泥沼勇者と悪魔熊
時刻 "12:40"
「てぃやぁぁぁああああ!!!」
「きゅううううう!!」
あの後、ユリアを自分たちの狩りに誘い、共にレベル上げをすることになった。
未だアルフのレベルは2のままではあるが、この辺りの敵程度なら"致命の一撃"による一撃死の範囲内なので、ユリアとアンジュのレベル上げがメインとなった。
"戦闘を始める前に〈闘志を震わす遠吠え〉を上げてユリアとアンジュのバフ焚き、敵のデバフ焚きでわざわざ俺から攻撃しなくてもユリアとアンジュが頑張って倒せれば俺にも経験値とボーナスが来るからね。"
ある意味寄生行為である。
そして今、1時間の激闘の末、ユリアとアンジュは無事新しく見つけた鳥獣族スクイエントを倒した。
見た目はリスだが、体は木で出来ており、所々から苔が生えている。
また全長は1mとそこそこ大きい。また両肩からは小さめの苗木を宿しており、それらを使って近くの木に擬態していたようだった。
目に当たる部分は空洞の様になっており、青白い光が目の代わりとなっていた。
正直、こんな見た目のスクイエントではあるがなぜ植物ではなく鳥獣種なのか疑問だった。
注意深く見なければ見逃してしまうほど擬態率は高く、気配察知にも引っ掛からない特性を持っている。
特性というよりも完全に気配を消して擬態しているため、引っ掛からなかったと考えれば妥当か。
そんな擬態して隠れているスクイエントをこうして見つけて戦っている理由が一つ。
そう、ユリアの素振り中に手元からすっぽ抜けた木剣が近くの木に擬態していたスクイエントの御尻部分に直撃し、激昂したスクイエントが襲い掛かってきたからだ。
ちなみにステータスはこんな感じだった。
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スクイエント Lv8
名前:無し
種族:鳥獣種
ランク:F
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バトルスキル
・体当たり Lv2
・噛み付き Lv2
・木の蔓鞭 Lv3
アクティブスキル
・光合成 Lv5
・***** Lv***
パッシブスキル
・擬態 Lv5
弱点
・真核 :ダメージ2倍
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ユリアの相手にしてはもってこいではある。
もってこいではあるのだが、何分明らかに戦闘初心者のユリア、まともな攻撃方法を持たないアンジュ。
んで、異常なほどまでに硬いスクイエント。
これらが生み出す式の答えがぐだぐだ戦闘である。
ユリアの剣撃をその木の体で簡単に受け止めると尻尾の蔓鞭による反撃、何とか距離を取ってアンジュの回復を受ける。
その後また剣を振り下ろすも今度は攻撃を躱され、そのまま反撃を喰らって吹き飛ばされる。
何とかユリアを掩護しようと聖なる光でユリアを包み、またリジェネとヒールで即時HPの半分以上を回復し、尚且つリジェネ効果により数秒単位の回復。
それでそうそう瀕死になることはないのだが、唯一の攻撃点であるユリアの攻撃がまともに効かないため、スクイエントのHPをなかなか削ることができない。
またMPも無限ではないため、そのうちアンジュのMPが尽きてしまう。
そうなったら回復ができなくなり、ジリ貧になることは明らかだった。
そのため、アンジュもスクイエントへ攻撃を仕掛けるが、そもそもまともな攻撃手段が引っ掻き、噛み付き、体当たりの3つだけ。
何度かアルフとの共同狩りにより熟練度は上がっているものの、それでも体当たりがなんとか3に上がっただけで他のレベルが2というもう支援だけに特化でもしていた方がまだマシという残念なモノになっている。
それでもレベルが一番高い体当たりでスクイエントへ攻撃をするが、尾の先でアンジュの頭を抑える様に当てられただけで体当たりすらまともにできない。
それでもユリアは諦めることなく、何度も何度も剣撃を当て続ける。
そのうち、スクイエントの反撃をギリギリ躱せるようになり、一方的に攻撃できるようにはなった。
だが、弱ってきた辺りでスクイエントはスキル<光合成>を発動し、HPを回復するというただでさえ硬い上に回復スキル持ちという難敵にユリアとアンジュは互いに絶望しかけるほどだった。
それでもふたりは諦めず、果敢に攻撃してはスクイエントの攻撃を回避し、反撃に移ると繰り返し続け、2回目の<光合成>発動時にユリアが両肩から生えた小さな苗木から<光合成>を発動させることに気付き、今度は両肩から生えた小さな苗木を中心に攻撃し、無事2本の苗木を切り落とす。
回復できなくなったスクイエントはもはやなす術もなく、ユリアとアンジュの猛攻に耐え切れなくなり、最後にはユリアの突き刺しが見事スクイエントの真核を貫き、勝利できた。
これでも一応、<闘志を震わす遠吠え>によりふたりの能力値を上昇させ、スクイエントの能力を低下させていた。
その上でこの泥沼に、アルフは静かにため息を付いた。
『ふたりとも、お疲れ様だ。』
「あ、あはは…や、やっと、倒せ、た…」
『もー…あんなの、きっつい…。』
スクイエントを倒した際、無事アルフのステータス倍増ボーナスも得られたことを確認し、疲れ果ててその場に座り込むユリアたちに労いの言葉を掛ける。
ふたりは近づいてくるアルフの方を向く気力すらないのか、俯いたまま返事を返す。
アルフはそのまま横たわるスクイエントへと近づく。
気が付けばスクイエントの骸からはすでに無数の植物の芽が出ていた。
"スクイエントは死すればこうして大地に還るというわけか。"
新たに見つけた自然の神秘、その摂理にちょっとした感動を覚えた中、陽の高さを確かめるべく空を見上げた。
位置的にそろそろ昼飯時か。
『ではそろそろ戻ろうか。ユリアはこれからどうする?』
「私?んー…、もう少しこの辺りで修行も兼ねて素振りの鍛錬でもしてるかなー。」
『ならあたしたちと一緒にご飯食べようよ!』
「え?」
アンジュの提案に予想外な反応を示すユリア。
補足を付け足す様にアルフもユリアを誘ってみる。
『…そうだな。正直、あのまま素振りしてて今回の二の舞でも起きたらユリアだけじゃ対処しきれないと思うし、だったらこの後の食事でも一緒にどうかなと思っていたが…』
「ちょっとー!? い、一応私一人でも大丈夫だってー!」
『そうか? わかった。それじゃあ昼食を食べに一緒に行こうか。』
「聞いてないでしょそれ!?」
反論するユリアの意を無視し、そのまま蜘蛛の間へと向かって歩き出す。
後方ではアンジュの頭に押され、渋々アルフの後を続くユリアたち。
それから数十分後、蜘蛛の間に到着したアルフたちを迎え入れたのはラーナたちだった。
「あ、おかえりなさ…って、ユリア様!?」
「ちょっと、様は付けなくていいって言ったじゃないの!」
ユリアを一目見て嬉しそうにユリアに駆け寄るラーナ。
恥ずかしそうに自分の呼ばれ様に訂正を加えつつも、駆け寄ってきたラーナと再会のハグを交わす。
"そっか、元々ラーナの紹介で探索の依頼をしていたんだっけか。"
「もう…心配したんだからね、ラーナちゃん…。」
「えへへ…。でも、ごめんなさい、まさかこんなことになるなんて思っても見なくて…」
「仕方ないよ、今回のは異常すぎるってギルドマスターが慌ててた程だからね。」
「そっちはそんな事態に…。」
と近況を報告し合うラーナとユリアを余所にアルフとアンジュはルイシャの居る部屋へと向かう。
部屋に入ると、ルイシャは起きていたようで部屋に入ってきたアルフたちに気付き、笑顔いっぱいで出迎えてくれた。
『すまない、遅くなったな。』
『ごめんね、ルイシャちゃん。』
「…んーん。」
首をゆっくりと横に振るルイシャ。
2匹はそのままルイシャの両脇に近寄り、ゆっくりと腰を下ろす。
『昼食の時間までまだ時間はあるから、それまで思念話術の特訓をしようか。』
「…!!」
『だいじょーぶ! ルイシャちゃんを全力で補佐するからね。今日中にはできるようになろうね!』
そして、昼食が始まる時間までアルフとアンジュによる思念話術の講義が始まった。
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基礎ステータス 上昇率倍増ボーナス 1/5
生命:15 ☆★★★★ 上昇率倍増ボーナス
筋力:23 ☆★★★★ 上昇率倍増ボーナス
魔力: 4
体力: 8
信力: 7
俊敏:35 ☆★★★★ 上昇率倍増ボーナス
ボーナスポイント:6
*レベル3へ昇格が可能です。
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<スクイエントの生態について>
ランク:C
体のどこかに小さな木を生やした樹木の体を持つリス型の魔物。
基本的に木の枝に擬態し、天敵から身を守っている。
光合成によって栄養を作り出し、それを餌として取り込む。
またほかに木の実を食べることで、体に生やした小さな苗木に食べた木の実を生やすことができる。
攻撃方法としては長い尾を使った近接、そして木の実を飛ばしてくる遠距離とどちらもこなしてくる。
また樹木で出来た体ということもあり、斬撃や打撃といった近接攻撃への耐性があるため、防御力も相当高い。
そして体力が減ってきたら光合成を行い、自らの体力を回復することも可能である。
そのため決定打不足している序盤や中盤クラスの冒険者がスクイエントに挑むと、かなりの長期戦を強いられる場合があるため、序盤で挑むモンスターではない。
もし遭遇し、戦闘になったのなら弱点である"火"を積極的に用いて攻略するとよい。




