ディバイス攻防戦
お昼ぐらいかな
2体となったアルフは持ち前の技術とスキルを行使して侵蝕汚染体と化した骨猿たちの4割もの数を消滅させた。
まさか影狼が倒した敵の経験値も入ってくるとは思わなかった。
一度に20体以上もの経験値が入り、レベル9へのレベルアップも可能になった。
また骨猿とはいえ鳥獣族であるため、欲しいステータスボーナスの対象でもあったため一石二鳥だ。
『お兄様、まだ油断しないで! 奥からまだまだ来るみたい!』
そう、奴らを倒しても倒しても森の奥の茂みからわんさかと無尽蔵に御代わりと言わんばかりにやってくるのだ。
こうも数で押し寄せてくると、逆にこちらのスタミナが持たないのは火を見るよりも明らかだった。
アダントとエフィも巨骨猿との戦いで手一杯で、こちらにまで気が回らないようだ。
頭を失ったとはいえ、未だ動きに衰えもなく、その巨大な1本の骨を棍棒の様に振り回している。
こちらは一度でも相手の攻撃が当たった場合、それがほんの少し掠っただけでも一発アウト。
立ち回りも慎重にせざるを得ない状況だ。
2匹はひたすら距離を取りつつ、遠距離攻撃をぶつけては立ち位置をすぐに変え、常に動き回りながら攻撃を絶え間なく与え続けている。
その攻撃を防ぎ、掻い潜って棍棒を振り回すアイツもアイツでかなりのタフさを感じられる。
一方、魔法障壁の向こう側からジュレアナたち率いる弓兵と魔術師は、アルフが取りこぼして障壁へと一目散に突っ込んでいく骨猿たちをなんとか倒していた。
『ヘイトを稼ぎたいが、稼いだら稼いだで≪即死の一撃≫が発動しにくくなるし、かといって隠密を最大限発揮して立ち回ったとしてもこの数相手全てを相手できるはずもない…』
―かといって今俺との同化を解除したら俺様は侵蝕汚染の影響を受けちまうからなあ。
『それにあいつらの掩護のために戻ったら戻ったで、障壁外にいるから兵士たちの弓や魔術士たちの攻撃の邪魔になるし…。今できる事はここでひたすらこいつらを狩り続け、少しでも障壁へと向かう骨猿たちの数を減らすことだけだ!』
―はっ、やっぱりそうなるよな! 俺様よへばるんじゃねえぞ?
とここでアルフと影狼はほぼ同じタイミングで遠吠えスキル≪ 闘 志 を 震 わ す 遠 吠 え ≫を発動させ、自身の能力を重ね掛けによる底上げ、そして相手の能力へのデバフを掛けていく。
そしてまた同時に≪ 幻 影 群 ≫を発動し、再度20体もの幻影体が骨猿たちへと突貫していく。
それに合わせて隠密を使い、≪ 連 鎖 す る 破 滅 ≫を繰り出して骨猿の殲滅速度を一気に加速させていく。
だがそれでも全ての骨猿たちを消滅させるには至らず、8匹以上の骨猿たちを取り逃がしてしまう。
今は何とかアンジュたちの攻撃で撃退できているがそれがいつまで持つのか…
そんな不安を抱きながら、再度隠密を発動させようとしたその時…
「グオオオオオオオオオ!!!」
森の奥から聞こえてくる雄叫び。
それと同時に影狼にいる場所へと何か巨大な撓る鞭のようなものが直撃し、地響きと共に辺り一面がその衝撃に大きく揺れる。
間一髪の所で回避に成功してアルフの傍へと退避したが、土煙の中に何か蠢く物が見える。
それはズズズと大地を抉りながら森の奥へと引っ込んでいった。
そして土煙が晴れると同時に姿を現したソイツに誰もが目を見開く。
『嘘だろ…!?』
―あー…、マジか。
奥に居たアンジュたちも悲鳴のような声が聞こえてくる。
こちらの異変を察知したアダントとエフィも目の前に現れたもう一体の侵蝕汚染体と化した巨骨猿の姿に動揺を隠せずにいた。
アダントたちが相手にしていた巨骨猿よりかは小さい個体ではあったが、胸の膨らみのようなものと棍棒ではなく、巨大な尾のような骨を鞭のように撓らせている。
『番、だったのか…。』
―おいおい、俺様よ。あの鞭は正直ヤバいぞ。侵蝕汚染がたっぷり塗られた毒鞭だ。
『わかってる…! 棍棒とは違ってリーチが遥かに長いし、近づこうとすればあの鞭の猛攻で対処されるのは目に見えてる…どうすれば…!』
と考えている間に、雌の巨骨猿はその骨尾鞭を大きく撓らせ、大きく振り下ろす。
そして狙いはアルフではなく…
『なっ、アンジュ!!!』
奥で魔法障壁を張っていたアンジュへ向けて骨尾鞭の先端の強打が直撃する。
瞬時にジュレアナの指揮で魔術師に魔法障壁に合わせて強力な結界を張らせたが…
―ドゴオオオオオオオオオオオンン!!!
その一撃で結界もろとも魔法障壁を粉砕し、その衝撃がアンジュたちを襲う。
『きゃああああああ!!!』
「うぐうううううあああああああ!!」
『アンジュううう!! ユリアああああ!!』
アンジュたちは吹き飛ばされ、崩れた壁へと打ち付けられる。
崩壊しかけた壁がその衝撃でさらに崩れ、瓦礫がアンジュたちへと降り注ぐ。
だが何とかあの衝撃を耐えきったジュレアナが決死の力で落ちてくる瓦礫へ剣撃を繰り出し、瓦礫を破壊したがそれが最後の力だったのか、剣撃を放った直後に膝から崩れ落ち、そのまま倒れてしまった。
幸いにも侵蝕汚染の影響は受けずには済んだが、もはや最終防衛ラインは崩壊した。
後方に待機していた兵士たちが重傷者たちを運び、魔術師たちによる魔法結界構築で一時的に壁を作り出し、骨猿たちの侵入を抑えてはいたがもはやいつ崩れてもおかしくない。
『ヘイトを俺に向けさせるしかない!』
―無理だ! この数全てのヘイトを俺様に向けさせるのは不可能だ!それにあのメスゴリラの存在もあるだぞ!この数相手にしながらメスゴリラの猛攻を躱し切れるなんざ実質的に不可能だぜ!?
『だがやるしかない! そうしないと侵蝕汚染の耐性を持たないあいつ等が一発でも攻撃を浴びたら侵蝕汚染体になっちまうんだぞ!』
―ああもう! でもどうするよ!? さっきも言ったがこの数相手全てのヘイトを俺様に向けることは不可能だぜ? 影狼と合わせてヘイト稼いでも1~2割の骨猿たちが炙れてあのチビグマんとこに行っちまう。
『今、アンジュたちの攻撃の手は止まってる。今ならば影狼の掩護は邪魔にならないはずだ。あの結界壁の前に陣取ってやってきた骨猿たちのヘイトを稼ぐ。その間に俺はここいら付近の骨猿ともう一体の侵蝕汚染体のヘイトを稼いで時間を稼ぐ。その間に父様たちが…』
と混乱する脳内の中で必死に状況を整理しつつ戦況を打開するための案を練っていると、侵蝕汚染体はアンジュたちではなくアダントたちの方を向いた。
その時瞬時に、アダントたちへとその骨尾鞭による強打で掩護しようとしていることに気付くと同時に走り出していた。
影狼もアンジュたちの方へと走っていき、途中途中で背後からの奇襲による即死の一撃を繰り出し、そこから≪ 連 鎖 す る 破 滅 ≫を繋げて数を少しでも多く減らしていく。
≪隠密≫と≪幻影群≫はなるべく使わず、走りながら遠吠えを上げてヘイトを自らに向けさせる。
『させるかあ!!』
アルフも≪ 幻 影 群 ≫を発動させ、幻影体によるデバフを次々と付与させて喉元と思わしき部分へ即死の一撃を繰り出す。
『グオオオオオ…!?』
即死の一撃は決まらなかったものの、重複する暗黒のデバフと動きが遅くなる遅延のデバフ、そこに強烈な攻撃が喉元に決まり、大きく体勢を崩す。
エフィへと向けられた骨尾鞭は大きく外れ、すぐ傍の地面へと攻撃が直撃した。
衝撃波がエフィへと到達する前にその場から離れていたおかげで、何とか難は逃れたようだった。
なんとかエフィへの攻撃を阻止出来て安堵していると、
『アルフ!!!』
アダントが大きく自分の名前を叫ぶ。
それと同時に体に今までに感じたこともないほどの強烈な衝撃が入り、世界が瞬時に黒く染まる。
「グオオオオオオオオ!!」
体勢を崩しながらも放たれたその拳をアルフは空中に居たために避けきれず、巨骨猿の拳を真面に喰らい、地面へと強く叩き付けられ、バウンドするとそのまま大きく吹き飛ばされて壁に激突した。




