運命の出会い。
時刻 "1:55"
「おぅらぁあああああああああ!!」
雄叫びを上げ、オゥクロプスたちが一斉に1人の戦士の方を見る。
ずっしりとした体型で身長は大体1.8m強…ぐらいか?
見るからに防御系の戦士、つまりはタンク役だな。
オゥクロプスたちが戦士の方へ一斉に向かっていく。
右手に持った巨大な盾を振り回してオゥクロプスを叩き潰し、左手に携えた小型の手斧で頭をかち合わったりしている。
棍棒をその巨大な盾で防ぎながら、攻撃後の隙を狙って反撃をしていく。
だが数が数なだけに全ての敵を対応できず、幾匹のオゥクロプスたちが戦士の視界を掻い潜り、死角からの棍棒の一撃を繰り出そうと大きく振り上げる。
だが振り下ろす前に次々とオゥクロプスたちの上半身が爆発し、黒く焼き焦げた上半身が煙の中から現れ、力無く地面へと倒れる。
≪我、求むは力なり。大いなる原初の力、すべての始まり、紅蓮の花を咲かせ、その姿を顕現せよ!≫
「 " 原 初 の 紅 き 花 の 開 花 "〈エ・フィオ・ルド・レア〉!!」
戦士の背後、その後方から大きな黒帽子を被った小柄の女性が幾つかの装飾が施された木の杖を天へと仰いだ。
上空で突如、雷雲がぶつかり合い、大気が震え、地上に雷が轟き、それがオゥクロプスたちに直撃していく。
地上に降り続く雷が徐々に一点へと集まっていき、更に雷が連撃して振っていく。
そしてそれらは一つの雷へと形作り、一本の巨大な雷が地面を貫いた。
貫いたと同時に、地面を走る雷がオゥクロプスたちへと感電していく。
巨大な雷が貫いた地面の中心から小さな赤い芽が芽吹き、それは徐々に大きくなりながら成長していく。
それは全長5mを超すほどの巨大な蕾へと成長し、その蕾はゆっくりと開いていき一輪の美しい花を咲かせた。
満開になったと同時にその赤い花は発光し、そして弾け、巨大な爆発を生んだ。
周囲に居たオゥクロプスたちが爆風に埋もれ、原型をとどめることなく肉塊へと姿を変えていく。
「ざっと、こんなものね。」
その少女はそう呟き、杖を地面へと立てるように置く。
その場にいたオゥクロプスたち全てをその爆裂魔法により排除したかに思えたが。
「フゴフゥゥウウウー!!!」
1匹が仲間を盾にして生き残ったらしく、仲間の死骸から突如として姿を現した。
突然のことに戦士は一瞬反応が遅れ、オゥクロプスの棍棒の一撃を受けきれずに吹き飛ばされる。
その勢いのまま、小さな魔女へと向かっていく。
「え、うそ!?」
小さな魔女も戦士が吹き飛ばされることは予想外だったようで、杖を構えるのが遅れてしまう。
その一瞬の隙を狙い、オゥクロプスはその棍棒の一撃を小さな魔女に向けて振り下ろす。
直後、どこからか一人の黒髪を靡かせた少女が小さな魔女を突き飛ばしてその棍棒の一撃を受ける。
重く鈍い音が鳴り、受け止めた黒髪の少女が地面へと沈む。
「くぅ…! 結構キツイ一撃だね…!」
「ユリアちゃん!」
「勇者殿!」
小さな魔女と戦士が同時に叫ぶ。
彼女を呼ぶ言葉に、アルフは一瞬耳を疑った。
"勇者って…、え、この世界にもそんな役割を担う子がいたのか。"
少女は何とかその一撃を受け止め、そのまま力任せに棍棒を叩き切る。
棍棒が真っ二つに切られ、狼狽えるオゥクロプス。
その隙を逃すことなく、ユリアと呼ばれた勇者はオゥクロプスの首へと剣を突き刺し、そのまま剣を抉る様に回して大きく切り裂き、オゥクロプスの首を切り落とす。
首を失った胴体は力無くユリアへと倒れ込む。
その事に気付いたユリアはそこから距離を取ろうとしたが、足が縺れ、尻餅を付いてしまう。
「うわっ! …え、う、うそ…?!」
「え、ちょ、ユリアちゃん!?」
「勇者殿ぉ!?」
後数秒で、オゥクロプスの巨体に押し潰されるその瞬間、ユリアの身体が何かに掴まれ、勢いよく放り出される。
その直後に先ほどまでユリアがいた場所に首を失ったオゥクロプスの巨体が倒れた。
「きゃっ…!? な、なん、なの…?」
放り出されたユリアは一体何が起こったのか、自分を救ってくれたであろう何かを見る。
そこには銀色の毛並みを持つ狼がユリアを見下ろしていた。
『…無事のようだな。』
「え、えっと…あ、ありがとう…?」
「勇者様!」
背後からどこか修道女のような恰好をした少女が現れ、ユリアにヒールを掛ける。
白い光がユリアの体を包み、露出していた素肌に付いていた擦り傷等が消えていく。
「もう、あんな無茶はしないでください!」
「えっとぉ…ご、ごめんねポーラ…あはは~…」
「笑い事じゃありません! もう、勇者様の体は我々と同じなんですから…」
"勇者の体がこの人たちと同じってどういうことだよ…。"
普通の体じゃないってことなのか?
まあ勇者と呼ばれるくらいだし、他の人とは違う何かを持っていてもおかしくはないんだろうが…。
「ちょっと、ユリアちゃん! 大丈夫!?」
「え?あ、うん。私は平気だよ~。ジャーニーは無事?」
「私はユリアちゃんのおかげで無事よ? はぁ…、でもごめんね。まさかあの魔法で生き残る奴がいるなんて思わなかったから。」
「すまぬ、勇者殿…。ワシがもっとしっかりと防御していれば…」
「いいえ、バンダルドさんは悪くありません。」
"う~ん、これ明らかに俺空気だよなぁ…。"
とりあえず彼らは勇者御一行様だな。
それぞれ戦士、勇者、魔法使い、僧侶っていうテンプレパーティーか。
「それにしてもやはりオゥクロプスたちのこの数は異常です…。」
「そうね…、それに"残虐の峠"に住むこいつらがここにいることだけでも異常よ。」
また新しいエリア名が判明した。
"残虐の峠"…、たぶんここではない別のエリアの一部なんだろうけど…。
『この世界の地図とかでも見てみたいな…。』
「え?」
「あ、そういえば居たんだっけ?」
「む、何奴…!」
「あ、あれ…?」
"そもそも俺の存在すら気づいていなかったわけか。ちょっと悲しい…。"
ちょっぴりと顔をしょんぼりさせるも、それを表に出さずに再度ユリアたちを見る。
よくよく見ると彼らは通常よりもなかなか強そうな見た目…というか雰囲気を感じる。
戦士は歴戦の猛者、小さな魔女は大いなる賢者、僧侶は立派な司祭。
この3人は異常なまでの強いオーラを感じるが、勇者と呼ばれたユリアからは…
"普通だな…。"
そうとしか感じられなかった。
一体何を基準に勇者として認定されているのか不思議なくらい、ごくごく普通の女の子にしか感じられない。
『こんな』
「こんな子が勇者、なーんて思ってたでしょ?」
見透かしたようにユリアはそう言い放つ。
冷や汗を書きつつも、そっと視線を反らす。
それを見てニターッと笑うユリア。
この時、銀狼アルフと勇者ユリアの出会いは、後に大いなる波乱を巻き起こす運命的な出会いであることは、この時、誰も知る由はなかった。
勇者の見た目をどんなものにするか考えてたら2日も経ってしまった。
結局、自分自身の好みの子にしちゃったけど、後悔はなし!
ということでやっとこさのヒロイン登場です。




