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異世界転生したら、まさかのオオカミだった!?  作者: 永遠眠
第1章 転生した先は…。
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勇者の事情

時刻 "11:20"


ちょっとした広場にて三人は休息を取る様に近くの切り株に腰掛ける。

ただし、アンジュはそのままユリアに抱き抱えられたままのため、若干アンジュはしかめっ面を浮かべていた。


『あの魔女っ娘はどうなった?』

「うん、ジャーニーは無事安全な場所まで避難できたよ。」

『そうか、ならよかった。』

「アルフくんも無事で、本当によかった…。」


目に涙を浮かべ、今にも泣きそうになるがぐっと堪えて裾で拭い、アンジュをまた強く抱きしめる。

アンジュはもう慣れたのか、苦しそうな表情を浮かべてはいるが嫌がる素振りは見せなくなっていた。


"これは慣れた、というよりも逆に居心地が良くなったとかかな"


「…あの後、ジャーニーを安全な場所に送り届けた後、アルフ君を助けに募集を募ったの。でも…」

『誰も集まらなかったんだろう?』

「…うん。誰も魔族の救出を手伝う冒険者はいなくて、またミノタナトスがいるという情報もあったため完全に無視という形だった。だから私だけでも助けに向かったんです。後からバンダルドも来てくれたんだけど…。」


結局バンダルと共にあの場所に戻ったが、そこにはオゥクロプスたちとミノタナトスの死骸が積まれていただけで、肝心のアルフたちの姿はなかった。

そのまま周囲を探索したが、結局手がかりは何もなかった。


「その後もアルフ君の生死だけでも確認できるものはないか調べてみたんだけど、結局分からず仕舞いだった。そのままバンダルドと帰ったんだけど、冒険者ギルドに用があるって私一人だけ宿屋に帰ることになって…。でもあの戦いで、私何もできなかった。悔しくって…」

『だから1人でここに来て鍛錬の練習をしていたのか?』

「だって! 私、勇者っていう割にはそんな力も強さも何もないんだよ?! 勇者はみんなを守る存在なのに、逆に守られてばかりで…だから…。」


そう話すユリアの表情は暗いものだった。

以前から何度もジャーニーたちに助けられているのだろう。


本来なら、勇者と聞いたら特別な力とか特殊な技とかで敵を圧倒したり守ったりするイメージなのだが、今目の前で悲痛そうに話す少女からはそういったものは一切感じられない。


初めてであった時もそうだった。

他の仲間たちからは強者のような威厳、風格を感じられたがユリアだけは違っていた。

ユリアだけが、ただ鎧や武器を装備しただけの女の子という風にしか感じられない。


何かしら理由があるのか、それとも成長していけばいずれは勇者としての風格も出てくるのだろうか?


『歴代の勇者たちも序盤はユリアと同じように弱かったのか?』

「うっ…! ストレートに言ってくれるなぁ、アルフくんは…。」

『変にごまかした方がなお傷つくと思ったからな。』

「…うん、確かに。えっと、今までの勇者様は7人いたと思う。その中で初代勇者様が圧倒的な強さを誇ってたみたい。その次の勇者様も類を見ない圧倒的な力を宿して最初からすでに使いこなしていたみたい。それから6代に渡って魔王を倒していったそうだよ。」

『つまりユリアは8代目勇者ということになるのか。』

「うん。でも私自身そんな特別な力を感じたこともないし、歴代の勇者様のような強い何かを手に入れたなんてこともないよ。」


ユリアはゆっくりと立ち上がり、抱き抱えていたアンジュを先ほどまで座っていた切り株にゆっくりと座らせる。

そしてどこか遠くを見るように何かを懐かしみながらぽつりと語り始めた。


「私ね、ここからずぅっと先、"世界の端〈ディワンド〉"なんて呼ばれた場所に位置する小さな村で住んでたんだ。ほんと何もない小さな村だったけど、そこに住む皆は家族みたいに一緒に育ってきたんだ。そんな村にある日ね、突然教会の司祭様なんて人が現れて、"お前は勇者に選ばれた。"なんて言ってきてさ、私を無理やり連れて行こうとしたんだよ。もちろん村のみんなは猛反発した。でも、村長の息子で私の幼馴染だったナンドゥが突然教会の騎士に殺されたんだ…! "司祭に背くは神を背くと同じ。神に背く異端者共は全て皆殺しにせねばならない!"とか言ってね…。だから私皆を必死に止めたの…皆を助けるにはそうする他なかったから…。」


喜怒哀楽、その表現が様々に浮き出るユリアの表情は見ていて飽きるものではなかった。

だが最後の方ではその場でしゃがみ込み、顔を俯かせていた。


表情は見るまでもなかった。

きっとナンドゥという名の少年の突然な死に未だ受けきれていないのだろう。


ナンドゥが殺された光景を鮮明に思い出してしまったのか、未だ立ち上がらずに肩を震わせている。

アンジュがそっと震えるユリアの傍まで近寄ると頭でそっとユリアの肩に触れる。


それに気づいたユリアはアンジュの優しさに甘えるようにアンジュを優しく抱き抱えた。


「…ありがとう、アンジュちゃん…。」

『ちゃんはいらないわよ、アンジュでいいわ。』

「うん…、ありがとう…ありがとう、アンジュ…。」

『…あたしでいいなら、いつでも胸を貸すからね…。』


どこかしらアンジュにも似た境遇を感じているのだろう。

破壊の象徴であるデモンベアであるアンジュは破壊的力を持たず、勇者であるユリアは特別な力を何も持たない。

    

そんな1人と1匹だからこそ何かしら感じるものがあるのだろう。

ユリアがアンジュを抱きしめる光景を、アルフは優しく見つめていた。


決定的なモノが欠けた"ふたり"は、その種をも超えた絆で結ばれることは遅くはなかった…。



なし

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