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異世界転生したら、まさかのオオカミだった!?  作者: 永遠眠
第1章 転生した先は…。
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どうみても親バカである。

時刻 "14:20"


それにしても不思議だった。

別に口を動かしているわけでもなく、声さえも出していない。

でも頭の中に直接響くようなこの感覚。

それにその意味さえも理解できる。


"これがこの世界での会話のとしての基準なのか?だとしたら俺、かなりやべーぞ…。"


この会話の仕方がわからない以上、会話をすることは不可能。

向こうからの言葉に、こっちからは


―わぉんっ!


という言葉ですらない鳴き声でしか返事が返せないのだ。


『ああ、我の愛しい息子よ。どうか、我たちにもう一度、その愛しい声を聴かせてくれないか?』


と愛おしげな表情で父狼は訪ねてくる。


"もうすでにピンチだよっ! くそがっ!"


どうする? マジでどうする?

なんて答えればいい? わぉんっ!しか声が発せられない以上、イントネーションを付けてこう…


―わぉうん…っ


"自分の父に色っぽく鳴いてどうするんだよ! 俺はアホかっ!!"


…そうか、イントネーションじゃなくてポーズを付ければ…!

確か相手に腹を見せるという行為は相手に服従とかそういった意味があったはずだ…!!


そして想像するも、そこには後ろ足を広げ、あられもない姿を晒す子狼の姿が…


"だからなんでそっち方面に考えるんだよ! 俺はクソかっ!!"


『どうした? 我が息子よ、もう疲れてしまったのか?』

『そうねぇ…自我を持ち始めたばかりだし、さっきの一鳴きで疲れてしまったのかもしれないわ。』


"ああもう逆に心配されてるじゃねぇか! 俺はバカかっ!"


と1人…基1匹で悶々としている様子を不安げに見つめてくる父狼と母狼。

ハッと我に返り、ここは何も考えずただ一声鳴くことにした。


「わぅんっ」


するとまた父狼と母狼はビクッと反応し、そのまま硬直している。

やはり違和感はあったのだろうか…?などと考えていると、父狼の方から何かが聞こえてくる。


どうやら何かをボソボソと呟いているようだが微妙に聞き取れない。

と思っていると徐々にそのボソボソは音量を増してきた。



『…れ……れの…われ……の…われの……』

「わぅん?」

『我の息子が可愛すぎてやばすぎだろうぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


突如上げた先ほどの咆哮を真直で受けてコロンという感じに後ろへと転げる。

それを見てクスッと笑いながら、母狼は鼻先で体勢を戻す手伝いをしてくれた。

その後、父狼に少しばかりの睨みを入れる。


『す、すまん…。』

『驚かすのも程ほどにしてくださいね?』


"全然先に進まねぇ…"


『ではさっそくだが食事にしよう。こうなるとわかっていたらもう少し上品な肉を持ってくるべきだったが…』

『仕方ありませんわ。それにあの大猪のお肉もとっても柔らかくておいしいじゃありませんか。』

『ふむ、それもそうだな。息子よ、食事の時間にしよう!』


そう言われて連れてこられた大猪の屍前。

死因となった決定打は腹部に空いた傷のようだった。

腹部以外にも様々な場所に同じような傷はあったが、深くは開いていない。


これを一体どう付けたのか、現段階じゃわからない。

ただまっすぐに開いた貫通型の攻撃だということはわかる。

ということは…何かを飛ばしたか、それとも鋭利なモノで貫いたか。


"ふむ、もっと情報がほしいな…。主に戦闘面での情報が。"


『さあ、食べよう。』


その一声が合図となったのか、父狼と母狼は慣れた感じに腹部に食らいつく。

だが子狼は目の前の生肉を食べる勇気が出なかった。


前世でもそれといったまともな食事はとっていなかったが、これはあまりにも初心者にはきつい。

ただ御腹は目の前にある肉を欲しているかのように体全身に号令かのように音を出す。


"これも今までのツケが回ってきた結果だろうし、仕方ない…。"


目を瞑り、思いっきり目の前の肉にかぶりついてみた。


…歯が通らなかった。


必死に肉にかぶりつこうとするが、顎の力が弱いのか、それともまだ歯が鋭くないのか。

ひたすら甘噛みしているようにしか見えない状態だった。


それに気づいた母狼はスッと立ち上がり、別の場所にかぶりつくとそのまま引き千切る。


『さあ、これをお食べ。この部分は柔らかいから食べられるはずよ。』

『うむ、そこの肉は柔らかくてとても美味だな! ちなみに我の好物でもあるぞ!』


そっと置かれた肉は見た目からわかるほどとても柔らかそうだった。

脂が網目状に広がっており、それがますます美味しいものだと実感させられる。


俺はその肉の端にかぶりつく。

すると今度は噛みちぎれた。そのまま口の中で数回咀嚼し、十分飲み込める程度まで噛み砕いた後喉に流した。

見た目よりもジューシーな味、濃厚な脂の甘味が感じ取れる。

若干ではあるが獣独特の臭いもあったが、全然気にならないほどだ。


「わぉん…」


思わず呻いてしまった。

久々のまとも?と言えるかどうかはわからないが、その味はまさしく霜降りに近い高級な肉と同じだった。

生だから少々きついか?なんて考えもどっかに弾け飛んでしまった。


その様子を見て、ほっと安堵した母狼ととても清々しいほどまでのドヤ顔になっている父狼。

気が付けばあっという間にその肉を平らげ、満腹になって横になっていた。


「けぷっ…」

『あらあら、この子ったら…。』

『小さいうちによく食べ、よく動く。これは大事なことだ! では我らも食事に戻ろう。』

『そうね。でもあんなにおいしそうに食べてくれるなんてね、ふふ…獲ってきた来た甲斐があったわね。』

『うむ! あの満足げな表情を見れただけでも我としては十分すぎるほどだ。』


そう会話を交わしながら、残った大猪の肉を全て平らげてしまった。


前回(ry

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