殲滅
時刻 "00:50"
「ななな、なんでこんな所にオゥクロプスがいるのよぉ…!!」
怪我をした小さなディアプニルの幼体を抱えている赤毛の少女。
皮の鎧に身を包み、そことなく露出はない堅実な作りのモノを着込んでおり、兜で顔を隠してしまえば女のことはわからないほどだった。
だが少女は兜をかぶっておらず、その月の光に照らされ反射する真紅の髪が印象的だった。
足元に潰れた兜のような何かの残骸を見る限り、吹き飛ばされて兜が獲れてしまったのだろう。
剣を構えた少女は恐怖で体が震える中、必死に目の前に仁王立ちしているオゥクロプスと対峙する。
すでに目には涙を浮かべ、今にも逃げ出してしまいそうなほど腰が引けていた。
「人探しの依頼だって言うからぁ…私、探しに来たのにぃ…どうしてアイツがいるのよぉ…!」
何時からこの森はこんな物騒になったのよぉー!と叫びながらもオゥクロプスの様子を窺っている。
少女は必死に逃げる策を思いつこうと頭を巡らせるが、状況がさらに悪化することになった。
オゥクロプスの背後の茂みから更に計5体のオゥクロプスたちが姿を現したのだ。
それを見るや否や瞳から生気が失われ、絶望色に染まる。
「そん、な…。まだ出てくる、なんて…。あ、あはは…だめだぁ、私死ぬやつだこれぇ~…」
完全に絶望したのか、少女はその場にすとんと座り込んでしまった。
「キュウ…」
その時、少女の頬を伝う涙を幼きディアプニルが舐める。
顔を上げると、心配そうに少女を見つめるディアプニルの幼体と目が合った。
「…そうだ、この子だけでも…この子だけでも逃がすんだ…!」
そういうとディアプニルの幼体を地面に置いてゆっくりと立ち上がる。
ディアプニルの幼体に立ちはだかる様に両手を広げ、剣を握る手に力を入れた。
「逃げて! 君だけでも遠くまで! それまで私が時間を稼ぐから!」
「キュウ…!」
ディアプニルの幼体は少女が叫んだことの意味を察し、怪我した足を奮い立たせその場から逃げようとする。
一瞬、少女の方を振り向く。
頑固として先に行かせぬ少女の背中が見える。
ディアプニルの幼体は意を決し、痛む足に鞭を打って全速力でその場から逃げ出した。
オゥクロプスたちがその後を追うつもりで動き出したが、少女の鋭い剣捌きで所々を切り裂かれた。
「これ以上先に、あの子の跡を追わせたりはしない…!」
一体のオゥクロプスが少女に向けて棍棒を振り下ろす。
それをギリギリで受け流し、そのまま棍棒を握っていた腕を深く切りつける。
「フゴフゥーッ!?」
あまりの痛みに持っていた棍棒を落とし、切り付けられた傷をもう片方の手で強く抑える。
それを見て、別のオゥクロプスが少女に向けて突進していく。
これもギリギリの所で避け、すれ違いざまに背中を流し斬った。
痛みにそのまま足をもつれさせ、前のめりに転倒する。
少女は転倒したオゥクロプスへと追撃しようとした時、背後から急激な悪寒を感じ、咄嗟に振り向きざまに剣を盾の様に防御の構えを取った。
それとほぼ同時に強い衝撃が少女を襲う。
別のオゥクロプスがその棍棒を力任せに大振りをかましたのだ。
咄嗟に防御したおかげで直撃は免れたものの、大きく吹き飛ばされ、近くの樹木に強く叩きつけられる。
「かはっ…!?」
口から鉄のような味がする赤い液体が漏れ、吐き出した。
そのまま地面へと落ち、倒れる。
起き上がろうとするも足に力が入らない。
先ほどの叩き付けられた衝撃で、背骨を損傷したのか、足だけでなく両腕さえも力が入らない。
腕を切り付けられたオゥクロプスが少女に近づき、片手で少女の体を持ち上げるとそのまま地面へと力任せに投げつける。
鈍い音と共に地面へ叩き付けられ、左腕と右足があらぬ方向へ曲がってしまった。
「い゛ぃ…っ あ゛あ゛ぁぁ…ぐぅあっ!!」
強烈な痛みが少女を襲い、耐え切れず悲鳴を上げる。
それを聞いてオゥクロプスたちは気分を良くしたのか、ゲスな笑みを浮かべて笑い始める。
別のオゥクロプスが瀕死状態の少女を持ち上げ、皮の鎧に指を引っ掛けてそのまま切り裂き、皮の鎧を脱がしていく。
全ての鎧を脱がし、白い生地だけを来た状態の少女の姿を見て鼻息を荒くし始める。
「や…ぁ…いゃ…」
別のオゥクロプスが強引にその生地を破り、ほぼ全裸に近い状態にまで脱がされ、口から血を流しながらも満足に動かせないその体で必死に抵抗をする。
それを見てさらにオゥクロプスたちは興奮し始める。
少女を掴んでいたオゥクロプスが自らのソレを晒し始め、他のオゥクロプスたちも曝け出していく。
それを見て完全に絶望してしまったのか、涙が一筋少女の頬を伝う。
ゆっくりと目を閉じ、観念の意を示そうとしたとき…
「フゴフゥ!?」
突然聞こえたオゥクロプスたちの悲鳴。
何事かと目を開けると、さっきまで自分を掴んでいたオゥクロプスの頭部が消え、血が噴き出していた。
ゆっくりと仰向けに倒れるところで、少女の体が一瞬ふわっと浮いたと同時にフワフワした何かに乗ってその場から距離を取る。
視線を下に移すと、そこには銀色の狼がいた。
「え、私…この子に、乗ってるの…?」
今少女はその銀狼に乗って、危機を脱している。
だが、体がうまく動かせないため、そのまま乗り続けるのも難しいのか、銀狼に乗ったまま倒れてしまう。
『すまない、助けに来るのが遅れてしまった。だが、もう安全だ。』
目の前の白狼から聞こえてくる怒りがこもった声。
『この子を頼む。』
そういうと、どこからか少女の体に無数の白い糸が巻かれていく。
あっという間に白い服のようなものが出来上がっていた。すぐ近くで蜘蛛たちが大きな蜘蛛の巣を張っており、そこには黒い蜘蛛たちがいた。
『安心しろ、彼らは君の味方だ。今はあそこで治療を受けてくれ。』
「ぇ…、…ぁ、あの…貴方、は…?」
『アイツらを潰す。アイツらがいることが異常らしいからな。』
「で、でも…」
『大丈夫だ。どうやら俺一匹だけじゃないみたいだからな。』
「…え?」
「キューイ!」
背後から聞こえてきたディアプニルの声。
後ろを振り向くと、そこにはオゥクロプスよりも大きな図体を持つ、アンジュと共に見たあの時の3本角のディアブロアとディアプニルが来ていた。
どうやら助けを呼んでくれていたらしい。
ディアプニルの幼体はディアブロアの体から降りると、少女の傍まで駆け寄り、必死に頬擦りしてくる。
まるで心配していたかのように、また生きて会えたことを喜ぶように。
すると少女の目から涙が溢れ、ディアプニルの幼体を優しく抱きしめる。
「無事、だったんだね…!」
『…その子を助けてくれてありがとう。』
「キュイ!」
ディアブロアは少女の前までやってくると、静かに頭を下げる。
ディアプニルも同じように頭を下げ始め、少女は少し混乱し始めた。
ディアブロアはゆっくりとオゥクロプスたちの方へと向き直り、殺気を露わにし始めた。
アルフはその隣に立ち、静かにディアブロアへと話しかける。
『やれるな?』
「グォォォオ…!!」
もちろんだ、とでも言いたげに呻る。
それを聞いてアルフは頷き、力の限り、肺に溜めた空気を一気に吐き出す様に声を上げた。
「ウオオオオォォォォォォオオオオオオオオオオォオオオオン!!!!」
それが合図となり、ディアブロアはオゥクロプスたちへ突撃していった。
特になしかな。
修正:4体のオゥクロプス → 5体のオゥクロプス




