も限られるようになったからこうして押し込めてはいるけど、もうそろそろ持たないなこりゃあ…」
そう。
これだけの攻撃の嵐の中、徐々に魔王は一歩、また一歩と前へと歩み始めた。
普通の敵であれば数秒も持たず、ミンチに…いや、形すら残らないほどの猛攻撃だったとしても、魔王にとっては全くもって効いていないのだ。
ただただ攻撃を受けた際の衝撃波で怯んでいるだけで合って、体制を立て直されてしまえば簡単に突破されてしまう。
だからこそ、アネラがやってのけた渾身の一撃による片翼落としという戦績は偉業なのだ。
まあ虚狼の一撃はまた別物なので換算しないという事で…
「グゥウウウオオオオオオオオ!!!」
「あ、やっべ」
『ぬぅ…!?』
やはりその時はすぐに訪れた。
攻撃の嵐を全身で受け止めながら、アダントへと突進を繰り出してきた。
魔王の口が徐に開くと禍々しく光り、咄嗟に距離を取ろうと後方へ飛ぼうとするが、
『な…に…!?』
刹那、アダントに向けて一筋のまっすぐな禍々しい光線が放たれ、躱しきれずに胴体を貫くように直撃した。
そして間髪入れずに2発目の光線がアダントに向けて発射される。
「おやっさん!!」
瞬時に白銀の騎士の光る大楯がアダントの目の前で生成され、大楯に当たり、屈折し、別の方向へと曲げられ、攻撃を防いだ。
直撃した衝撃で受け身が取れず、そのまま大きく吹き飛ばされ、地面と接触するたびに乱暴に回転しながら止まる。
魔王から放たれた攻撃はアダントだけでは収まらず、白銀の騎士にも同じように一筋の光線が放たれる。
アダントに出した光大楯を生成し、地面へ突出した部分を突き刺して構え、魔王から放たれた光線を防ぐ。
だが、一回の光線が防がれると間髪入れずに光線が放たれる。
何度も、何度も、連続して光線が発射され、光大楯に直撃していき、光大楯も受ける度に形を崩され、小さくなっていく。
数秒も持たず、光大楯は崩壊し、連続して発射される光線が白銀の騎士を狙うがそこにはすでに白銀の騎士の姿はなく、別の所へと瞬時に移動して難を逃れた。
ふと上空から巨大な何かが魔王目掛けて降ってくると背中の部分に直撃し、巨大な爆発が発生した。
吹き荒れる爆風に合わせてアダントの所へと一気に飛び、アダントの状態を確認する。
「おやっさん、無事か?」
胴体を貫通しているのか、少しばかり大きめの穴が開いており、黒い煙のようなものが立ち上り、そこからドロドロに溶けた何かが流れ出していた。
が急所は外れているようでなんとか即死には至らなかったようだが、致命傷であることには変わりなかった。
アダントを急いで白い霧が漂う場所へと移動させると、なんとか一息つく。
『ぐぬう…、助かった、ぞ…。しかし、あの攻撃スキルは…』
「いや、スキルじゃねえな。多分、あれはアイツの通常攻撃だよ。」
『馬鹿な…あれが、スキルによる攻撃ではない、のか…?! ガハッ…!』
衝撃的な話を聞かされ、興奮して傷口に障ったのか、口から湯気が上がり、咳き込みながら吐血する。
「気持ちはわからんでもねえが、とりあえず落ち着けって。あれはスキルによる攻撃じゃねえ。ただただ自らの高密度な魔力をさらに濃縮させ、圧縮させ、力任せにぶっパしただけにすぎねえよ。」
『それだけで…この威力か…』
白銀の騎士が周囲を見渡す。
攻撃が逸れたり、外れたりして別の場所に放たれ、着弾した光線の跡を見る。
爆発こそ起きていなかったが、どこも共通して光線の線に沿って大きく抉れており、火災さえ起きぬほどの高温によって抉れた部分から焼け溶けているようで、マグマのようにドロドロに溶けていた。
『ぬうう…まだ、だ…まだ、我は…』
と無理やり立とうとしていたが、力が全然入らないのか、動かすことさえできず、逆に白い霧の治療を上回るレベルで傷口が開き、咳き込みながら吐血する。
アダントはもう戦えない。
火を見るよりも明らかだった。
魔王の攻撃を一発でも貰えば、運が良ければ瀕死か致命傷。普通なら即死って所か。
「無理ゲーすぎるだろうが…。」
気が付けば自らの体にも小さな穴のようなものが開いていたことに気が付く。
やはりあんな盾で攻撃を無傷で防ぎきれているなんてことはできなかったようだ。
手のひらを見ると、かすかにノイズのようなものが走っているかのようにぶれている。
「掠っただけで…ダメージを受けすぎたな。それに活動時間もあまりねえ。」
自分は≪白き闇の召喚≫のスキルによっての召喚のため、活動時間に限界はあるし、ダメージを受け過ぎれば簡単に消えてしまう。
「万事休す…って奴か。」
これからどうすればいいか策を練ろうとした時、強烈な悪寒が全身に走る。
前方を見ると、煙が晴れて見えてきたのは、口の先で巨大な禍々しい光玉を生成している魔王の姿だった。
恐らく攻撃スキルを発動しようとしているのだろう。
自分たちがすでに射程範囲内にいることも瞬時に悟った。
「なんだ、ありゃあ…!?」
急いで光大楯を展開しようとするが、明らかに防ぎきれる自信がない。。
徐々に大きくなっていく禍々しい光玉が魔王の口から離れ、空へと昇り、内側から徐々に強く発行しているのが見え、そしてどこからか聞こえた言葉…
「≪ 死 ノ 雫 ≫」
強烈な発光と共に弾け、無数に枝分かれし、軌跡をなぞりながら白銀の騎士たちの元へと降り注いだ。
「まずい…!?」
無数に枝分かれした死ノ雫が地面に触れると同時に巨大な爆発が次々と発生してく。
一瞬にして白銀の騎士たちは爆発に飲まれてしまった。
死ノ雫による爆発によりまた爆発が起き、それらの爆発が重なり、連鎖し、そして1つの巨大な爆発となった。
離れていたのディバイスの町にまで死ノ雫による爆発によって発生した爆風で城壁が吹き飛び、建物が崩壊していく。
明らかに死んだ。誰もがそう思った。
だが何か違和感を感じる。
その違和感が何なのか気になり、人々は強く瞑っていた目をゆっくりと開ける。
周囲を見渡すと建物はほとんどが崩壊していたが、自身は微かなかすり傷程度だけで済んでいた。
そして気付く。
淡く、蒼白い光に自らが包まれていることに。
それは誰もが同じ状況だった。
アネラ、ポーラ、ジャーニーやチコル、ヴァレル、オードン、そしてディバイスの町に避難していた人々全員。
アダントたちも例外なく蒼白い光に包まれていた。
周囲は焼け、ドロドロに溶け、悲惨な状況である中、自分らは軽度の傷で済んでいる。
アダントに至っては魔王から受けていた傷がほぼほぼ完治していた。
「これが、勇者としての…力…?私…す、すごくない…?」
ふと聞き慣れた声が前の方から聞こえる。
気が付くと前にはユリアが自らが引き起こした奇跡に吃驚している姿があった。
「あ、マーくん!それにアダント様!」
こちらの姿に気付いたユリアが嬉しそうに手を振っていた。
白銀の騎士はこの時、何が起きたのか理解するのに数秒掛かってしまった…。




