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異世界転生したら、まさかのオオカミだった!?  作者: 永遠眠
第2章 異変と急変
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兄としての強さ

夕刻


「わわっ!? …くー、やっぱり今回もあたしの魔動機兵(マギアゴーレム)ちゃんたち全滅しちゃったんですの…」

「そうかそうか…だが諦めることはないぞチコルたん!チコルたんの魔動機兵(マギアゴーレム)はまだまだ強くなれる!」

「そうですの…?んー、ヴァレルお兄様が言うんならアタシももっと頑張るんですの!」

「そうだぞそうだぞその意気だ!」


話を聞くにどうやらチコルの従魔のようなものが一瞬にして全滅したらしい。

町を守るための防御結界を張る役目を担っていたんだとか。


それが一瞬にして、しかも同時に全て破壊された…


『外の、状況は…!』

「ん?ああ、それならば大丈夫だ。もう終わったようだしな。」

『終わった…? どうして、わか‥るんだ…?』

「私には全て見えているからな。案ずることはない、アダントとエフィはピンピンしている。」


こちらを見ながらも、その目線は一切アルフの事を見ていないようだった。

一体何を見ているのか、何を感じ取っているのか、アルフには何もわからない様子だった。


だが全てを感じ取り、理解し、わかっているようだった。

探知魔法か? でも魔法の気配、波動の余波も一切感じられない。


なのに全てを理解している様子、いや、本当に理解しているんだろう。

その目には一体、何が映っているのだろうか…。


「それじゃ私は行くとするよ。私の可愛いアネラたんが、アダントの攻撃を間近で見て腰を抜かしたみたいでね。アネラたんの元に行って慰めなければ!そう、アネラたんの兄として、その義務がある!」

「そんなものはないんですの、ヴァレルお兄様。お兄様が動いたら色々と面倒だからここで大人しくしているんですの」


声のトーンが下がったまま、ヴァレルに呆れた様子でそう告げる。

その表情はもはやこの状況に慣れすぎてしまい、表情筋を使う事さえも面倒になってしまったような、そんな真顔で。


すでに何度か見ただけではあったが自分自身でもこの状況にすでに慣れつつあることに気付き、諦めた表情でため息を吐いた。


足の感覚が戻ってきた辺りで、アルフは震える足でゆっくりと立ち上がろうとするが、足に力を入れた瞬間に激痛が全身を走り、倒れそうになる。

魔力切れのため、一旦休憩をはさんでいたポーラが慌ててアルフを支えるも、今の状態だと真面に歩けない事は火を見るよりも明らか。


「オオカミさん! 今はまだ無理はしちゃダメです!」

『…だが、アンジュ‥と、ユリアが…』


そう、雌の巨骨猿が放った骨尾鞭の強打が直撃し、ジュレアナや兵士含め全員がその衝撃に打ちのめされてしまったのだ。


侵蝕汚染は結界で防げてデバフを貰わずには済んだが、あの衝撃を真面に喰らったのだ。

軽い怪我程度ではすんでいないはず…


「…あの白い子熊とユリアのことか。それならば大丈夫だよ、オオカミくん。彼女らは無事だ。」

『それ‥も、わかるの‥か‥‥?』

「ああ、私には全て見えているからな。あの子らなら、チコルたんの小型魔動機兵の案内でもうそろそろ…」


と本当にそのタイミングで頭に小さな鳥のような形をした装飾の入った綺麗な人形を乗せたアンジュとユリアが部屋に入ってくる。

部屋に入ってくるな否や、アルフの今現在の状態とその部屋中に飛び散った血痕を見て目に涙を浮かべてアンジュが入ってきた。


『お兄様ぁ!?大丈夫?死んでないよね?!ってか何があったの!?それにこの傷…』

『俺、なら大丈夫…。それよ‥り、アンジュは…? ユリアも…』

「私たちは大丈夫。直前にジュレアナさんが防御魔法を使って衝撃を和らいでくれたんだ。まあそれでも気絶しちゃったけどね…。ポーラがいるってことは…そっか。今はもう大丈夫なのかな。」

「うん、オオカミさんならもう大丈夫だと思う。でも今は絶対安静にしてないと…」


銀狼の名の由来の通り、その美しい銀色の毛はそのほとんどがアルフの血で大半が真っ赤に染まっていた。

腹部、後ろ両足、左前脚、そして顔半分も包帯に巻かれている。


治癒魔法とハイエリクサーポーションを掛けてもらったとはいえ、足部分は少しばかり歪んでおり、真面に力を入れる事さえできない。

フラフラな体で、震える足で立ち上がり、今にも外に出ようとするその姿は痛々しくて見るに堪えないほど。


ポーラとユリア、アンジュに支えられながら、ゆっくりと体を横に倒す。


「とりあえず、アルフさんはアタシの魔動機兵(マギアゴーレム)たちに丁寧に教会まで送り届けますの。」

『お兄様のこと、どうか宜しくお願いします…』


いつになく弱弱しい姿でチコルにお願いするアンジュの背を見て、胸が若干苦しくなる。


「オオカミくん、種族は違えどあの子の兄なのだろう? ならば、あんな姿を大事な妹にさせるべきではない。」


ふと気がつけば傍でヴァレルがそう呟いた。


『…ああ、今回の戦い、強く痛感した‥よ。』

「なら次に何をするべきか、それももうわかっているようだな。我々の境遇は、どこか似ている…。強くなれ、兄として。大事な妹をありとあらゆる災厄から守れるほどに。」


今までの強敵たちとの連戦で、きっと自分自身の強さに自惚れていたんだろう。

レベルの差があったディアブロア、ミノタナトスとの戦いで勝利したことで、きっと今回での戦いでもきっと何とかなる。


最後にはあの巨骨猿を倒し、父様と母様の掩護を…。

そんなことを考えて。


―ま、レベル差を埋めるために技量で補う。悪くはないと俺は思ったんだがね。相手が悪かったと思うぜ?


(…いや、お前と同化する以前からすでに侵蝕汚染の影響はなかった。侵蝕汚染体が相手だから悪かったって言い訳は通じない。多分、同化しなくても俺単騎で十分動けてたと思う。)


―…ほーう?


(理由はわからない。だが、あのしんどさは一切なかった。だからあの時の戦術としては同化するよりも、お前自身を召喚して、戦力をさらに増強。お前は侵蝕汚染体にダメージが与えられないから、アンジュの援護に回すことで2体目の巨骨猿との戦いに集中できたはず…。きちんと状況、戦況を分析できなかった俺の判断ミスだ。)


―そりゃ後の祭りってもんだろうが。確証もない状況で同化していないままあいつらを殴って、その読みが外れてりゃ一発アウトだっただろうがよ。全てが全てお前のせいじゃないさ。ただ、情報不足だった。


(………)


―おや、寝ちまったようだな…。まあ無理はないか。あんだけ大怪我負っちまったんだしよ。…あのメスゴリラの攻撃は俺の鎧で緩和できても、その後の地面への叩き付け、その後の壁や民家をぶち抜いたときの衝撃等は防げなかった。そんな大怪我を負わせたのは俺の責任でもあるんだよ…。


そういってアルフの頭をそっと撫で、そのまま静かに影の中に消える白き闇。

横目で静かに見つめるヴァレル。


そのまま目を瞑り、何かを思い出している様子。

それを察してか、チコルはテコテコとヴァレルの傍まで来るとその横に立って足に寄りかかる。


「ヴァレルお兄様。」

「…ああ、大丈夫だ。ふと、過去の私と重なって見えてしまってな。」

「確かにそうですの。最弱と呼ばれてたあの頃のお兄様とそっくりですの。」

「ふふ、そうだな…。あの頃の私は随分と足掻いたものだよ…。お前たちのおかげで私は強くなれた。」

「でもだからってこのオオカミさんみたいな無茶したら許さないんですの。アネラちゃんも絶対にお兄ちゃんの事を許さないんですの!」

「愛いやつめ。そんな可愛い事を言う我が愛しのチコルたんには撫でまわしの刑だ!」

「あああああ、やめるんですのおおおお!」


しゃがんでチコルの体を抱き上げるとそのまま頭を撫で繰り回す。

嫌そうにしつつもちょっと嬉しそうに笑うチコルに、ヴァレルは細く微笑む。


「お前たちの兄として、そうしなければお前たちを守れないんなら迷わずそうする。それが兄という存在だ。お前たちの幸せを守れるならば、私は喜んで魔王でもなんでも挑んでやるさ。」


その言葉を聞いてチコルはヴァレルの胸にうずめる様にその小さな腕を広げて抱きしめる。


「…誰であっても絶対に死んじゃダメですの。」

「それがお前の、お前たちと交わした約束だからな。ボロボロになってでも生きて勝ちをもぎ取ってくるさ。」


そんなチコルの様子が愛おしいのか先ほどよりかは打って変わり、そっと優しく頭を撫でる。

その光景は、妹を優しく愛でる兄の、何とも美しいものであった…。



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