蜘蛛のお迎え
時刻 "14:10"
"んー…、レベルアップを行う前に各ステータスに関しての情報がもっとほしいなぁ…。"
自分のステータスが表示されたポップアップと睨めっこしながら、ボーナスポイントの振り分けを考えていた。
どれが死にステか、どれがガチステか、これを見極めなければいけない。
変にステータスを振れば、完全に残念キャラまっしぐらとなってしまう。
それだけは避けねばならない。
かといって、ここでうんうんと頭を捻っていても仕方がない。
そういうときこそ…
『エネラ先生に聞くしかないよなぁ…。』
『ん? お兄様、何か言った?』
『あ、いや。ちょっとエネラ先生に聞きたい事があってな。』
『それじゃあ行ってみる? そこまで遠い場所じゃないし、すぐに着くでしょ?』
今となってはエネラの居る蜘蛛の間まで、以前は1時間弱ぐらいで到着していたが今では20分で着くようになっていた。
昼食も食べたし、ここでじっとしているよりかはマシだろう。
『…そうだな。それじゃあ今回は少しばかり速度を上げていこう。』
『はーい。』
そういうと、いつもよりも走る速度を2割増しで移動することにした。
いつもは大体25~35km/hほどの速度を出していたが、今回は40km/hほどの速度を維持して向かってみる。
一応これも持久力を付けるための基礎トレーニングみたいなものと認識し、アンジュも一緒に付き合ってくれるようになった。
それのおかげか、今まではアンジュもそこそこの速度で長距離を走れるようになった。
洞穴から出て、蜘蛛の間へ向けて一気に速度を上げて走る。
アンジュもアルフに続く様に走り出した。
本来、アルフの方が速度的にももっと早く走れる。
だがアンジュはそこまで早くはない。
先ほどの40km/hという速度もアルフではそこそこのモノだが、アンジュにとっては全速力に近い。
ちょくちょくアンジュの様子を見ながら速度を合わせていく。
『はっ…はっ…はっ…大丈夫、か…?』
『ふぅ…ふぅ…だい、じょぶ…!この…速度を…維持…して…! お兄様…!』
『わかった…っ、辛くなったら、すぐに言ってくれ…っ』
アンジュはゆっくりと頷く。
アルフは常に"気配察知"で辺りを警戒しながら蜘蛛の間へと走っていく。
入りくねった木々の根や若干の段差がある獣道、所々に転がる大小違う無数の石や凸凹道。
それらを効率的よく避け、躱し、最小限の動きでこなしていく。
アンジュもアルフの動きを見様見真似で同じように走っていく。
最初こそ動きにぎこちなさがあったモノの、今ではなかなか様になっている。
"気配察知"に3匹ほど引っかかるが、こちらに気付く前に通り過ぎていく。
―ポンッ
<スキル"気配察知"の熟練度レベルが"5"に上がりました。>
レベルが上がったことにより、今度は察知できる範囲が大幅広がったようだ。
今までの気配察知の範囲は半径1kmほどまでなら感じ取れていたが、それよりもさらに2km先、半径3kmほどの範囲まで察知できる。
"…結構いるな。でも今は構っている余裕はない。"
気配を察知しながら、鉢合わせしないように頭の中でルートを構成しつつ向かっていく。
順調に進んではいたが、どうしても避けきれない気配を察知し、走りを止めて息を整える。
『はぁ…はぁ…どう、したの…?』
アンジュの息は結構上がっている。
洞穴から蜘蛛の間まで、およそ20kmほど。
今いる地点は大体16kmと蜘蛛の間までそろそろという所まで来ていた。
だが前方の道を塞ぐ様に7体ほどの気配を察知する。
大回りしていこうにも、その先でもまた別の気配を数体ほど感じる。
『…いや、どうしても避けきれない気配があるからどうしたもんかと思ってな。』
『何体、ぐらい…?』
『ん…前方には大体7体ぐらい、右に4体、左に2体ぐらいか。ちょっとこれは避けきれん。』
『ふぅ…。それぐらいならそのまま強引に突破してもいいんじゃない?』
『それも思ったんだが、3体ほど気配が強い奴がいるんだ。さすがに俺たちじゃ相手しきれない。』
とりあえず様子見だけでもと動こうとした矢先、目の前に突然、黒い蜘蛛がスゥーっと糸を引きながら垂れてきた。
大きさ的には大体アルフと同じほどで、赤い8つの目はこちらを見ているように感じられる。
気配察知にも引っかかることなく、目の前に現れたその黒い蜘蛛は2人の前にゆっくりと地面へ降り立つ。
咄嗟の事だったため、反応が遅れてすぐにアルフとアンジュは共に警戒態勢に入る。
だが黒い蜘蛛は微動だにせずに、こちらに語り掛けてきた。
『我が主、命令、迎え、来た』
『主…ってことはエネラ先生のことか?』
『そう、来た、背中、捕まれ』
するともう一体黒い蜘蛛が目の前に降りてくる。
アンジュの方を向き、互いに頷き合いながらその黒い蜘蛛の背中に乗る。
大きさ的にも丁度良く、ぴったりとその背中に座ることができた。
アンジュとアルフが乗ったのを確認すると、黒い蜘蛛たちは近くの木を高速で登っていく。
ある程度の高さまで登ると別の木々へと次々と飛び移っていく。
その様子はさながら忍者のようであった。
あっという間に蜘蛛の間に到着し、地面に飛び降りる。
ストンと音もなく静かに着地し、アルフとアンジュは背中から降りる。
『あの、ありがとうございました…。』
『今回は助かったよ。』
『では。頑、張れ。』
そう言い残して黒い蜘蛛たちはその場を後にした。
「あら、若様。それにアンジュ様。もう大丈夫なのですか?」
背後からエネラが心配そうに呼びかける。
前日の、侵蝕汚染の後からアルフたちの様子がおかしく感じたため、傍にいて見守ってくれていた。
その後、別れた後も心配していた。
『ありがとう、エネラ先生。俺たちはもう大丈夫だ。』
『本当にありがとう、エネラ先生!』
「そうですか…。ふふ、それならよかったです。」
暗い表情だったエネラではあったが、すぐに優しい笑みを浮かべて2人を迎い入れる。
いつものエネラに戻ったのを見て、アルフはここに来た目的を思い出し、エネラに聞いてみた。
『そうだ、エネラ先生に聞きたいことがあったんだ。』
「あら、なんでしょう?」
『基礎能力について詳しい話を聞きたいんだ。生命とか筋力とか、魔力とか俊敏とか。』
「なるほど、わかりました。では今日のお勉強は基礎能力についてお話ししましょう。」
エネラはアルフとアンジュを蜘蛛の御腹に乗せるとそのままいつもの講義している場へと向かった。
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今回熟練度レベルが上昇したスキル
・気配察知 Lv4 → Lv5
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