怒れる雄魔鹿”ディアブロア”との死闘
時刻 "7:25"
"…あー、あのデモンベアって前に見たあの子だよな?だとしたら…"
以前、同じように川の水を飲みに来ていたディアプニルを致命の一撃が初めて発動して殺した。
ただ御腹はそこまで減ってなかったため、処理に悩んでいたところそこにやってきたデモンベアに譲った。
あの時見たデモンベアの身体に残った傷痕、今そこの正面から右の角に引っかかって涙目になってるデモンベアと一致する。
そこから出される最悪の結論。
"アイツかぁー…!"
そう、あの時倒したディアプニルこそが今目の前で憤怒の表情を浮かべているディアブロアの番いだった。
羊のようにさらに大きく伸びた4本の角、各足を守る様に突出した硬化した筋肉、背中には甲殻があり、まるで要塞のようにずっしりとした凛々しき姿だった。
ディアプニルとは違って足は4本しかないが、その分太く、屈強に鍛え上げられている。
全容は凡そディアプニルの1.5倍ほどもある。
ディアプニルの平均的な大きさは1m40cm~1m80cmぐらいだが、こいつは2m強近くもある。
後少しでエフィと並ぶほどだった。
"分が悪いってもんじゃないなこりゃ…。"
と眉をひそめていると、
『…あれ? あ、貴方様は…!! ふえぇ~、助けて~…!』
デモンベアがアルフの存在に気付き、さらに涙を目に浮かべながら両手を伸ばして鳴き始める。
アイツ、喋れたのか…。
意外なことに驚きつつも、冷静に目の前に居るディアブロアに対して"鋭い眼差し"を向ける。
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ディアブロア Lv15
バトルスキル
・****** Lv***
・突進 Lv7
・地ならし Lv6
・****** Lv***
・****** Lv***
アクティブスキル
・******
・金剛体 Lv4
パッシブスキル
・憤怒
・******
弱点
・首 :ダメージ1.2倍
・背中(甲殻破壊後):ダメージ1.6倍
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"レベルも熟練度レベルも高いわ! くっそ、これ…。ってかやっと弱点が出るようになったか。でもそれにしたってこれは…"
次にディアブロアについての説明を見ようとしたとき、先にディアブロアが動く。
「グォオオオオアアアアアアアアアアアア!!!」
鹿らしからぬ咆哮をあげ、体を大きく持ち上げる。
前足をバタバタと動かしながら、徐々に力を入れていくのがわかる。
"…これは、スキルにあった地ならしか!?"
咄嗟にアルフはその場から足に力を入れて高めに飛んだ。
飛ぶと同時に持ち上がった上半身を下ろし、その勢いのまま足を地面へと叩き付ける。
その瞬間、叩き付けた前足を中心に大地が割れ、割れた場所から砂煙が舞い、大きく揺れる。
周囲にある木々がその衝撃で大きく揺れ、中には耐え切れずに折れて倒れるものもあった。
宙に飛んで落下する中、こちらに向けてその角を前に突き出した状態で走ってくるディアブロアの姿が見えた。
"まずい、着地後を狙うつもりか!?"
幸い、高めに飛んでいたのかアルフが地面に降り立つころには地ならしによる揺れは収まっていた。
だがすぐ目の前には、こちらの着地を狙うように突進を繰り出すディアブロアが迫ってきている。
間一髪、着地と同時に左へ強く地面を蹴って避ける。
避けると同時に先ほどまでいた場所をその巨体が、その大きさに似合わない速度で通り過ぎる。
通り過ぎ様に、右の角に引っかかって涙目になっているデモンベアの体を口で掴むように噛み付くと、通り過ぎていくディアブロアの背中の甲殻を蹴って距離を取る。
何とかディアブロアから小さなデモンベアを救出することができた。
『ふえぇあ~…!! ありがとう~…!! 助かったよぉ~…!』
もう完全に泣きながらアルフの首元に抱き着き、感謝の言葉を述べる。
ただ、あまりにも鬱陶しかったため、デモンベアの首根っこを軽く噛んで背中に乗せる。
『しっかり、捕まってい、ろ。振り下ろされ、たら、もう命の保証、できない。』
『は、はいぃ!絶対に落ちないようにしてるよぉ…!!』
そのままアルフの背に抱き着く様に寝そべる。
軽く体を揺さぶってみるが、がっちりと掴んでいるようで微動だにしない。
"よし。この子は俺のせいで巻き込まれたようなもんだしな。責任を…"
―…のせいだ。
"…ん?なんだ、今の。今、何か…"
ふと何かが聞こえた気がして辺りを見回すが何もない。
だがその一瞬の硬直を、ディアブロアが見逃すはずもなかった。
また再度方向を転回させ、アルフに突進していく。
先ほど聞こえた奇妙な幻聴に一瞬気を取られたせいか、気付くのに一瞬遅れてしまった。
地面を蹴り、何とか回避しようとするが間に合わず、角の直撃は避けれたものの最期の尾に直撃して吹き飛ばされる。
何とか背中に張り付くデモンベアを下敷きにしないよう、空中で何とか体勢を耐えなおし、地面へと着地する。
だがその想像以上のダメージようで、立っているだけでもやっとの状態だった。
まともに視界が定まらず、3重に回る木々をなぎ倒しながら突進を止めるディアブロアの姿。
足もふら付き始め、自分の体力を見てみる。
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Lv:1
名前:アルフ
種族:シルバーウルフ
HP:2/10
MP: 2/ 2
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"くっそ…今ので8も持ってかれたのか…。かすってこのダメージなら、たぶん全部の攻撃の直撃は即死コースだなこりゃ…。"
『あ、あの…だ、大丈夫なの…?』
背中から聞こえてくる弱弱しい声。
背中の方を向くと涙目になりながら、心配そうに様子を見るデモンベアと眼があった。
"ああ、そんな顔するなよ…。俺がお前を巻き込んじまったんだ。あ、でも俺が死んだらこの子もアイツに殺されるかもしれないわけだよな…。そりゃあこんな顔にもなるってもんか…。くそっ…何やってんだ俺は…。"
―お…のせい…。
また聞こえる幻聴。
だがもう気にしない。いちいち気にしていたら戦闘どころじゃない。
今は目の前のディアブロアに集中せにゃいかん。
震える足に何とか力を入れ、再度まっすぐとディアブロアを見る。
ディアブロアもアルフの心境の変化に気付いたのか、さっきよりも強く雄たけびを上げる。
「グォォォオオオアアアアァァァアアアアアアアア!!!」
"こっからだぜ、ディアブロア。元廃人ゲーマーのゲームスキルをなめんなよ…!"
アルフとディアブロアの2回戦が幕を上げる。
絵は基本的に私が無理しない程度、大体30分で描ける範囲内で気まぐれに描いてます。
それにあくまでこんな感じだよ、的な意味も含めてあったりなかったり。
<ディアブロアの生態について>
・ランク:B
その巨躯、全身を覆う鎧のような甲殻。そして頭から生えた4本の角が特徴の荒々しい雄鹿。
雌鹿のディアプニルを守るため、或いは自らの家族を逃がすためにその要塞のような巨躯を駆使して相手と対峙する。
その見た目にそぐわない速度で繰り出される突進は当たったモノを粉々に吹き飛ばしてしまうとされている。
またその角は相手を威嚇するためだけではなく、1頭のディアプニルを奪い合うために別の雄鹿との戦いで激しくぶつかり合うように決闘にて用いられる。相手の戦意が喪失するまで決してやめないため、たとえ角が折れようが甲殻が砕けようが、最悪自らの命を散らそうが決して止まることはない。
攻略としては弱点は背甲に覆われた背の部分にあるため、ディアブロアの突進を盾持ちが受けきって転ばせ、背中を集中的に攻撃して背甲を破壊し、弱点を攻撃するという攻略法が一般的とされている。
だがこれは奴の突進を受けきることが前提のため、波半端な盾持ちが受ければまず命は助からないだろう。熟練者でディアブロアの突進を余裕を持って受けたはずだがその4本の角に盾が耐え切れず、そのまま貫かれて死んでしまうというケースも少なくない。
そのため、ディアブロアを積極的に狩ろうという冒険者は少ない。




