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異世界転生したら、まさかのオオカミだった!?  作者: 永遠眠
第2章 異変と急変
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あの液体、そして歴史。

時刻 07;00

何もない暗闇の中、辺りを見回しても何も存在しない虚無の空間。

瞬時にこれは夢だと理解した瞬間、


"お前のせいだ…!" "てめぇのせいで負けた…!" "あんたのせいで世界が…!"


脳裏に響く様々な人々の罵倒、暴言、非難する声。

中には知っている声もあれば、知らない声の人物もいる。


だがどれも共通して同じことを言っていた。



「 俺 の せ い ・ ・ ・ 。 」



意識が静かに覚醒し、ゆっくりと瞼を開ける。

頭を持ち上げ、未だ寝息を立てて眠るルイシャの方へと向ける。

手は未だアルフの体に触れている。


窓から朝日が差し込み、部屋の中を静かに照らし出す。


このまま動いたらきっとルイシャを起こすんじゃないかと動けず仕舞いで居たが、慎重に体を持ち上げてルイシャの手をベッドに戻す。

幸いなことにルイシャは起きることなく、そのまま眠り続けている。


一息つき、部屋の外を出ると朝日を眺めるエネラの姿があった。


『おはようございます、エネラ先生。』


声を掛けられてアルフの存在に気付いたのかこちらを振り向き、悲しそうな表情ではにかむ。


「おはようございます、アルフ様。よく眠れましたか?」

『あまり気持ちのいい目覚めとは言えなかったけど、なんとかね。』

「そうですか…。」


アルフはそのままエネラ先生の傍までやってくると、隣に静かに腰を落として座り込む。

傍までやってきたアルフを見て、エネラはまた朝日の方へ顔を向ける。

狼としての動作はどれもらしくなったもんだなと自負している。


そして流れ出す沈黙。

どれぐらい時間が経ったのか、長いようで短かったその沈黙を破るようにエネラは静かに語りだす。


「…あの赤い液体は、他の治癒ポーションといったような代物ではありません。」

『回復ポーションのような類ではないってことか?』

「そうです。あれはそういう生易しい類のものではございません。」


言葉を選ぶように話すエネラ。


(…エネラ先生のこの様子からして、よほどヤバい類のモノらしいが。)


「あれは…、"祖龍の純血"と呼ばれる品物です。」

『祖龍の、純血…?』


(名前からしてヤバいってもんじゃない単語が出てきたわけだが…)


「はい。この液体の説明をする前に、まずは祖龍について話さなければなりません…。」



祖龍…、この世界に生まれた全ての始まりの龍。原初の存在。

また祖龍には名を持っているが、この世界には存在しない古の言葉で紡がれているため、明確な名を知る者はいない。


その祖龍は人々に希望を授け、恩恵や加護を分け与えたと言われている。

そのため人々からは<アディ=プレア>と呼ばれ、尊敬と崇拝されていた。


だがある日、世界に魔王と呼ばれる災厄の存在が誕生し、世界を混沌に陥れ、滅亡を招いた。

魔族も人族も関係なく世界に住む8割もの生命体が死に絶え、誰もが絶望し何もかも諦めていた。


そんな時、暗黒雲を裂いて一筋の光が大地に差し込み、そこには勇者と名乗る人物が現れた。

勇者は人族の中から3人の英雄と祖龍と共に魔王を無事討伐し、世界に平和をもたらした。


だがその時にはすでに世界中に猛毒の瘴気で汚染され、生命体の住む環境はもうどこにもなかった。

祖龍は自らの力と体を5つに分けて5体の古龍を作り出し、5体の古龍らの力を持って世界の瘴気を浄化することができた。


そして勇者は自らの持つ聖剣を大地に差し、自らの力を大地に注ぎ込むことで大地に命を芽吹かせた。

世界は生まれ変わり、動物は命を育み、人々はまた希望を持って明日を生きるようになった。


それ以来、世界を救った5体の古龍と勇者、そして英雄たちは姿を消してしまった。

だが1体の古龍が、残された人々にこう告げていた。


"世界がまた滅亡の危機を迎えようとした時、我が同胞らが目覚め、勇者を助けるであろう…"、と…。



「…そして"祖龍の純血"、これは祖龍様が5体に分かたれる前に人々に授けられた自らの血液だと、そういわれています。」

(…多分この世界の歴史か何かなんだろうけど、かなり重要そうなワードが幾つかあったのも気になる。だがそれよりも…)

『なんでそんな古の遺物(オルドレリック)ほどのアイテムをエネラ先生が…!?』

「ええと…、その…。にゅ、入手できる、機会が…あったので…」


言葉をはぐらかしている辺り、これ以上の詮索はしてほしくないようだな。


『…わかった。でも、そんなアイテムがもうない…つか、それを使っても治せないんじゃ…』

「………。」


その先にある答えはもう絶望的だった。

ルイシャを助けるために、その液体と同等かそれ以上にアイテムを手に入れる決意をしていた身として、この話を聞いた後だともうルイシャを救う手はないと言っているようなものだった。


『そもそもその祖龍の純血の効能ってなんですか?』

「…簡単に言えば、アンジュ様の使うリジェネの最高ランクに位置する治癒魔法<オルド・ハイリジェネ>の効果をより強めたものだと考え下さい。」

『確か魔法で回復できるのは体力であって怪我その物は回復しないんだっけ?』

「そうです。ですが、この祖龍の純血は自らの持つ自然治癒能力を著しく強めるため、通常の用途で使えば逆にオーバーヒールとなり自らの体を傷つける恐れがあります。なのでこれをルイシャ様に使うのはどうか迷い、結果として問題はありませんでしたが自然治癒能力をもってしても治すことができませんでした…。」

『…もしあの時、祖龍の純血を飲ませていなければ死んでいたということか。』

「そうなりますね…。今、こうして生きていること自体が奇跡なのかもしれません…。そもそも運び込まれてきたあの時にはもうすでに死んでいた可能性だってあります…。」


そう話すエネラの表情は更に曇っていく。

もはや残された手立ては何もないとわかり、アルフは悔しさを噛みしめた。



特になし。

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