私は勇者で、転生者
私は榊 紗友里。
私は…いわゆる転生者って呼ばれる存在だと思う。
小説とかアニメとか、よく見るテンプレな展開の物語。
小説とかアニメとかである異世界転生モノにまさか私が体験するとは思わなかった。
地球にいた紗友里としての記憶を持ったまま、この異世界に転生した時はびっくりしたな~。
まあだからといってチートスキルだのなんだのそういったものはなかったし、やっぱそういう展開は小説の中だけなんだなって思ってたけど、急に教会の人たちがやってきて、
―お前は勇者だ。世界を救う使命がある。
なんて言われてさ。
急に言われて納得できなかったし、この世界での私の両親も、弟同然の幼馴染も、良くしてくれた村のみんなも私を庇ってくれたけど、幼馴染が殺された時はどうしようもなくなったなー…。
これ以上反抗したら、幼馴染くんだけじゃなく、みんなを殺しかねないってすぐに悟って…。
それからは勇者としてあれやこれやと戦って戦って戦いまくって…。
そこで初めてアルフくんと出会って…。
オゥクロプス殲滅戦の際に、消えた子供たちを探す先で出会ったこと。
初めてみた時のアルフ君は月夜に照らされてたせいか、すごく綺麗な白銀の毛並みが反射しててすっごく幻想的に見えて、ついつい見惚れちゃったっけ…。
その後色々話してクエストの報告をしに離れることになって…。
でも意外と早く再開したのにはびっくりしたなー。
助けられた時の印象と現象的な姿に高位の魔族かなって思って暫く様付けで話してたけど、暫く一緒に居て行動を共にするようになって気が付いたらアルフくんへの態度も柔らかくなって…。
アルフくんと話す度に、私の知ってる人…高校の時の真先輩との姿が何度も重なって見えて…。
言動や喋り方、態度なんかそっくりで…。
でもそんなことは決してないって…。
真先輩が住んでるっていうアパートに訪れたら燃えてて…助けようと部屋に私も入ったけど、燃えてる真先輩の姿を見つけてすぐに私も気を失ったからきっと助けられなかった…。
高校の時も、そしてあの時も…。
真先輩と雰囲気が似てるアルフくんに、あの時できなかった償いをしようって自己満足にアルフくんを手助けできればって一緒に居続けてわかったことがある。
きっとアルフくんも転生者で、おそらく真先輩だと思う。
あの時一緒に焼け死んで転生したんなら、真先輩も一緒に転生したはず…。
そう思い込んでいるだけって可能性もわかってる。
でも、もうそんなの関係ない。
今度こそ私は守るんだ。
もう2回も真先輩を守れなかった。
仏の顔も三度までってよくいうでしょ?
きっと次はない。
この次、アルフくんを守れなかったらもう終わりだと思う。
世界を守る理由が、世界のために~とか、人類を守るために~とか。
そういった理由じゃなくても別にいいよね。
私情の理由で世界を守ってもいいよね。
未だに気を失ってるアルフの頭を優しく撫でる。
ふと膝枕をしてあげた時の記憶が蘇る。
あの頃が一番幸せだったと今では感じる。
「アルフくん…。いや、アルフ先輩って言い換えた方がいいのかな?」
『ユリアちゃん?』
「ううん、なんでもない!」
その時、自分の体の中から湧き上がる力を感じる。
今までに感じたことのない力。
瞬時にそれは自らの勇者の力だと理解した。
「…アンジュちゃん、私いくね。」
『え、大丈夫なの?魔王に勝てそう?』
アルフを回復させながら、不安そうにユリアへ返事を返す。
「うん。多分ね?」
『多分って…、はあ。傷を負ったらアタシの所に戻ってきてね。すぐに回復するから!』
「それは助かるな~。ありがと!」
アンジュへニコッと笑顔を向け、アンジュも笑顔で返す。
寝ているアルフの頬と自分の頬を合わせ、目を閉じる。
「行ってきます、先輩。今度は私に任せてくださいね…。」
誰にも聞こえないように零れた呟き。
だがアルフには聞こえていたのか、小さく頭をユリアに寄せ、合わせ合う頬を擦る。
その反応にユリアは一瞬びっくりしたが、それが自らの揺らぐ決心を固める要因となった。
ゆっくりと立ち上がり、剣を抜く。
「エフィ様、2人を宜しくお願いします!」
『…見つけたのね。戦う意味を、戦う理由を。行ってきなさい、勇者ユリア。』
「はい!」
乗っていたエフィの背から飛び降り、魔王の元へと向かう。
「アルフくんを助けるついでに世界を救うとします!」




