エネラと基礎能力のお勉強。
時刻 "15:30"
「はい、ではさっそく説明していきましょう。」
エネラは小さな木の器に黒い木の実を潰し、液体状になったモノを入れ、そこに細長い小さな木の棒の先を付けて濡らす。
大きな木の板に何かを書いていく。
見知らぬ文字ではあったが、その意味がすんなりと頭の中に入って来る。
アンジュもアルフと同様で何を書いているかわからないはずなのに、その意味はしっかりと頭の中に入って理解している。
それが不思議なようで度々頭を傾げていた。
「ふふ、今までは実践的な教えでしたからね。こういった教えは初めてでしょうから、まずは簡単にこの文字についてお話ししましょう。」
今エネラ先生が書いているのは、"魔文字"というもので、思念話術に近いものだそうだ。
これは念じた相手にしか読めない文字であり、他の者からは決して読むことは出来ない。
思念話術と違う点は、魔力を介して解析することが可能であること。
ただし、これは専門の知識が必要らしく、また解くにはじっくりと時間を掛けねばいけないということ。
そのため、思念話術の盗聴は出来ない。
「今わたくしはアンジュ様と若様の御2人が読めるようにと念じて書いているので読めているのです。」
『なかなか面白いな。』
「そのうち、アンジュ様と若様にも教えますから、その時はちゃんと取得できるよう頑張りましょうね。」
『はーい!』
「話が逸れましたね、本題に戻りましょう。
まず、"生命"という基礎能力について話していきますね。
"生命"。これはその者に流れる"生命エネルギー"、また体内に流れる魔力エネルギーも同様です。
生命エネルギー、魔力エネルギーの2つを司る能力です。
単純にこの能力が高いものは、異常なまでの生命力を持ち、また体内に流れる魔力エネルギーの量も増えます。
ただここで一つ"生命"についてちょっとしたクセがあるんです。
"生命"と同じ基礎能力である"筋力"、または"体力"が多ければ生命エネルギーの割合が増え、魔力エネルギーの割合が減ります。
そして"魔力"、"信力"が高いと今度は生命エネルギーの割合が減り、魔力エネルギーの割合が増えます。
これは本来、生命エネルギーと魔力エネルギーは均衡を保つことが難しいために起きる現象です。
生命エネルギーと魔力エネルギーが共に高い生物はほとんどいません。どちらかの割合が高く、どちらかの割合が低いのが一般的な常識です。」
ここで一つアンジュの中に疑問が生まれる。
それはアルフも同じだった。
『ねえ、エネラ先生。ほとんどいないってことは両方とも高い生物はいるってこと?』
「はい。生命エネルギーと魔力エネルギー、共に均衡を保ったまま高い能力値を持つ生物は現在、竜族と魔人と呼ばれる亜人族、そしてデモンベアの3種だけです。
この3種だけは基本的に全体の能力値は異様に高く、高い戦闘能力と高い知能を持っていると言われていますね。ただ、今現在、この3種族は数が少なく、滅多に出会えることは少ないです。
なので実質的にはほとんどいない、という解釈になります。」
『なるほどな、竜、そして魔人…。デモンベアは、まあそれとして名前の響きからして強そうだよ。』
「かつてこの3種族はその圧倒的な力で世界を制していたとも言われていました。」
『うわぁ…。でも滅多にということはまだ生きてるのもいるってことだよね。怖いなぁ…。』
『ちなみにアンジュもそのうちの1種だということを忘れるなよ?』
『でもあたしは特異種みたいで、全然高くないよー!ほんと、なんでだろ…?』
と首を傾げ、悩むアンジュ。
それを見て微笑ましく見ているエネラは話を続ける。
「では次に"筋力"について説明しましょう。
基礎能力の一つ、"筋力"。その名前通りに己の筋力が向上します。
筋肉が上がるだけじゃなく、"生命"というステータスにおいて、生命エネルギーの割合を増やす力も持っています。
また瞬発的な移動速度の向上や、重い物を持ち上げたり、硬い鎧や鱗を打ち砕く強大な力を得たり、ですね。」
『つまりは単純に考えて、物理的な強さとタフさがあがるってことか?』
「はい、その認識で間違いありません。
基礎能力の"俊敏"も同様に移動速度は上がりますが、こちらは純粋に速さ、継続的なものです。咄嗟に動く時には筋力が高ければその分瞬発的な速度が上がりますよ。
では次に"魔力"について。
これは体内に流れる魔力エネルギーを介して魔法を放つ際の密度を高める力になります。
密度が高ければ高いほど、より強い魔法を作ることが可能になります。
また密度の調整により、魔力エネルギーの消費を高めて高い火力を持つ魔法を発動させたり、逆に魔力エネルギーの消費を抑え、連続した魔法の発動なんてこともできます。
魔法に関して様々な応用や新しい魔法なんかの創造なんかもできたりしますね。
なので魔法を扱う生物は基本的にこの能力は高い子が必然的に多いです。
そして先の説明があったように"魔力"が高ければ、魔力エネルギーの割合を増やす力を持っていますね。若様とは相性が悪いですが、今のアンジュ様とは相性ばっちしですね。」
『せっかくだし、使えるようにはなってみたいんだが…』
「そこは若様の努力次第ってところでしょうか。」
『頑張るしかねぇか…。』
せっかく異世界に来たんだし、かっこよさそうな魔法の一つや二つポンポンできるチートキャラになってもよかったんだぞ、転生させたカミサマさんよ…!
なんて皮肉を胸の内で叫びながら、エネラの講義を聞いていく。
「基礎能力の一つ、"体力"。
これは己の筋力を硬くさせ、防御力をアップさせたり、また状態異常の一部に対しての耐性も上がります。
体力により上がる耐性は、毒耐性、麻痺耐性、暗黙耐性、沈黙耐性の4つですね。
毒と麻痺はそのまま毒と麻痺に対しての耐性です。
暗黒は視界が一定時間見えなくなる状態異常、沈黙は声が一定時間出せなくなる状態異常です。
声が出せなくなる、ということは魔法を発動させるための詠唱ができなくなるため、実質的に魔法が扱えなくなる状態異常だと思えばいいですよ。
若様も、声を武器に戦うシルバーウルフ。沈黙の状態異常は気を付けましょう。」
"正直、致命の一撃ばかりでまともに声を使った戦いはしてないんだよなぁ…。"
なんて言葉を飲み込んで苦笑する。
「そして筋力と同じ生命エネルギーの割合を増やす力を持っていますが、その割合の多さは"筋力"よりも"体力"の方が断然と高く、体力が多い生物は高い生命力と防御力を兼ね備えたヘビィタイプだと思ってください。
そしてそれと対になる基礎能力の一つ、"信力"。
これは逆に魔法に対しての防御力や耐性が上がり、魔力エネルギーの割合を"魔力"よりも多く増やしてくれます。
"信力"によって上がる耐性は、火耐性、氷耐性、風耐性、土耐性、雷耐性、光耐性、闇耐性になります。
ただここで一つ注意点を。
各属性と魔法という属性は別になっていますので注意を。」
『つまり、火や水といった属性とは個別に、魔法属性というものがあるということか?』
「その通りです。そこを注意すれば大丈夫ですね。また各属性での状態異常があり、火なら延焼、氷なら氷結といった専用のものがあります。これらは体力によっては耐性が上がりませんので注意ですよ。」
『なるほどな…。』
"今聞いた信力、そしてその属性や状態異常の話はかなりの重要項目だな。結構な量があるし、後で各属性での状態異常に関して詳しく聞かなきゃな。その効果と効果内容について…"
とりあえずは基礎能力についての説明が大事だと、エネラの話に集中する。
「では最後の基礎能力、"俊敏"について。
これは移動能力や移動速度が上がります。また自身の気配を抑えたり、隠密能力を上げたりしますね。
また咄嗟の判断能力や反射神経の向上による回避能力の向上。また体力や信力といったエネルギーの割合の増加とは違って、この俊敏は逆に二つの割合を若干ではありますけど減っちゃうんです。」
"回避が高い奴ほど紙装甲とはよく言うもんなぁ…。"
と感心していると、次に聞かされた内容がアルフにとってはかなり衝撃的だった。
「そしてこの"俊敏"は、とあるスキルの火力、"致命の一撃"と"死の一撃"の二つを上げてくれます。」
特になし。
色々と考えてみたけど、ちょっとややこしくなるかも。
また後日、詳しく書き上げた内容を別話で出そうかな。
修正:魔力と信力で、生命エネルギーの割合は増えず、減ります!
文章で"増える"と誤って書いた部分を、"減る"に修正しました!




