朝からの演習
時刻 "11:00"
オードンはへこたれているジュレアナの元まで歩み寄り、羽織っていたマントを脱ぐとほぼ裸同然となっているジュレアナに掛ける。
「あり…がとう、ございます…。」
「よい。素晴らしい奮闘であったな。」
「あそこまで戦えるんなら上々だわな。よくやったと思うぜ?」
と先ほどまで戦ったジュレアナの戦いぶりを評して白き闇なりの賞賛を送る。
オードンは未だに震えるジュレアナの背を摩りながら、白いモヤモヤに戻ったマーヴェリックの方を向く。
その眼には若干の怒りが混じっていたが、それよりも疑問の方が勝っていたようだった。
「…して、最後のあれはいったいなんだ?」
「最後の、あれ?」
勝敗は決した。
なのにもかかわらず、白き闇はジュレアナを押し倒し、頭をゆっくりと開いてジュレアナを包み込もうとしていた。
これはただアルフから流れてきたカービス・ベヘモスの動きをそのまま実行しただけに過ぎない。
そのため、その動きにどんな意味があるのかなんて、白き闇は知る由もなかった。
ただ、イメージしたアルフ自身もその理由はわからないようだったが…。
「あぁー…。いや、ついその場のノリでやっちった…みたいな?」
「ではあの行動には意味はないのか? もし意味があるのならばそれも注意すべきものだと思うのだが…」
「あ、いや! そうでもないと…思う…」
「…ふむ、どうやら貴殿らにも理解できていないと見える。だが注意はすべきだろう。ジュレアナ、立てるか?」
「え?は、はい…。」
「ではアダント殿、そしてアルフ殿。マーくん、朝早くからすまなかったな。では失礼する。」
ジュレアナの肩をそっと抱き、ジュレアナもオードンの肩に捕まり、ゆっくりと立ち上がった。
白ローブたちと共に魔法陣の中へと入るとそのまま姿が消えた。
『ではアダント様、私等もこれで失礼させていただきます。今しがた手に入れた興味深い情報を整理、仲間たちに共有せねばいけません故。』
「私はシェラディ様にお伝えしに行かせていただきます。」
『うむ、全ての者に今の戦いに関する情報を伝え、更なる対策を練るのだ。』
『はっ!』
アドゥレラとラーヴァリアはそれぞれ翼を広げて別々の方へと飛び立って行く。
残されたアルフと白き闇は蜘蛛の間へ、アダントとエフィはそのまま周辺の警戒に戻っていった。
『なぁ、マーくん。』
「なんだい、アルちゃん。」
『…、質問が幾つかあるんだがいいかな?』
「どんとこいってやつよ。」
蜘蛛の間へ向かっている途中、ゆっくりとした足取りで歩くアルフの隣でフラフラと揺れるマーヴェリックへと問いかける。
『確か召喚時間があったはずだけど、なんでまだ出ていられるんだ?』
「…あー、まあちょっとした理由があるんだよこれが。」
『それは今話せない事か?』
「そのうち、そのうちな!」
『…わかった。んでもう一つ、最後にマーくんが取ったあの行動についてなんだけど…。多分、自信はないけど、捕食行為だと思うんだ。』
その言葉を聞いて白き闇の揺れが微かに止まる。
そしてじりじりとアルフへにじり寄る。
「…なんでそう思ったんだい?おにーさんに話してみなさい。」
『自信ないっていっただろ!?』
その気持ち悪い動作にアルフはにじり寄ってきた白き闇を追い払うように前足で払う動作を取る。
白き闇はケケケッ!とからかうような笑いを上げてアルフから離れるが、アルフはその場に制止した。
『…正直、わからないんだ。何も。なんでカービス・ベヘモスのああいった情報を知っていたのかも。あの行為が捕食行為だって思ったことについても。』
頭を垂れ、考え込むように唸り声を上げる。
そんな様子を見て、白き闇は先ほどとは違って今度は普通にアルフの傍まで近寄り、そっと頭に白い手を置いて優しく撫でる。
「ま、今はわからないことでもそのうちその理由はわかってくるさ。俺だってわからないしな。」
『マーヴェリック…。』
「…にしてもこれは貴重な体験だ。なんせ自分自身の頭をこうして撫でてるんだぜ?イーヒヒヒヒ!」
『…はあ。』
そんな様子で蜘蛛の間へと戻っていく。戻るころには白き闇はアルフの影の中へと入り、姿を消していた。
広場に戻るとそこにはアンジュとラーナ、そしてユリアの3人がウルティアと戦っていた。
そこから少し遠い場所からエネラとルイシャが見守っている姿が見え、アルフはエネラの元へと移動した。
こちらへ近づいてくるアルフの姿を見つけ、ルイシャの表情が明るくなり、エネラも優しく微笑みかけてくれた。
『エネラ先生、これは…?』
「ええ、これは…」
エネラ先生の話を要約すると、ウルティアがアダントから授かった、元はミノタナトスの武器をよりうまく扱うために自己鍛錬しているところにアンジュとユリアがやってきて、一緒にやろう!という話になり、そこにラーナも加わってちょっとした演習みたいな形になった、とのことだった。
そしてエネラの腹部にルイシャがいるのは、薬を飲んで体調がある程度回復し、ずっと部屋にいるのも身体に毒ということもあり、またルイシャもその演習が見たいといった要望もあって、エネラの腹部に乗って遠くから眺めることになった、とのことだった。
『そうだったのか。もし具合が悪くなったらすぐに言うんだぞ?』
『はい…、お気遣い…、ありがとう…、ございます…!』
『おお、思念話術もなかなか上達したみたいだな。がんばったじゃないか。よしよし。』
とルイシャの頬を撫でようとするが高さ的に無理があったたため、ルイシャの腰の方を頬で摩る。
ルイシャもフフッと笑い、アルフの頬に手を触れ、優しく摩った。
まるで愛犬を優しく撫でるような…。
『して、状況はどんな感じだ?』
と改めてアンジュたちの方を見ると、意外とウルティアを圧倒していた。
特になし。




