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異世界転生したら、まさかのオオカミだった!?  作者: 永遠眠
第1章 転生した先は…。
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かつての自分

時刻"11:30"


「ぬぅうん!」


ウルティアの一振りを、アンジュはその身に受け止める。

薄っすらとその身を覆う微かな光が直撃によるダメージのほとんどを軽減しているように見えた。


その側面から勢いよく飛び出してきたユリアはそのまま手にした剣で、ウルティアを貫こうとするがその熱い骨甲に阻まれ弾き返される。


すぐさまウルティアは持っていた武器の逆手についている剣でユリアを切り付けようとするが、慣れない動作のためか、ユリアもすぐさま盾で反応し、後方に飛んで衝撃を逃がしながら攻撃を受け流す。


「くぅ…、これでも痺れるかぁ…!」

「はあああぁぁぁ!!!」


ウルティアの死角から両手にダガーを構えて接近してきたラーナの斬撃が繰り出されるが、それら全てを剣を握っていない左腕の骨甲で全て受けきり、そのまま拳を突き出してラーナの腹部を殴り飛ばす。


「ぐぅう…ッ!」


そのまま吹き飛ばされるが、空中で受け身を取りつつ数回転した後に地面に着地した。

ユリアはすぐさま小言で何かを呟くと手のひらに光を宿し、それをラーナへと翳す。


ラーナの体が淡い深緑の光に包まれる。

先ほどまで苦痛の表情を浮かべていたラーナから、痛みが引いたかのようににこやかになる。


「ありがとー!」

「今のは良い線いってたよ!でもあまり無茶はしないでね!」

「そ、そう!? えっへへ、少しは私も成長したってことかな…!」

『ちょぉっとぉ…!早く攻撃に戻ってぇ…! あたし一匹"ひとり"じゃ、受け止めきれないんだからぁ…!』


とウルティアの重い斬撃を必死に受け止めているアンジュが悲痛の叫びをあげ、ユリアたちに支援を求める。

ユリアは慌ててアンジュにも先ほどの回復系の魔法をかける。


ラーナはすぐさまウルティアの死角に移動しながら、素早い動きを維持しながら攻撃の隙を伺っていた。


そんな彼女らの動きを見ながら、傍にいたアルフにエネラは問いかける。


「若様から見て、彼女たちの動きはいかがでしょう?」


アルフから見るに、彼女たちの動きはそれほど悪くはない。


アンジュは以前に見た防御系に特化したスキルを用いて、攻撃を引き受ける"タンク"役に徹している。


ラーナは総攻撃による"アタッカー"役なのだろう。持ち手のツインダガーを見る限り、相手の死角に居続け、隙を見つけては強力な攻撃を叩き込むことに拘っているように見える。


ユリアは以前に見た動きとは大きく違い、アンジュとラーナの動きを見つつ、アンジュへの回復、意識を反らしてラーナの動きをサポートしたりしている。


それぞれが自らの役割に徹しし、連携を意識して動いている。

多分、ここに回復がメインの、"ヒーラー"役がいればもっと変わっていたのだろうな。


『うん…、悪くはないと思う。後はあそこに回復役がいれば皆はもっと自由に動けていたと思う。』

「……そうですね。」


"うん? 今の間は一体なんだったんだろう?"


『これが…、戦い…、ですか…。』


ふと背後から聞こえたルイシャの驚きに満ちた思念話術。


今まで戦いとは無縁の孤児院で育ったルイシャ。

彼女の身に起きた悲惨な事件はあったものの、ルイシャ自身がこうして初めて"戦闘"を目の当たりにしたのはこれが初めてなのだろう。


開いた口が塞がらないのか、ルイシャは口が開いていることに気が付くのはもう少し後のことだった。


『さて…、エネラ先生が本当に問いたいのは、ウルティアの方なのだろう?』

「…はい。あの動きはどうにもぎこちのないもので、明らかに戦闘に支障をきたしているほどと見受けられるんです。本当はオルダスさんがこういったことにすぐに気づいて、指導できると思うんですけど…」


"なるほどな。多分、1人で鍛錬するウルティアにユリアたちを嗾けたのはエネラ先生か。"


ウルティアの動きは明らかに鈍い。

アルフを助けに来たあの時のウルティア…、ディアブロアだった頃の動きの方が何十倍もキレがあった。


今のウルティアの動きは何もかもが鈍い。

ディア・ブ・ロードとなってまだ日が浅く、その身に慣れていないという理由もあるのだろう。

だが、それにしては攻防の際の動きが激しく違う。


防御の方は問題はない。

問題はない、というよりは完璧なほど。


相手の動きを正確に捉え、それらの攻撃を全て受け流し、硬い骨甲で防御している。

それらの動きには無駄な動きがほとんどない。


それに比べ、攻撃の方が格段と鈍い。

武器を振る速度こそ早く、その重い一撃は見る者を圧倒するほど。


そしてそのぎこちない動きに、アルフは少なからず見覚えがあった。


『…ミノタナトス、か?』

「ミノタナトス、ですか?」


そう、アルフを瀕死にまで追いやった赤き猛牛の怪物。

そしてディアブロアが敗れた宿敵だった存在。


そう、今のウルティアはまさにそのミノタナトスの動きを真似ているようだった。

その姿に、アルフはまた別の誰かの影が重なって見えた。



――くそ…、全然だめだ…。どうやったらあんな動きができるんだよ…



脳裏に響く、かつての自分の姿。

まだ、一匹狼"マーヴェリック"と呼ばれる以前の自分。


強さを求め、必死に他人の動きを真似ようとしていた自分。


今のウルティアはまさに、以前の自分と全く同じだった。

強さを求め、強者の動きを真似てその強さを自分のものにしようと足掻いていた頃の自分。


『…なるほどな。』

「何かわかったことでもありましたか?」

『ああ。今のウルティアは、かつての俺なんだよ。強くなろうと努力せず、他者の動きを真似てその強さに肖ろうとしていた俺なんだ。でも、結果は分かる通り、今のあのウルティアだ。』

「若様…。」

『それじゃあ強くなれないんだ。あれじゃあだめなんだよ…。』


アルフが語るその言葉は、とても悲しく、とても苦しく感じた。



特になし

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